音楽ファンには周知の事実だが、日本のメジャーアーティストの多くはシングルを発売した後に、それらの曲が入ったアルバムをリリースする。それに対し洋楽は、まずアルバムを発売してから、収録曲をシングル化して発売するというケースが多く見られる。
邦楽と洋楽では、シングルとアルバムの発売順がどうやら違うらしい。
なぜこのような違いがあるのだろうか。オリコンの広報部に話を伺った。

まず、本当に発売順の違いがあるのかを確認してみた。

「確かに邦楽は、シングルをリリースした後にアルバムを発売し、洋楽ではアルバムリリース後、もしくは同時にシングルをリリースするのが一般的です」

では、なぜこのような違いが生まれたのだろう。

「そもそも日本は海外に比べてシングルCDのマーケットが大きいんですよ。
アーティストをプロモーションする上でシングルのヒットはとても重要です。それなくしてアルバムセールスを伸ばすことはできないと言えるでしょう。対して洋楽は、北米や欧州においてはシングルCDのマーケット自体がほとんど無く、そのリリース数も多くはありません。その代わり、アルバムを代表する“リードトラック”をラジオ局などへ積極的にプロモーションします」

「また、アルバムの後のシングルカットには、アルバムをロングセールス化させる効果もあります。マイケル・ジャクソンの『スリラー』では、アルバム発売後すべてのトラックがシングルとして発売され、アルバムはロングセラーになりました。発売順の違いこそありますが、音楽パッケージビジネスにおいて、ヒット曲によってアーティストの認知度を向上させアルバムのセールス増につなげていくという考えが、邦楽洋楽に共通しています」

発売順の違いの理由は互いの商習慣の違いに寄るところが大きいようだ。

違った販売順を採用している双方の音楽業界だが、それぞれのメリットはどのようなところにあるのだろうか。

「洋楽が採用しているようなアルバムが先、シングルが後という発売順は、アルバムにプロモーションを集中させることができるメリットがあります。シングルCDが製作や物流のコストはかかる反面で単価が安い事などを考えると、アルバムに力を注ぐというのは効率的な考え方と言えるでしょう」

「一方で、邦楽は先行のシングルのメリットを生かしています。シングル盤に特典としてDVDなどの付加価値を付け、楽曲だけでなく映像やグッズなどを通してアーティストの魅力を伝えることができるんです。もちろんシングル楽曲自体が、アーティストプロモーションにもなっています」

洋楽邦楽、双方でアルバムセールスを第一に考えているというのは面白いところ。商習慣の違いはあれど、アーティストの魅力を伝えようというのは共通した思いのようだ。

(rotten/studio woofoo)