今週末見るべき映画「パイレーツ・ロック」

2009年10月23日 16:20
 権力に抵抗、自由な思想を表現するのがロックという音楽、と思っている。これは権力に背を向け、ロックをこよなく愛する男たちの、まるでおとぎ話のような映画。

 1960年代、イギリスの流行歌は、ラジオで45分しか放送できない。この法の抜け道をついて、公海上の船から、24時間、がんがんロックやポップスを放送する、いわば移動放送局があった。

 「パイレーツ・ロック」(東宝東和配給)は、そのような事実に基づいて、船の中から、ロックを放送するDJたちの群像を、あざやかに描く。

 その世界は、飲んだり踊ったりの、まるで天国。ロックが鳴り響く船に、連日、若い女性たちを招いてのパーティ三昧である。

(c)2009 UNIVERSAL STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED

 DJのボス格、ザ・カウント(伯爵)と呼ばれるフィリップ・シーモア・ホフマンが、相変わらずの達者な演技。DJをする連中が、いずれも個性豊かである。アメリカから呼ばれた大物のギャヴィン、太っているのになぜかモテるデイブ、人の良さが売り物のサイモン、まわりをいつもいらいらさせるアンガス、時間きっかりニュースを読むニュース・ジョン、黙っていても女性が熱をあげるイケメンのマーク。

 この7人のDJたちが、ときには争い、ときにはなごやかに、勝手気ままに仕事をこなしている。

 そこに、放送船ロック・ラジオ号のオーナーと親しい女性が、ドラッグと喫煙で問題ばかりの息子カールの更正をと、オーナーに預けることになる。

 さらに、ロック放送の蔓延は、風紀の問題とばかり、新たに法律を作って、取り締まろうとする大臣がいる。

 さて、船と、ロック放送は、いかなる運命をたどるのか?

 映画は、ロックへの愛に満ち、なにより、人間の自由な生き方こそが大事と、語りかけてくる。

 もちろん、60年代にイギリスを席巻した音楽がズラリと出てくる。キンクス、ジェフ・ベック、ヴァン・モリソン、ドノヴァン、ザ・シュープリームス、ローリング・ストーンズ、ヤードバーズ、シーカーズ、オーティス・レディング、クリーム、ザ・フー、ビーチ・ボーイズ、サンディ・ショウ、ダスティ・スプリングフィールド、ジミ・ヘンドリックス、スキーター・ディヴィス、ハーブ・アルバートとティファナ・ブラス、プロコム・ハルムなどなど。

 かつて、心ときめいて聴いた音楽ばかりである。映画はまさにロックのユートピア、結末にはいささかの悲哀はあるのだが。

 監督は、「ラブ・アクチュアリー」を撮ったリチャード・カーティス。ロバート・アルトマンに範をとる群像劇の名手である。


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