アカデミー賞8部門受賞「スラムドッグ$ミリオネア」

2009年2月24日 00:00
 第81回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚色賞など8部門を受賞したのが「スラムドッグ$ミリオネア」(ギャガ・コミュニケーションズ配給)。

 舞台はインドのムンバイ。テレビで大人気のクイズ番組「クイズ$ミリオネア」で、18歳のスラム出身の貧しい青年が、次々と4択の難問に正解を出している。あと1問、正解すれば、この番組でだれも手にしたことのない大金がもらえる。すでに、ここまでたどりついたのも、この青年が初めてである。

(c) 2008 Celador Films and Channel 4 Television Corporation

 映画は、クイズに答える緊迫したシーンと、この青年の悲惨な生い立ちが交互に語られる。小さいころに出会った少女への憧れが、もうひとつのストーリーを構成しつつ、貧しいスラム出身の孤児が、なぜ、難問に次々と正解を出すのかのサスペンスが、映画の牽引力となる。

 設定のおもしろさは、原作の小説「ぼくと1ルピーの神様」を脚色したサイモン・ビューフォイの力量だろうと思われる。かつて「フル・モンティ」で、いまの日本を暗示するかのような解雇問題を描いて、さわやかな涙をもたらした才人である。テンポの早い、キレのある演出は、「トレインスポッティング」で、若者の薬物中毒の実態を鋭く描いたダニー・ボイル。いずれもイギリス生まれである。

 クリシュナの「神の歌」の作者は? アメリカの100ドル札に描かれた人物は? ケンブリッジ・サーカスの所在地は? レボルバーを発明したのは? クリケットのセンチュリーのナンバーワンは? などなど。

 いずれも、まぎらわしい4つの答えの中から正解を選び出していく。これがそれぞれ、青年の生きてきた貧しく悲惨な半生と、微妙に結びついている問題なのである。

 たしかに、はらはらどきどき、ではある。ただし、いままでの人生における知識や経験が、クイズなどといった偶然の問いかけと見事に一致することなどは、ふつうは考えられないのだが…。やや作り手に都合のいい構成と感じなくもないが、そこは映画の文法と割り切るしかない。

 ショーアップに長けた、態度の大きい司会者は、なにか不正な手段を使っているのではないかと疑う。もっともである。不正の容疑で、青年は逮捕されるが、はじめは疑ってかかっていた警部も、青年の生い立ちに耳を傾けるうちに、ひょっとして、本当のことではないかと思うようになっていく。

 ショーアップされた華麗な場所と、青年が必死に生きてきた貧しい場所が交錯、まさに映画ならではのコントラストが繰り広げられる。

 少女への一途な思いやりを示す青年を演じるデーヴ・パテルが初々しく、うまい。テコンドーの達人でもある。

 夢のありようはお金だけではない。人を愛し、信じる心の大切さを訴えて、人の心に響くのだろう。


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