最新アルバム『Future Soul』のツアーが11月にいよいよ日本へ上陸するテデスキ・トラックス・バンド(以下、TTB)。デレク・トラックスが弾くスライド・ギターの超絶技巧に注目が集まりがちだが、バンド名を見てもわかる通りTTBがギタリスト2名を擁する双頭バンドであることを忘れてはならない。
初めて歌う姿を見た瞬間、デレクが「パワフルな歌声に即ノックアウトされた」という超強力ボーカリスト、スーザン・テデスキは、ギタリストとしての腕前も一級品。ライブでは毎回、デレクのプレイに反応して鋭いフレーズで切り返す。音楽好きな父の影響もあって、若い頃からブルースにどっぷり浸かって育ったスーザンのギターの威力は、デレクが狂犬にたとえたほどだ。

スーザンとデレクは2001年に結婚、一男一女に恵まれた。そして息子のチャールズ・カリル・トラックスに今年子供が誕生……つまりスーザンは50代半ばにして、祖母になったばかりなのだ。プライベートもバンドも順風満帆、向かうところ敵なしの彼女に、近況やプレイの秘密、ジャパン・ツアーの見どころを語ってもらった。

スーザン・テデスキが明かすギターの極意、デレク・トラックスとの絆、ディランやクラプトンとの交流


ブルースの原点、ボブ・ディランとの縁

―夏に虫垂炎で倒れたときは心配しました。今はすっかり良くなった?

スーザン:もう元気。だって、もう昔のことじゃない! あれは7月。手術を受けて、2週間後にはツアーに戻ってたわ。

―タフですね! さらに、初めてのお孫さんが生まれたそうで。

スーザン:そう、ヘンリーという男の子。
もう4カ月になるわ。

―日本に来始めた頃はまだ小さかったあなたのお子さんたちが、今では親になるほど時間が経ったことに驚きます。グランマになった気分はどうですか?

スーザン:毎日楽しいし、すごく嬉しい。自分が子を授かったみたいに幸せなの。息子もお嫁さんもとても元気よ。デレクと私がおじいちゃんおばあちゃんになれたなんて……とても嬉しいわ。

―最近、PBSの番組『The Art Of Music』に出演して、ミシシッピ・ジョン・ハートが使っていた貴重なアコースティックギターを弾きましたよね。そのときのことを教えてください。

スーザン:信じられないの。だって、私の父は1964年にニューポート・フォーク・フェスティバルでミシシッピ・ジョン・ハートと会って、しだれ柳の下に1時間くらい座って語り合ったのよ。ミシシッピ・ジョン・ハートのエピソードは父から聞いていたけど、私まで実際にレジェンドのギターを弾かせてもらえるなんて、本当に光栄だった。まるで円がひと巡りしたみたいで、とても感慨深い出来事だったわ。


―あなたのお父さんは翌65年のニューポート・フォーク・フェスティバルにも行って、エレクトリック・ギターを抱えて登場したボブ・ディランにブーイングした客の一人だったと言われていますね。音楽も少しやられてたそうですが。

スーザン:そのブーイングのこと、父に確認したら「私はやってない、ディランは大好きだから、絶対にブーイングはしない!」と否定してたので、どうも違うようよ(笑)。父はとにかく社交的で、誰とでも仲良くなれる人。私のように音楽の仕事はしていなくて、ただの音楽ファンだけど、ミシシッピ・ジョン・ハートともたまたま会ってるし、ボブ・ディランにも何度か会っているわ。母も一緒にね。そうやって偶然に会えてしまうラッキーな人たちなのよ、うちの親は。

―あなたのお父さんについて、デレクから「フランク・ザッパとも会ったはず」と聞きました。

スーザン:ええ、昔、ラスベガスでビデオソフト販売業者の大きなコンベンションが開かれて、そこで会ったらしいわ。うちの両親はビデオショップを経営してたのよ。Blockbusterとかの店が登場する前の話。

―ボブ・ディランと言えば、最近のライブでは彼の「Tangled Up in Blue」をカバーしてますよね。


スーザン:ええ、昨夜もやったばかり。

―あなたは若い頃に、ソロでディランの前座を務めたことがあるでしょ?

スーザン:そうね。私が共演したのは28歳になってからだけど、デレクも10歳くらいの頃にボブと共演したことがあるはずよ。一昨年もボブと一緒になった。体調を崩して出られなくなったウィリー・ネルソンの代役を頼まれて、ウィリーの息子のルーカス・ネルソンと演奏した時よ。そしたらボブもいて、私たちを見つけるとデレクのところに駆け寄ってきて話をしてたわ。私も行って3人で少し話したけど、ボブと話すのはいまだに少し緊張する(笑)。デレクとはいつも楽しそうに話してるわ。彼のような人に優しくしてもらえて恵まれてるわね、私たち。

―最近、ディランのバンドはギタリストがどんどん替わっているので、デレクやあなたにも声がかかるかも。もしもその時が来たら、引き受ける?

スーザン:もちろん! 私たち二人にとってのヒーローだもの。生きるレジェンド、史上最高のソングライターの一人だから。


『Future Soul』の進化とギター哲学

―さて、今回は新作『Future Soul』のツアーで来日しますが、アルバムからの曲はもう全てライブで演奏していますね。個人的に、ライブを重ねていい感じに育ってきたと感じる曲は?

スーザン:どの曲も本当に演奏していて楽しいわ。やっていて特に楽しいのは「Hero」と「Future Soul」だけど、「Who Am I」もきれいな曲なので好きよ。「I Got You」の特にラスト近くは、デレクがプレイヤーとして自由に羽を伸ばして演奏できる場になっていて、まるでオールマン・ブラザーズ・バンドでやっていた頃のようなの。「What In The World」もシンプルだけど、とてもいい曲。どれもライブで演奏していくうちに、アルバムとは少し変わってきた。

―デレクと話していると、ライブではあなたとのギターを通した会話を楽しんでいるのが伝わってきます。あなたがソロを弾くときは、いつもどんなことに気をつけて演奏しているのでしょう。

スーザン:デレクが弾く音を聴き、それに合わせて演奏するように気をつけているわ。たとえるなら、彼の文章の続きを私が引き継いで語るような感じ。もしくは、さらに引き立てる。時にはデレクを刺激するようなクレイジーなことをやって、彼の反応を見たり(笑)。
そんなふうに一緒に演奏しながら、いつも楽しんでるのよ。

―ギターはフェンダー・テレキャスターがメインで、ソリッドなサウンドにセットすることが多いように思います。ギターの音作りの好みを教えてもらえますか。

スーザン:何本か、毎日使うギターがあるんだけど、1本はテレキャスターのAmerican Standard。今はそれを元にフェンダーが作ってくれた私のシグネチャーモデルがあるので、それも持ってる。でも私が最初に持っていたのは、1993年製の定番のシングルコイル・ピックアップがついている、メイプルネックのやつ。ローズウッドの指板がすごく好きなのよ。これはいつも弾いているわ。もう1本、よく弾くのはレスポール。

―そうですね。ずっしり重そうに見えるギターです。

スーザン:あれはエリック・クラプトンがデレクにプレゼントしたギターなの。
実は、エリックがジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ時代に使っていたBeanoモデルのレプリカよ。というのも、オリジナルは盗まれてしまっているから。私が弾いているのを見て、エリックから「どうして弾けるの? めちゃくちゃ重いだろ」と言われたわ(笑)。

つい数週間前も、エリックとはCrossroads Festivalで共演したばかりよ。大のヒーローだから、一緒に演奏できるのは本当に嬉しい。他にも大勢の人と共演したわ。ドイル・ブラムホール2世、ジョン・メイヤー、フィッシュのトレイ・アナスタシオ、ソニー・ランドレス、アラム・カーン……彼はカリフォルニアを拠点に活動しているサロード奏者で、アリー・アクバル・カーンの息子なの。

もちろん、バディ・ガイも。彼はもう90歳よ! NYのラジオシティ・ミュージックホールで開かれた誕生日のお祝いにも参加させてもらった。そこにはジョン・メイヤーも、ウィリー・ウィークスもいたわ。もちろん知ってると思うけど、ウィリーはエリックやダニー・ハサウェイとも演奏している素晴らしいベーシスト。ドラムはスティーヴ・ジョーダン、キーボードにアイヴァン・ネヴィル。そしてジミー・ヴォーンやアイザイア・シャーキー……アイザイアはすごいギタリストよ。ディアンジェロなどとプレイしてたと思う。

そんなわけで、ここ数週間はイベント続きだったの。私たちにとってのヒーローというべき大御所のギタリストやレジェンドたちの演奏を観られた上に、一緒に演奏ができて、本当に楽しかった。

2026年の「Crossroads Guitar Festival」で、デレク・トラックス、スーザン・テデスキ、サロード奏者のアラム・カーンが共演

スーザン・テデスキのシグネチャー・テレキャスター紹介映像

―あなたのピッキングがすごく好きなんです。ピックアップの真上やブリッジ側などいろんな場所で弾いたり、時には弦を引っ張るように弾いたり、強弱のつけ方が多彩ですよね。 多くのギタリストとの共演も含め、これまでの経験から出来上がったスタイルなんでしょうか?

スーザン:子供の頃から聴いてきたギタリストたちから学んだ部分は大きいと思う。ジョニー・ギター・ワトソン、フレディ・キング、オーティス・ラッシュ、リトル・ミルトン、そしてもちろんB.B.キングとアルバート・キング……。できるだけ音にメリハリをつけて、ダイナミックなサウンドになるよう、いつも心がけているわ。だから、すごく静かに弾いたり、指で弾いたり、ピックを使ったり、オルタネイト・ピッキングをしたり、時には、思いっきり強く弾いたり、指で弦を引っ張ったりもする。一つの弾き方だけにはとどまらないように、その時、何が起きているかによって、そのエネルギーに見合う弾き方をするようにしているわ。

バンドの現在地、音楽でつなぐ愛と未来

―ライブでは若手メンバーたちの頑張りも目立ちますね。日本のファンには彼らのどんなところを観てほしいですか。

スーザン:バンドの最年少、ベーシストのブランドン・ブーンには注目して。1996年生まれでまだ30歳になったばかりだけど、本当に耳が良くて、どんな音でも聞き逃さない。バンド全体をうまく動かしたり、方向を変えたり、デレクとドラマー二人がうまく合うように持っていくのが上手いの。キーボードのゲイブ・ディクソンに対してもそう。前に出てリードするわけではないけれど、気づくとバンド全体をまとめている。とても音楽的で、優しくて……いい聴き手。曲を覚えるのも早くて、聴いたことはその場で覚えられる人よ。ぜひ注目して。

二番目に若いのがアイザック・イーディ。J.J.ジョンソンが抜けた後を引き継いだドラマーで、バンドに入ったのは彼が一番最後。そのJJは最近、ゲイリー・クラークJr.とやっているわ。アイザックはドラマーとしてもだけど、実はベーシスト、ソングライター、ギタリスト、シンガーとしてもすばらしいの。キーボードだって弾いちゃう。何をやらせても、こなしてしまう若者の典型ね。今34歳だけど、ドラムは2歳の時から叩いているらしいわ。エネルギーがあるし、ドラムのFalconことタイラー・グリーンウェルとの相性がすごくいい。二人それぞれに違う強みがあるけれど、演奏するときは境目がなくなって、まるで二人で一つの心を持っているみたいになる。そこまで息が合うって、なかなかあることじゃない。

新しく入ったトランペット奏者のエマニュエル・エチェムは日本に行くのが初めてよ。ナッシュヴィル出身で、バンドに加入して1年くらいになる。とても才能ある人。残りのメンバーは皆、前回も日本に行っているけれど、また戻れることを心から楽しみにしているわ。みんな日本が大好きなの。クルーにも新しい顔ぶれが加わったし。日本が初めての人も何人かいる。彼らもみんな楽しみにしてるわ。日本に行くのはみんなの夢なの。

スーザン・テデスキが明かすギターの極意、デレク・トラックスとの絆、ディランやクラプトンとの交流

Photo by Chapman Baehler

―いつも日本では観光があまりできていないと思います。今回は何か楽しみにしていることはありますか?

スーザン:デレクと私は、少し早めに日本へ行くわ。友人の誕生日が11月7日、ジョニ・ミッチェルと一緒で、私の誕生日はその2日後の11月9日なんで、彼の奥さんや何人かの友人と、ツアーの前に2~3日だけ旅行する予定よ。沖縄は初めてなのでとっても楽しみ。

―ちなみに、あなたもデレクもしばらくソロアルバムを作ってないですね。今はバンドとしての活動に集中したい期間?

スーザン:実際、このところはバンドの活動に集中していたのだけど、そろそろソロアルバムを作るべきじゃないか、とデレクとも話をしているところよ。私にもアイデアは色々あるので、とりあえず何かを作りたい。デレクにしても、絶対作るべきだと思うの。彼の中には、たくさんのアイデアや音楽があるんだもの。ものすごい才能がある人よ。ソロを出すのは大切なことだと思うし、その方向で話をしているわ。ただ、そのためには時間を作らなければならない。私たちはツアーが多いので、どうやって時間を作るか、それが一番の問題なの。それとは別にEPを完成させたので、次のリリースはバンドとしてのEPになるわ。来年の頭には出せるはずよ。

―思い返すと、テデスキ・トラックスが始まった時、あなたもデレクもキャリアがあり、ファンもいたので、「え、バンドになってしまうの?」という、ちょっとした抵抗感がファン同士にあった気がするんです。今は全然そんなことはなく、バンドは強い絆で結ばれ、両方のファンも自然と混じり合ってますよね。それについて考えたことはありますか?

スーザン:もちろんよ。このバンドになる前、私にもデレクにもそれぞれのキャリアがあったわけで。でも結婚して、子供が産まれても、すぐにはバンドにはならなかった。8年くらい待ったのよ。その理由の一つはまさに今あなたが言ったように、互いにそれぞれのファンがいて、個別の活動をしてほしいという声もあったから。

でも、今はこのバンドがどれだけ素晴らしいバンドか、認めてもらえているんだと思う。それは私とデレクの力だけで、そうなったわけではない。二人よりずっと大きな何かよ。このバンドが特別なのは、全員が素晴らしい才能の持ち主で、相性が抜群にいいから。加えて、それぞれの個性が、私たちを多彩なバンドにしてくれている。ただ音楽を作るだけでなく、文化の違いを超えられる。肌の色も、信仰も、人種も異なる人たちが一つになれるんだということを、皆にも知ってもらう機会にもなる。平和とか愛、癒しを、音楽を通して伝えていきたいんだということも。

今の世の中、クレイジーなことばかりで、正直怖いくらい。誰もが安心できる場所を求めているんだと思うわ。そこに行けば、明るい気持ちになって、悲しみを忘れられる、そんな場所。だからこのバンドには大きな意味があるんだと思う。というか、ファンのみんなからはそう言ってもらえているわ。

スーザン・テデスキが明かすギターの極意、デレク・トラックスとの絆、ディランやクラプトンとの交流


―ライブのセットリストは日によって変わりますよね。あれだけ大量の曲に対して、あらかじめリハーサルはしているとは言え、どのように対応しているんですか?

スーザン:基本、全員が才能あるミュージシャンだから、耳で聴けばすぐに覚え、音を合わせられる。そしてここからが「私たちならではのコツ」なんだけど、会場にはリハーサル用の小さな部屋を用意してある。毎晩、デレクがセットリストを考え、そこに私も意見をする。「この曲、しばらくやっていないから、今夜やらない?」というように。そして皆でリハーサル部屋に集まり、曲を合わせ、アレンジを話し合い、「これよりもこっちの方がいいんじゃない?」とアイデアを出し合う。つまり、ライブのある日でも、毎日練習しているようなものなのよ。セットリストを書き出したら、食事をし、練習し、ステージに上がる……とね。

―今日はありがとうございました。ライブを楽しみにしています。

スーザン:ありがとう。私たちもほんとに楽しみよ。こうして数年おきに日本に戻れるんだもの。ありがたいわ。日本のファンは私たちにとって、特別な存在。たくさんの素晴らしい人たちとも出会えた。ほんと特別な国なのよ。それに……食べ物! 日本に行って、食べまくるわ。

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スーザン・テデスキが明かすギターの極意、デレク・トラックスとの絆、ディランやクラプトンとの交流
TEDESCHI TRUCKS BAND 2026|ウドー音楽事務所サイト

テデスキ・トラックス・バンド「FUTURE SOUL TOUR 2026」
2026年11月15日(日)愛知・COMTEC PORTBASE
2026年11月16日(月)大阪・フェスティバルホール
2026年11月18日(水)東京・SGCホール有明
2026年11月19日(木)東京・SGCホール有明
2026年11月21日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI【追加公演】Peter Barakan's LIVE MAGIC! Edition

チケット料金(税込):
名古屋:全席指定19,000円/立見指定18,000円(別途ドリンク代)
大阪・東京(SGCホール有明):S席19,000円/A席18,000円
東京追加公演:指定席21,000円/スタンディング19,000円(別途ドリンク代)
※未就学児入場不可
公演詳細:https://www.udo.jp/shows/TTB26

スーザン・テデスキが明かすギターの極意、デレク・トラックスとの絆、ディランやクラプトンとの交流

テデスキ・トラックス・バンド
『Future Soul』
発売中
SHM-CD 3,300円(税込)
※日本盤ボーナストラック、解説・歌詞対訳付き
再生・購入:https://ffm.to/ttb-futuresoul
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