目標を達成できる人は、優れた人からどう学んでいるのか。人材育成コンサルタントの嶋津良智さんは「インフルエンサーなど誰かのファンになるのはいいけれども、崇拝に変わったら周りが見えなくなる。
仕事がデキる人は、大勢の人からいいとこどりをしている」という――。
※本稿は、嶋津良智『目標を「達成できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■尊敬する人を聞かれて「いません」
「嶋津さんの尊敬する人は誰ですか?」と聞かれた時に、いつも私は「いません」と即答します。すると、「えっ⁈」と驚いた顔をされます。尊敬する人がいないというのは、たしかに奇異に感じられるかもしれません。
誤解しないでいただきたいのですが、尊敬する人がいないのは自分が一番すごいとか、パーフェクトだと思っているからではありません。さすがに、私は自分の身のほどを知っています。
むしろ、この人いいな、すばらしいなと思う人物の数は多いほうです。
たとえば、故スティーブ・ジョブズは一度クビにされたアップルに戻った時に、商品のラインナップを大幅に見直す経営戦略を打ち出したところが、経営者としてとても素晴らしく感じました。
他にも、松下幸之助さん、本田宗一郎さん、稲盛和夫さん、孫正義さんなど、成功している人は、それぞれにいいところがあってすばらしいと思います。
ただ、誰か1人に心酔しているわけではないので、尊敬する人はいないと答えています。むしろ、そういう人たちのすばらしい部分を、少しずついいとこどりをして自分のものにしていくほうが、自分には合っています。

■自分だけのベストアルバムをつくる
昔から、部下たちには「尊敬する人をつくってはいけないよ。尊敬する人物をつくってしまうと、生涯その人を超えられなくなるぞ」と言ってきました。
音楽を聴く時は、何人ものアーティストやグループのお気に入りの曲を集めたプレイリストを作っている人も多いはず。
ビジネスでも、この世の中にはすばらしい人が大勢いるのだから、素晴らしいと思うところだけを集めて、自分だけのベストアルバムをつくればいいのです。
成功している人は「できる人をTTP(徹底的にパクる)している」という話をよく耳にします。すべてを一から考えて身に付けるのではなく、まわりの優秀な人の仕事の仕方などをマネて、自分のものにしているということです。
それは最短で自分の能力をアップできるので、目標達成の基本スキルだと言えます。ただし、尊敬できる人物のすべてをマネる、という意味ではありません。
仕事がデキる人は、やはりいいとこどりをしているのだと思います。Aさんからは営業トーク、Bさんからはプレゼン資料のつくり方、Cさんからは上司の説得の仕方、というようにいいところを集めて、自分なりのスキルをつくりあげているのでしょう。
最近は、人気のあるインフルエンサーにハマっている人は「信者」と呼ばれています。
推しのインフルエンサーと同じようなファッションをし、その人が「いい」と勧めるものは何でも信じて、「悪い」と言ったものを嫌悪する。
そのインフルエンサーが誰かと対立すると、信者は一斉に相手を攻撃します。
それだと自分をなくし、他人に自分の人生を支配されているようなものです。ファンになるのはいいけれども、崇拝に変わったら周りが見えなくなるのではないでしょうか。
■大谷翔平がWBCの円陣でみんなにかけた言葉
大谷翔平選手が2023年のWBCの決勝戦の試合前、ロッカールームで円陣を組んでみんなにかけた言葉が話題になりました。
「憧れるのをやめましょう。今日は野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。憧れてしまっては超えられない。僕らはトップになるために来たので、今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」
目標達成できる人は、尊敬する人や憧れの人を崇拝して追いかけてはいません。
「あの尊敬する人はこういう時どのように行動するのだろうか」と考えるでしょうが、それでも一度自分の立場というフィルターを通して、その行動はふさわしいのかを検討するでしょう。
「我以外は師と思え」という言葉があるように、自分の心構え1つで、人から学ぶことはたくさんあります。いろいろな人の素晴らしいところを自分自身の中にとり込んで、「自分自身を尊敬する人物のナンバーワンにつくり上げろ」というのが、私の持論です。
目標を達成できる人は、人のいいところを見つけ出し、採り入れられる!

■自分より運がいい人に、あえて流されてみる
以前、当社の上場記念式典の時に、HIS創業者の澤田秀雄さんから「嶋津さん、とにかく運のいい人とつき合いなさい」というアドバイスをいただいたことがありました。
その時はあまりピンとこなかったのですが、今はこのアドバイスの意味がよくわかります。
目標を達成するには、自分の頑張りもさることながら、運に左右されるのもまた事実です。私はいろいろな経験を積んで、「運のいい人とつき合うと、その人の運を少しだけ分けてもらうことができるんだ」と実感できるようになりました。
「運なんて偶然なんだから、自分ではどうにもできない」と思う人もいるでしょうが、私は自分の運は変えられると考えています。
いつも目標を達成できない人は、運を変えてみるのも1つの手です。
では、どうすれば運がよくなるのでしょうか?
運をよくする方法の1つは「あえて人に流されてみる」ということです。「流される」というとネガティブなイメージがありますが、あえて相手に判断をゆだねるという意味で使っています。
ただし、大切な条件があります。流されるのは、自分より運がいい人、自分より優れている人に限るという点です。
私は、グルメな友人と食事をする時には、店も食事のメニューも全部相手に選んでもらうようにしています。私自身はグルメではないので、選ぶのが面倒という事情もありますが、結局いつも同じようなものばかり選んでしまうのはつまらないと感じるからです。
その点、相手に選んでもらえば、自分1人では絶対に行かない店につれていってもらえて、自分では選ばないような料理を食べられます。
何でも自分で選んでしまうと、このような経験ができません。あえて流されてみることで、新しい世界に触れられるのです。
■「蚊と献血の法則」で運をつかむ
自分より優秀な人、運がいい人に流されて運をつかむコツを、私は「蚊と献血の法則」と呼んでいます。優秀な人や運がいい人とつき合い、蚊が血を吸うように「優秀」なところや「運」を少しだけもらいます。
自分が運をもらったら、今度は「献血」のように、もらったものをたくさんの人に分けます。こうすることで「運」が循環し、皆がハッピーになれる法則です。
他力本願のように感じるかもしれませんが、優秀な人や運がいい人には、自分がそれなりの努力をして成果を出していないと認めてもらえません。運は無条件でおすそわけしてもらえるものではないので、自分が相手に信頼してもらえることが大前提です。
そのためには、相手の懐に飛び込む勇気も必要です。
もう1つ、運をつかんで目標を達成するコツをご紹介します。それは「手放す勇気を持つ」ということです。
一度、成功体験を味わうと、それに固執してしまうのはよくある話です。
「オレが若かったころは~」と武勇伝を部下に聞かせる上司は、その最たる例です。成功体験を自分で上書きし続ける人こそ、目標を実現できます。
■人に頼ったり、過去の栄光を手放すこと
「幸運の女神には前髪しかない」ということわざがあるように、通り過ぎてからつかまえようとしても後ろ髪がないのでつかまえられません。常に自分で行動している人だけが、女神の前髪をつかむチャンスを見逃さないでいられます。
大切なものだからといつまでも握り続けていると、実は目の前に転がっている幸運をつかみ損ねてしまうことになりかねません。
この一見関連がなさそうな2つの方法は、「自分の成長を止めない」という点で一致しています。人に頼ったり、過去の栄光を手放すことで、古い自分と決別し、新しい自分に更新できるから、目標達成に近づけるのだと言えます。
目標を達成できる人は、運をつかむコツを身につけている!

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嶋津 良智(しまづ・よしのり)

人材育成コンサルタント

日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー 学長、早稲田大学エクステンションセンター講師。日本唯一の『上司学』コンサルタント。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中でトップセールスマンとして活躍、その功績が認められ24歳の若さで最年少営業部長に抜擢。就任3カ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。
その後28歳で独立・起業し代表取締役に就任。M&Aを経て2004年52億の会社まで育て株式上場(IPO)を果たす。2005年次世代リーダーを育成することを目的とした教育機関『リーダーズアカデミー』を設立。2007年シンガポールへ拠点を移し、講演・企業研修・コンサルティングを行う傍ら、顧問・社外役員として経営に参画。業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界15都市でビジネスセミナーを開催。延べ50000人以上のリーダー育成に携わる。2013年日本へ拠点を戻し、一般社団法人日本リーダーズ学会を設立。「上司学」をさらに進化させた新メソッド「組織づくりの12分野」を開発し、世界で活躍するための日本人的グローバルリーダーの育成に取り組む。主な著書としてシリーズ100万部を突破しベストセラーにもなった『怒らない技術』をはじめ『あたりまえだけどなかなかできない 上司のルール』などがあり、累計150万部を超える。

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(人材育成コンサルタント 嶋津 良智)
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