物価高騰の現在、なかなか外食はできない、控えているという人も多いだろう。だが、たまには外でゆったりした気持ちで食べたいし、そうすることで気持ちがリフレッシュすることもある。


■生活は楽ではないけれど
夫亡きあと年金暮らしとなったケイコさん(75歳)。子ども3人に教育費がかかったり、夫の闘病が長引いたり、自分たちの親の面倒をみたりと「とにかくお金がかかる人生で、夫が亡くなったときはほとんど貯金もなかった」という。手元に残ったのは夫の生命保険500万円程度。

「これはだんだん老朽化している自宅の修繕費にとっておかなければいけないお金。だから私は完全に年金だけで暮らしています」

一人暮らしにも慣れ、お金をかけずに楽しむ方法もたくさん持っているとケイコさんは笑う。地元の自治体が主催する趣味の教室や地域のボランティア、そして新聞や雑誌への投稿も好きだという。

40代の娘は電車で30分ほどのところに家族と共に住んでいるが、あまり交流があるわけではなかった。娘がかわいくないわけではないものの、孫が小さいときにいろいろねだられることが多くて懲りてしまったのだ。

「娘は、『こういうものは妻側の実家が買うべきなんじゃないの』と、おひなさまやランドセルや、さまざまなものを買ってほしいと連絡してきていた。生活を脅かされる恐怖感があって、夫ともども、そんなお金はないと言ったら娘の方から連絡してこなくなったんです。それならそれでいいやと疎遠になっていきました」

■孫娘が遊びにくるように
ところが最近、高校生の孫娘が時々やってくるようになった。孫娘は料理が好きで、作り過ぎちゃったからとおかずを持って来てくれることもある。


「この子となぜか馬が合って。100均で買った毛糸や手芸道具を使って、彼女の好きなキャラクターのぬいぐるみを作ってあげたら、ものすごく感謝してくれて。今は二人でキャラクター作りにはまっているんです」

金曜日の夜に孫娘が泊まりにくることもある。彼女は何か一品作って持って来てくれるので、あとはケイコさんが簡単な料理を作って二人で食べる。「お母さんはあなたが泊まりにくることをどう思ってるの」と聞くと、孫娘は「お母さんは最近、ボーイフレンドができたみたい。お父さんも仕事で遅いし」とさらりと言った。恨みつらみがあるわけではなさそうだが、ケイコさんは娘に対して不快感を覚えたという。

■孫娘をモーニングに連れていったら
孫娘が泊まったある翌朝、ケイコさんは近所の喫茶店のモーニングに彼女を連れていった。古くからある喫茶店で、今もけっこう豪華なモーニングが600円ほどで食べられるのだ。

「ここのママとは昔からの知り合いだから、孫娘を連れていったら喜んでくれて。おまけと言って、モーニングにはないパンケーキまで焼いてくれたんです。孫娘はものすごく喜んで……。
孫娘は『チェーン店ではない、こういうお店っていいね』と。その喫茶店でいろいろ話していたら、孫娘との距離が一気に縮みました。彼女の将来の夢も教えてくれて」

時々そんな時間をもつのが、ケイコさんにとっては大きな楽しみになった。だがある日、娘から連絡があった。

「朝っぱらから喫茶店のモーニングなんて、お母さんもぜいたくしてるのね。そんなにお金があるなら回してくれないかなって。ずいぶん失礼な娘だと思いましたよ。私に何年も連絡もよこさないで、モーニングセットごときで文句を言われる筋合いはないと返してしまいました」

しょっちゅうモーニングセットを食べているわけではない。夕飯は二人で倹約しつつ作っている。そもそもケイコさんは娘から何1つ助けてもらっているわけではないのだから、家計に口をはさまれるのは不愉快だった。

■母親のお金をあてにする娘に
「お母さんだって今後は年をとるだけなんだから、私がいないと困るでしょ、みたいなことを娘は言うわけですよ。なんだか脅迫されているみたいねと言うと、『とにかく孫を取り込むようなことはしないで、お母さんの生活費はきちんと自分で管理してね』って。
心配しているんじゃない、無駄遣いしないでお金が余っているならこっちによこせと言っているように聞こえました」

娘の夫は、働いたり働かなかったりと「ろくでもないタイプ」なのだという。気が弱くて人がいいのだが、仕事は続かない。娘の苦労も分かるのだが、だからといって母親への敬意がなさすぎるとケイコさんは言う。

「孫娘は『私がうっかりおばあちゃんの家の近くのモーニングがおいしいと言っちゃったから迷惑をかけてごめんね』と謝るんです。それもかわいそうでね。内緒でまた行こうねと言っています。娘に小馬鹿にされているのは腹立たしいけど、孫娘との時間は私にとっても至福の時間。一人暮らしは寂しくないですね。たまに孫娘に会えれば」

だからといって孫娘に依存しているつもりはない。祖母として、彼女をただ温かく見守ってやりたいだけと、ケイコさんはサバサバした口調で言った。

文:亀山 早苗(フリーライター)
明治大学文学部卒業。女性の生き方を軸に、家族、夫婦関係、働き方などをテーマに取材・執筆を続ける。
くまモンの追っかけ歴は長く、近著に『くまモン力』がある。
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