今週末見るべき映画「歓喜の歌」

2008年2月2日 00:00
 いま、落語がブームのようである。かつての大傑作、川島雄三監督の「幕末太陽伝」は、落語「居残り佐平次」をはじめ、いくつかの古典落語を下敷きにしていた。最近では、佐藤多佳子の小説「しゃべれども しゃべれども」が映画になりヒット、落語家を目指す女性の周辺を描いたテレビドラマ「ちりとてちん」も評判ときく。

また落語家自身の書いたエッセイや小説、落語のCDが結構売れる時代である。立川談志や弟子の志の輔の高座では、チケットがいずれも完売という。

 このほど、立川談志の弟子、立川志の輔の創作落語「歓喜の歌」を基にした「歓喜の歌」(シネカノン配給)が映画になった。「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を撮った松岡錠司が監督、笑って泣かせる映画の佳品である。

 地方都市の文化ホール主任が、小役人らしいいい加減さで、暮れのホール予約をダブルブッキングしてしまう。ともに名前の似たママさんコーラスの発表会で、お金持ちおばさんグループとほそぼそと働きながらの庶民おばさんグループである。どちらのグループも、主任のその場しのぎの妥協案を受け入れようとしない。

 主任は主任で、家庭は崩壊寸前、飲み屋の借金も抱えて、仕事も投げやり。どうせヒマなおばさんたちの発表会だと、タカをくくっている。

 たくさんの人物が出てくる群像劇である。いかにも小役人のいい加減さを小林薫が力演。別に公務員でなくても、杓子定規で物事を判断したり、深く考えず、優柔不断なところは、一般の日本人とまったく似ている。また、お金持ちおばさんグループのリーダー、由紀さおりと、庶民おばさんグループの副代表、根岸季衣は、ともにエゴ丸だしで、譲ろうとしない。

 この三人の周辺にいる多くの人物たちも、それぞれ、巧妙に描かれ、この中の誰かは自分であり、誰かは、近くにいる人物であることに、たびたび気づくのである。

 見所は、はじめは、まったくいい加減であった主任が、八方ふさがりの中、ある出来事をきっかけに、少しづつ変貌を遂げていくところ。観客は、笑って、はらはらしながら、二つのコーラスグループの「歓喜の歌」発表会が、はたして開催できるのかどうか、見守ることになる。

 もちろん予定調和の喜劇である。志の輔の原作落語からみれば、薄目の毒ではあるが、素直に笑って、ちょっぴりの涙。作り手たちの「日本人論」が垣間見ることができる。


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