ハンコを買いにいったらお店に置いていなくて、取り寄せになった。

こんな経験は苗字が珍しい人であれば日常茶飯事だろうが、「オレの苗字、そんなに珍しくないのに、何で置いてないんだっ!」と憤慨したことのある人もいるのではないだろうか。
ハンコの既製品として登録されている苗字とそうでない苗字にはどんな違いがあるのか、調べてみた。

今回調査対象にしたのは、文具メーカーの大手、シヤチハタのネーム印「ネーム9」。このネーム9には、約2100種類の苗字が既製品(取り寄せる必要がなく、すぐに購入できるもの)として登録されているらしいのだが、自分の苗字が既製品として登録されているかどうかを「ネームナビ」というページで検索することができる。

筆者の仮説としては、「人口の多い苗字が既製品として登録されている」というもの。そこで参考にしたのが、静岡大学人文学部の城岡研究室が公開している、「日本の姓の全国順位データベース」。ここには、全国の電話帳データなどをもとに調べられた電話番号登録件数の多い苗字のランキングを、上位10000位まで見ることができる。
仮説が正しければ、このデータベースの順位の上位にある苗字約2100種類が、既製品として登録されているはずだ。

ということで早速調査開始。まず、「佐藤」「鈴木」などの超メジャーな苗字はもちろん、100位の「佐野」、200位の「富田」も当然、既製品がある。1000位の「石岡」もあった。ところが、1201位に、お店で注文しないと買えない「別注品」扱いの苗字「村尾」を発見。さらに低い順位の苗字をざっと見てみた結果は以下のとおり。
全ての苗字をチェックしたわけではないのでご注意いただきたい。

2000位 長倉 ○(既製品)
2002位 寺下 ×(別注品)
2771位 三石 ×(別注品)
2747位 入口 ×(別注品)
2750位 黒沼 ○(既製品)
2760位 外村 ×(別注品)
3602位 呉  ○(既製品)
3629位 足利 ×(別注品)
4025位 久保井 ○(既製品)
4025位 宇佐 ×(別注品)
4025位 村石 ×(別注品)

全体的に、順位が下がるほど既製品がある苗字の割合は減ってくるのだが、順位が低くても、既製品として買える苗字もある。単純に苗字がメジャーだからハンコを買いやすい、というわけではないようだ。

では、どんな基準で既製品にするハンコの苗字を選定しているのだろうか? シヤチハタの担当者に問い合わせてみたところ、こんなコメントをいただいた。

「発売したのは1968年になりますが、当時の全国の電話帳を調査し、名前の多い順に既製品を作成したそうです。ただパソコンも無い時代ですし、どこまで正確だったかはわかりません。
また、当時のハンコ屋さんで売られていたハンコのラインナップも参考にしていたそうなので、実際に苗字の多い順になっているかどうかはわかりかねます」

ということで、かなり複雑な過程を経て、現在のラインナップが決まっているようだ。

ちなみに、筆者の苗字はデータベースによると4000番台くらいで、既製品には登録されていないのだが、これを既製品に加えてもらう方法って、何かあるんでしょうか? 若干無茶ぶりとも思える質問をぶつけてみると、「今のところ既製品として追加する予定はちょっとありませんね……」とのことであった。そらそうですよね。
(珍満軒/studio woofoo)