(台北 29日 中央社)長年出版社に勤務し、のちにフリーライター。現在は台湾の芸能情報を紹介する雑誌、「台湾エンタメパラダイス」(キネマ旬報社)の編集長を務める。
もともと台湾の芸能界に強い関心はなかったが、2000年代前半に旅行で訪れたジャカルタの空港で、当時アジアを中心に絶大な人気を誇ったアイドルグループ「F4」のグッズを見かけた際、「今までにいない人たち」という特別さを感じ、興味を抱くようになった。

中国語はわからなかったものの、知人からCDやドラマ、バラエティー番組のDVDなどを借り、日本や韓国の芸能人にはない飾らない仕草さや記者会見などでの気さくさに「はまってしまった」と振り返る。取材や訪台を重ねるうち、F4だけでなく、台湾という場所や文化、台湾人の人柄などを「どんどん好きになっていった」。

折しも華流への関心が高まった時期と重なり、仕事で台湾関連の出版物を扱う機会に恵まれた。ただ、「(華流に対する日本人ファンの)反応だったり、業界の中の流れは理解できていた」との自負はあったが、ブームに陰りがみえると、台湾芸能を扱う媒体が急激に減少。そこで思い立ったのが、自分自身で台湾芸能の本を出版することだった。


目指したのは、台湾の人気芸能人を紹介するスター名鑑。「一からの作業だったので、主要な芸能事務所には挨拶に行った」と小俣さん。各事務所の要望に応えたり、さまざまな事情に配慮しながら、掲載順序や内容の調整、こまめな進捗状況の説明に追われた作業は「大変だった」と語るが、2009年10月にムック本「アーティスト・ファイル台湾」の出版にこぎつけた。このことが「作ればできるんだ」という自信や達成感につながった。

2011年5月にはドラマの紹介に比重を置いた「台湾エンタメパラダイス」の事実上の第1号を出版。小俣さん自身が華流関連媒体が少なくなり、寂しさを感じていた中で、読者の気持ちを考えながら編集したと語る。
「本を読んでいる時は楽しい気持ちでいてほしい」。そんな思いがこめられた同書は当初、単発の予定だったが、売れ行きは上々となり、翌年3月には第2号が出版された。

不定期の出版ながら、根強いファンに支えられ、第17号まで発行できた。毎号丁寧な紙面作りを心掛ける。「(台湾を)好きっていう気持ちで作っているので、うそがないと思います。わたしだけでなく、ライターさんみんながそうなんです」「台湾に興味を持って、台湾に行きたいなって思ってもらいたい」。
今後も需要がある限り発行を続け、台湾の最新情報を日本の読者に届けたいと意気込んでいる。

(齊藤啓介)