2016年12月31日をもって解散を明言しているSMAPの最後の作品として、12月21日にベストアルバム『SMAP 25 YEARS』の発売が決定した。
本作は、デビュー25周年を記念して、かねてより企画されていたものであり、ファン投票による楽曲が収録される予定だ。
だが、新曲はもちろん、未発表曲やリミックスなどの収録はなく、新規性が一切ない味気のないものだ。

だが、もともとベストアルバムは、本人不在の状況で勝手に出されるものが多い。最近では2014年、クリープパイプが、自らの意向に反してベストアルバムを出されたことをウェブ上で表明し話題となった。

勝手にベストアルバムを発売されたスピッツ


そしてこの傾向は、90年代から変わらないものである。1991年のデビュー後、下積み期間を経て、94年から95年にかけ「空も飛べるはず」「青い車」「ロビンソン」といった曲でブレイクを果たしたスピッツは、99年にベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』を発売する。
だが、これはメンバーと所属事務所に無断でレコード会社が発売したものである。スピッツは「ベストアルバム発売は解散時のみ」という信念があり、アーティストの意向を完全に無視したものであった。
のちにこの作品は、2006年にメンバーの意志によって廃盤となった。

過去にはドリカムや浜崎あゆみも…


95年のデビュー後、「Heaven's Kitchen」をはじめ多くのヒット曲を生み出したBONNIE PINK(ボニー・ピンク)も、99年にベストアルバム『Bonnie's Kitchen #1』、00年に『Bonnie's Kitchen #2』が相次いで発売される。この時期、彼女は音楽留学のためアメリカに渡り、レーベルも移籍していた。だが、ベストアルバムは以前に所属していたレコード会社が勝手に発売したものであった。

ほかにも、1997年発売のドリカム『BEST OF DREAMS COME TRUE』や、2001年発売の浜崎あゆみ『A BEST』といったベストアルバムもレコード会社によって発売が強行されたものである。特に浜崎の場合、嫌気が差して、引退を考えたほどであるという。

勝手に発売されてしまう理由とは?


なぜこうした現象が起きてしまうのか。
そこにはアーティスト自身が楽曲の権利を持てない原盤権をめぐる問題が存在する。
作詞作曲を自らが手がけても、アーティストの育成費用、スタッフの人件費、機材代、宣伝費用など多くのお金がかかっており、それを負担したレコード会社が原盤権を持つことが通例とされる。そのため、アーティストの意向に反してベストアルバムが発売されてしまう現象が起こるのだ。

皮肉なことに、名曲ぞろいのベストアルバムは、大きな売上をもたらす。買う人間がいるからこそベストアルバムが作られているは厳然たる事実。このジレンマは今後も解消されることはなさそうだ。

(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりA BEST