いまや夏の定番メニューとなっている「冷しゃぶ」。
そもそも「しゃぶしゃぶ」の鍋も自分たちが子どもの頃などは家になかったし、もちろん「冷しゃぶ」という食べ方も知らなかった。


いったいいつから定番になったのか。鹿児島県畜産協会に聞いてみると……。
「しゃぶしゃぶは当初は牛でしたが、美味しいけど高価で、庶民はなかなか食べられない高級食材だったことから、安く食べられないかということで、昭和50年頃に豚で食べるようになったといいます」
だが、これがすぐには普及せず、平成元年頃のグルメブームで、豚のしゃぶしゃぶがだいぶメジャーになってきたのだそうだ。
「冷しゃぶの発祥に関しては不明ですが、おそらく同時期ではないかと思います」

あたたかい鍋と違い、冷しゃぶの場合は、圧倒的に牛ではなく豚が定番である理由は、
「脂の量の関係などから、冷やした後のかたさが違うのでは?」
とのこと。
また、牛のほうが冷やしたときのニオイが気になるという声もあるよう。

ところで、近年、「ブランド豚」が増えているけど、もともと豚肉には「松阪牛」とか「米沢牛」みたいな産地によるブランドはなかった。
これってなぜ? 社団法人日本養豚協会に聞いてみると……。
「もともと豚の場合、ランドレース、大ヨークシャー、デュロック、バークシャー、ハンプシャー、中ヨークシャーなどの純粋品種がありますが、肉として食べるのは、かけあわせて雑種にするのがほとんど。というのも、かけあわせることで、強健になること、それぞれの良い特徴を肉が持てるという理由があるんです」
一般に、お肉として食べているものは、ランドレースと大ヨークシャーの交雑種のメスにデュロックのオスをかけあわせてつくった豚がほとんどだとか。
一方、純粋品種は「黒豚」であるバークシャーが有名な例。

ちなみに、近年、人気となっている白金豚の場合は、LW(ランドレース、大ヨークシャー)にB(バークシャー)をかけあわせてできているのだという。
つまり、近年、ブランド豚が増えているのは、いろいろかけあわせを研究するうち、美味しい組み合わせがわかってきたということ?
「美味しい豚の組み合わせがわかっても、実はメリット、デメリットがあるんです。
普通の雑種豚の場合、お肉になるまで180日程度であるのに比べ、黒豚は240日程度もかかるとか、白金豚の場合は○日とか、何かを犠牲にする部分があるんですよ」

最近は、飼育方法の違いやエサの違いによるブランド豚も増えている。夏の食事をきっと支えてくれる豚のこと、あなたも考えてみませんか。
(田幸和歌子)