鉄道趣味の伝統的代表格といえば、鉄道模型だ。その鉄道模型を思う存分体験できる夏休み恒例のイベント「鉄道模型ショウ」(東京・松屋銀座で7月27日まで開催)から見えてきたいまどきのキーワードは、「デスクトップトレイン」だ。


鉄道模型を趣味にした人なら誰もがあこがれるのが、実際の街や山を再現した大ジオラマに線路を張り巡らせたレイアウトの製作だ。思い通りの情景の中を好みの車両を思う存分走らせる空間は、まさに夢の小宇宙。

しかし、いざこれを作るとなると、金もかかるし時間もかかるし場所も取る。しかもジオラマ作りにはまず、地味な土台作りから入る必要があり、華々しくブルートレインや新幹線を走らせたいという夢からかけ離れた現実に、たちまち挫折してしまった経験を持つ人も、書いている私を含めて少なくない。

そんなファンの悩ましさを察してか、このところいくつかの模型メーカーが発表しているのが、勉強机レベルの面積にジオラマレイアウトを詰め込んだ完成品、すなわち「デスクトップレイアウト」なのだ。

さすがに、線路を何本も張り巡らせて、というわけにはいかないが、どこかにありそうな商店街や、風光明媚な山岳地帯をくぐり抜ける線路の様子を再現したコンパクトジオラマは、部屋を飾るオブジェとしても非常に見栄えがいい。


ジオラマには、車両がぐるぐる走り回る動的なタイプだけでなく、街の情景の再現を重視した、立体絵画ともいえる静的なタイプもある。中には古き昭和の銀座の街角や、鉄道ファンにはおなじみの山陰本線の餘部鉄橋など、実際の風景を再現した大作もある。もちろん、手の込んだジオラマとなると数10万円からという代物もある。

一方で、線路の土台や山の形などベースとなる途中の段階まで作ってあるキットを提供しているメーカーもあり、初期投資は安く抑えて、多少は自分好みの形に仕上げたいというニーズにはこちらもアリというわけだ。

また8月には講談社から、週刊誌形式で少しずつレイアウトを組み立てていくジオラマ製作マガジン『週刊 鉄道模型 少年時代』も創刊される。こちらは75週で完成までこぎ着ける仕組みになっており、この際腰を据えてジオラマ作りに取り組んでみたいという方にはおすすめだ。

(足立謙二/studio-woofoo)