森光子とメーテルの類似性を探る
ステーキとは呼ばず、「ビフテキ」。私の実家では、ステーキもすき焼きも肉じゃがの肉も、牛ではなく豚でしたが、やはりビフテキ毎日食ってるようなお達者な人に勝てる気がしません。
先日、『女性自身』に、「森光子 『私の若さの七つ道具』」という記事があった。
「自慢の足腰」「卵 毎日3個食べてます」「お肉大好き! 毎晩ですよ」「歯間ブラシ 寝る前に30分」「おやつ ランチは軽く」「弾き語り」「若いボーイフレンドに囲まれて」という内容だが、それで思い出した女性がいる。

『銀河鉄道999』のメーテルである。

歯間ブラシや卵3個、弾き語りなどのシーンはないが、足腰や腕っぷしの強さは鉄郎を窮地から救い出した数々のエピソードで証明済み。ボーイフレンドに囲まれてる点も一緒だ。
そして、何よりの共通点は「お肉が大好き」である。

私の印象では、メーテルといえば、「いつも肉を食べてる人」であった。
長い金髪で静かな笑みを浮かべ、優雅な物腰で注文する「ビフテキ」の強烈な一言は、すごいギャップで、子ども心に「しびれるなぁ」と思ったものである。


そこで、彼女がいかに肉を愛してきたか、『銀河鉄道999』(ワイド版・全14巻)で確認してみた。
まず1巻第1話で、いきなり「ビフテキ」を注文。3巻第1話では、ビフテキを食べる鉄郎に「おいしい……? 鉄郎」と、まるで自分は関係ないような素振りだが、次のコマにはすでに食べ終わったらしき鉄板がある。メーテル、早食いだ。
3巻第6話では、エメラルダスとの対峙を前に、
「体力がなくなると気力もなくなって死ぬことになるかもね。ビフテキを食べましょう」。

やはり「強そうな」叶恭子さんも、「お肉は毎日食べますわよねぇ」とテレビで言っていたのを記憶しているのだが、やはり肉を食らうということは、大事なのだろうか。もちろん“グッドルッキングガイ”に囲まれていますし。

さらに4巻第6話では、物騒な星で食欲をなくす鉄郎に、メーテルの「お肉理論」が炸裂する。
「気が動転してなにも食べられない人にくらべたら、たとえ震えながらでも食べる人は、食べない人より生き残る可能性がうんとたくさんあるわ(以下略)」。そして、当然のように、説教後はビフテキである。

5巻第2話は「なんにするの、ビフテキ? チャーハン?」と振ったが、提案が却下されたのか、結果、ラーメンライス。

9巻第2話では、"空気の料理"のなかから、空気でできたいちばん大きなビフテキを選択しているくせに、11巻第3話では、鉄郎の「ビフテキって最高のごちそうだね」発言に、こんな暴言を吐くのだ。
「牛さんがかわいそうだと思ったことはないの?」
それは、こっちのセリフですよ。

ところでメーテルはまた、ラーメンも大好きで(ちなみにこの世界でラーメンは、「幻の食べ物」)、1巻第10話では「ラーメンライス二つ!」と、鉄郎の意思は無視して当然のようにライスをプラス。
4巻第7話でもラーメン、5巻第5話では「10円ラーメン」、7巻第5話では大切なパスをなくし、路頭に迷っているにもかかわらず、駅の階段でラーメンを食べている。
8巻第5話でも「ラーメンライス」、9巻第5話ではとうとう「ビフテキとラーメン」。9巻第4話では、こんな薀蓄まで披露している。

「アンドロメダ星雲では、ここよりおいしいラーメンはないわ」「昔、ラーメン作りの大名人がこの星へきたと伝えられているわ」

砂糖尽くし料理や、砂料理といったものも涼しい顔で平らげるメーテル。
お達者の秘訣は、ヘビーなものでも何でもペロリと平らげる「食欲」にあるようで。(田幸和歌子)