少年マンガと少女マンガ、結局、どう違う?
ありそうでなかった、「男の子のための少女マンガ誌」。表紙にも、「男の子のための次世代ガールズコミック誕生!!」と書かれています。
5月に創刊され、一部で話題のマンガ月刊誌『コミックエール!』(芳文社)。


なんで話題になっているかというと、この雑誌が、「男の子のための少女マンガ誌」と、うたっているから。


言いたいことは分からないこともないけど、「男の子のための」感はどこにあるのか。また、何を「少女マンガ」としているのか。
絵柄? 作風? たとえば、「絵柄」で分類するなら、『月刊アフタヌーン』連載中の、『おおきく振りかぶって』も、青年マンガ誌で掲載されていた山下和美や安野モヨコの作品も、「少女マンガ」になりそうだけど……。
あえて「男の子のための」とうたう意味は、どこにあるのか。

創刊の理由などを、エール編集部に聞いた。
「最近は女性が少年マンガを楽しんだり、逆に男性読者が少女マンガを読んだりすることも増えてきました。
両者の境界が曖昧になってきた今なら、『男の子向けの少女マンガ雑誌』というものもアリなのではと思ったんです」
男性読者にもっと気軽に、少女マンガの「少女マンガならではの面白さ」を楽しんでもらえたら、という狙いだそうだ。

それにしても、「男の子も読む少女マンガ」なら、これまでもいろいろあったのに、どこが違うんですか?
「最初から男性読者を対象にしているため、少女マンガの良さを大事にしつつも男性読者が読みやすいようなテイストにしてあるところです。具体的に言うと、ギャグ要素の強化、プチ萌え、“百合”っぽさ等を取り入れています」

ちなみに、担当者に「少女マンガの定義」をどうとらえているのか聞いてみると……。
「一般的によく言われているのは『感情の動きを軸に物語が進むまんが』。個人的にはそれにプラスして『華やかな絵柄』等も現在では重要な要素だと思っています」
とのこと。
そして、少女マンガに欠かせない要素として「LOVEです!」という回答をいただいた。



では、この「男の子のためのマンガ誌」、少女マンガ界ではどう見ているのか。あるマンガ編集者に聞いてみると……。
「特にマンガ編集者同士で話題にはなってないですけど、少女マンガは基本的に『少女のためのマンガ』だと思うんですよね。“少女”っていうのは、心にずっと少女を持っている人のことで、大人でも少女。男性でも、乙女の魂を持っている人は少女なんですよ。昔から、少女の魂のある人は、男性でも『花とゆめ』とかを読めていたわけで、『男の子のための少女マンガ』は自己矛盾ではないかと思うんです」
少年マンガと少女マンガの違いについては、
「少女マンガは、心の機微や人間ドラマを描くものと言われるんですけど、少年マンガや青年マンガは基本的に、勝ち負けを描くものが多いですよね? でも、女の人は、勝ち負けで人生を考えてないじゃないですか?」

で、唯一、女性にとって勝ち負けがあるとされるのが「恋愛」で、これが王道だった一方で、恋愛要素のない少女マンガも、昔からずっとあった。
そして、これとは別の流れとして、『マリア様がみてる』が登場したのでは? と指摘する。
「『マリみて』は、思い切り恋愛マンガだと思います。『百合もの』なので相手は女の子なのですが、これらの少女マンガの流れとは違うものかなあと。『マリみて』がエポックだったのは、男の人が少女のためのものを楽しむ、という点だと思います。でもそれこそすでに『萌え』目線なんじゃないかという気がして、『コミックエール!』の編集目線と重なりそうですよね」

この真逆のパターン、「女が少年マンガを読む」ケース、昔から『少年ジャンプ』を読んでいる女の子とか、かなり多いけど、男の人にとって少女マンガとは、「男の子のための」とか、わざわざ断りを入れてもらわないと、やっぱり手を出しづらいものなのでしょうか。
(田幸和歌子)

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