年2回開催される大喜利の祭典「IPPONグランプリ」(フジテレビ)。本戦出場をかけた「IPPONスカウト」でこの度、お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田和靖(37)が見事にその切符を手にした。


「IPPONスカウト」は大喜利に秀でた芸人を発掘するプロジェクト。1252人の芸人が参加した「全国一斉大喜利ペーパーテスト」から選出された6名のうち、久保田がその頂点に立った。

第16回目となる「IPPONグランプリ」(11月19日21:00-)の本戦出場者は、ロバート・秋山、千原兄弟・千原ジュニア、ネプチューン・堀内、オードリー・若林、バカリズムほか、過去の優勝者5名を含む10名。そんな猛者のなかでも一際異彩を放つ久保田は、優勝を十分射程圏内に入れたダークホースと言えそうだ。

今回はケンコバをして「芸人としては100点、人間としては0点」と言わしめた “鬼才”久保田について振り返ってみよう。

とろサーモンの華々しい受賞歴


かねてから熱狂的なファンを抱える「とろサーモン」。次長課長や中川家、今田耕司や東野幸治ら先輩芸人にもファンは多く「舞台袖に芸人が集まる」と、同業者からの支持も厚い。


ボイスパーカッションとコサックダンスを得意とするツッコミ・村田秀亮(37)の安定感と、大物芸人をも唸らせるボケ・久保田がおりなす空気は、他に類をみない独自の世界を生み出してきた。
「すかし漫才」やビートボックス漫才をはじめ、漫才を終えようとする村田を阻止する「続行!」「継続!」、あえて噛みながらワーディングで展開させる手法、そのほか次長課長・河本も絶賛する久保田のアドリブの数々……などオールラウンダーの印象が強い。

意外と知られていないかもしれないが、その受賞歴も華々しい。

・2005年:オールザッツ漫才準優勝
・2006年:弟27回 ABCお笑いバトル新人グランプリ 最優秀新人賞
・2006年:爆笑オンエアバトル 第8回チャンピオン大会出場
・2006年:オールザッツ漫才 優勝
・2007年:笑いの超新星 最優秀新人賞
・2008年:第8回 NHK上方漫才コンテスト最優秀賞

なかでも「上方漫才コンテスト最優秀賞」といえば、若手漫才師にとってもっとも誉れ高いステータスである。かのダウンタウンやチュートリアルも最優秀賞を逃しているだけあって、かれらの実力は折り紙つきなのだ。

性格が悪い? でも芸人としては100点!?


経歴を見ればスーパーエリートである事は一目瞭然だが、東京進出を果たして以降も爆発的なブレイクには一歩及ばず……。芸人仲間からは、「“売れそこねた”のは久保田の性格の悪さのせい」「相方村田さんはめっちゃ良い人」などとたびたびネタにされてきたが、それも久保田の持ち味の一つ。


過去には妻の財布から金を抜き取り警察沙汰になった事件や、彼女をガールズバーで働かせていたエピソードなど、プライベートでも「カスネタ」は尽きない。
南海キャンディーズ・山里とNONSTYLEもまた、ラジオで「同期で一番クレイジー」「面白いだけに売れて欲しくない」「あいつに権力を持たせたらヤバい」と久保田の紙一重さを暴露している。ちなみに、同ラジオでは「村田さんはとてつもなく良い人で芸達者だから売れてほしい」と語られている。

元おさわりパブ店長のガチマイクパフォーマンス


そんな久保田のお家芸といえば、セクキャバ店長時代に培ったマイクパフォーマンスだろう。代表作の「おさわりDJ」は、先輩芸人をどハマりさせた珠玉のネタである。

「さぁイっちゃって~のてぇ~」「揉んで揉まれて揉みしぐれ」「亀甲縛りはご勘弁!」「延長2時間ありがとうございまぁ~す!」など、フリースタイルのバイブス感、語彙のチョイス、造語センスは控え目にいっても天才である。店長時代、多いときにはマイク一本で100万ほど稼ぐ月もあったという。


このマイクパフォーマンスをもって、ラップの大会にも出場。戦極MC feat 芸人ラップ王座決定戦で優勝し、フリースタイルダンジョンでは吉本ラップうまい芸人として登場するなど、その才能を発揮している。随所に「笑い」や持ちネタを混ぜ込んだ即興ラップは、ラッパーの呂布カルマや、晋平太、KENthe390らを感心させた。

バイト歴もヤバすぎる久保田


このほか“ヤバいバイト歴”も久保田の専売特許のひとつ。「キャバ嬢の犬を散歩させるバイト」や「ホストの売り上げ発表会の司会」、「社長が集まるバドミントン大会の審判」「石焼き芋屋」など、アルバイト歴だけでも、番組のひとつのコーナーが成立してしまうほど。まさに人生すべてが「笑い」のためにある、そんな芸人だ。


久保田といえば未だにうだつが上がらず、歯に衣着せぬ発言の数々のせいでブレイクを逃しているとも言われる。しかし、“安心安全”を志向する昨今のテレビ業界に一石を投じる異端児を黙殺してしまえば、「笑い」はワンパターンで無味乾燥なものになってしまうだろう。

とはいえ、久保田が“国民的な芸人”としてブレイクしてしまえば笑いの絶滅危惧種が消え去るのではないか……。業界的なものへのアンチテーゼがなくなるのではないか……。そんな悲しさもある。まさに「一番売れてほしいけれど、売れて欲しくない芸人」。
久保田は現代のお笑い界の宝の1人にちがいない。
(野中すふれ)

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