時代は流れ繰り返すもの、とはよく言ったもので、最近になってブームのひとつになっているのが「バブル」。
たとえば、バブル芸で知名度をアップさせつつある芸人・平野ノラや、"ディスコ"で踊る「ワンレン・ボディコン」を意識したセクシーアイドルのベッド・インなども、バブル期の世界観をオマージュ的に演出して活躍している。


そんなバブル期には、平野ノラやベッド・インがリバイバルさせている通り、さまざまな新しい言葉も次々と生み出された。「アッシー」や「メッシー」という言葉などとともに、バブル景気で働く若い女性が勢いを増していたことを意味する言葉が「オヤジギャル」。この言葉は流行語大賞も受賞し、急激に広まっていった。

「オヤジギャル」の産みの親


その「オヤジギャル」という言葉は、雑誌「SPA!」で連載していた中尊寺ゆつこによる漫画「スイートスポット」の中で生まれたもの。
バブル期当時は女性の社会進出が目立ちはじめ、働くOLたちはそれまでオヤジの趣味 (居酒屋飲みやギャンブルなど)と言われていたことにもどんどん手を出していった。中尊寺ゆつこは、その現象をリアルに漫画で表現していた。
その「スイートスポット」に続き、中尊寺ゆつこが描いたOLがバブル時代のプライベートを謳歌する様子を描いた「お嬢だん」は、さらにヒット作品となり、中尊寺ゆつこ本人の出演でドラマ化もされている。


中尊寺ゆつこの活動は漫画家だけでなく、その時代を投影したエッセイや、TVのコメンテーターとしても活躍の幅を広げていた。
渡米して自ら英語を学ぶなどのアグレッシブさは、まさに作品主人公のような「オヤジギャル」的スタイルであったのかもしれない。

42歳の若さで他界した中尊寺ゆつこ


そんなバブル時代の漫画家の代表ともいえる中尊寺ゆつこは、結婚、2児の母となったあとも精力的な活動をしていたが、2005年に結腸ガンのため42歳の若さで他界している。

バブル期と向き合い歴史に残る言葉や作品を残しながら、やり残したこともまだあったようだ。しかし彼女自身の「もう日本に『オヤジギャル』は存在しません。(それが)スタンダードとなったから。」という主旨の発言があるように、そこにはバブル期の日本女性の進歩と変化に大きく貢献し、その姿を見据えてきた大きな自負もあったと思いたい。


ちなみに「中尊寺ゆつこ」という、今ではいかにもバブル的(!?)な名前はペンネームで、本名は「小林幸子(ゆきこ)」だった。その由来も、旧姓の藤原からイメージした藤原氏→(平泉の)中尊寺という連想からだったというのは意外だ。
けれどさすがの中尊寺ゆつこも、リバイバルでバブルブームがまた訪れるとは予想だにしなかったのではないだろうか?
(空町餡子)