「芸のためなら女房も泣かす」とは、都はるみが岡千秋と一緒に唄ったデュエットソング『浪花恋しぐれ』の一節。この曲のモチーフとなったのは、戦前における吉本興業初期のスーパースター・初代・桂春団治。
たったこのワンフレーズだけで、豪放磊落を地で行くような彼の生き様が垣間見えます。

さて、春団治は落語家ですが、芸と色が密接に繋がっているという意味では、歌舞伎界も例外ではありません。中村勘三郎、市川染五郎、市川海老蔵、中村福助、片岡愛之助など……。これまで、浮気・隠し子騒動がもち上がった千両役者のなんと多いことでしょうか。
今回紹介する中村獅童も、かつて女遊びが原因で一悶着あった歌舞伎人の一人です。

2002年の映画『ピンポン』での好演でブレイクした中村獅童


中村獅童は、1972年生まれの現在42歳。名門・小川家に生を受け、幼少期から歌舞伎の素養を叩き込まれます。

また、平行して現代劇にも力を入れていたようですが、こちらはなかなか芽が出ずに野田秀樹主宰の劇団や大人計画のオーディションを受けるも落選続き。

ようやく日の目を浴びたのは、2002年。窪塚洋介主演の映画『ピンポン』にて主人公の宿敵「ドラゴン」役に抜擢されたことがきっかけでした。ここでの存在感ある演技が評価され、日本アカデミー賞、ゴールデン・アロー賞(映画新人賞)、ブルーリボン賞、日本映画批評家大賞、毎日映画コンクールの各新人賞5冠を達成。一躍注目の俳優になります。中村獅童、30歳の時でした。


竹内結子と結婚した翌年、酒気帯び運転と信号無視で書類送検される


その後2005年、映画『いま、会いにゆきます』にて、夫婦役で共演した女優の竹内結子と結婚を発表。会見では、妻・竹内が既に妊娠3ヶ月であることも公表し、同年には男児をもうけるなど、公私共に順風満帆だった獅童。しかし、その翌年の2006年7月12日に事件が起こります。
知人から招かれたパーティーの帰り道、獅童は酒気帯び運転と信号無視をし、警視庁に検挙されてしまったのです。同年9月8日、警視庁世田谷警察署により、道路交通法違反の疑いで書類送検。本件は罰金20万円の略式命令で済みましたが、むしろ大変だったのはこの後。

当初、事故の謝罪会見にて、同乗していた女性を「妻も知っている一般の方」としていたのですが、それが実は女優の岡本綾だとバレてしまったのです。


中村獅童、かつて熱愛疑惑があった岡本綾と火遊び?


岡本は、2001年放送のNHK・朝の連続テレビ小説『オードリー』で主役を務めた、当時23歳の若手注目株。獅童とはかつて熱愛疑惑があったことから、「不倫なのでは?」と報じられました。ちなみに事件当日の夜、岡本は酒に酔い泣きじゃくっていたといいます。

この事実が取り沙汰されてすぐの2006年10月末、竹内側から離婚届が提出されます。それを機に、夫婦は泥沼の離婚劇を展開。決着が付いたのは、2008年3月7日。1年4ヶ月の短い結婚生活は正式に終わりを迎えたのです。


無期限休業を経て、引退してしまった岡本綾


さらに、それより遡ること2007年5月、騒動以降、無期限休養を宣言していた岡本がひっそりと女優を引退してしまいます。理由は「女優として内から引き出すものがなくなった」とのこと。この時でもまだ24歳。表現者としての限界を悟るには早すぎると思うのですが、果たして真相はいかに……。
ちなみに、獅童は2015年に一般女性との結婚を発表します。今回こそは女房を、そして不倫相手ができたとしても泣かすようなヘマはせず、うまくやって欲しいものです。

(こじへい)

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