ほろ苦い食用菜の花の美味しい季節。

ところで、「菜の花」といえば、アブラナ科の花茎を摘んだものの総称であるが、店頭に並ぶ主流は、なぜか短く切り揃えられ、短冊みたいな紙でぐるっと巻かれて売られているものが多い。
これってなぜなのか。

たとえば、同じ葉菜類であっても、ホウレンソウはもちろんのこと、小松菜、春菊なども、長いままビニール袋などに入っている。
また、アスパラなどは、細い種類を短く切ってまとめているものもあるけれど、主流は長い状態だ。
いったい菜の花はなぜあのカタチにいきついたのか。東京青果に聞いた。

「つぼみを揃えて束ねる食用菜の花は、もともと千葉の南房総でそのように売られていたものですが、ルーツは、京野菜の寒咲花菜にあるのではないかと思われます。
短いものを束ねる理由は、まだ短い段階に、脇から出てくる側枝を次から次へと刈り込んで収穫しているからですよ」
まず主枝のつぼみを収穫すると、その後しばらくして、側枝が何本も伸びてきて、つぼみができる。側枝を収穫すると、さらに孫枝がつぼみを付ける……という具合なのだそうだ。

また、ある農家の方はこんな説明をしてくれた。
「菜の花はぎっしりと揃ったつぼみが命ですから、短いうちに側枝を刈り取って、花束のように、花の部分が見えるよう丁寧に束ねていきます。理由は、長さが短く揃っていることで、茹でやすいことと、やっぱり見た目に美しいから」

ところで、20センチほどの菜の花を束にして紙で巻いた千葉・南房総産の他に、地域にあった品種も育っている。前述の東京青果担当者は言う。

「たとえば、中国野菜由来のコウタイサイという品種は、若干花が開いた状態で、結束しないかたちで出していますし、三重では昔からある菜の花を、側枝を切らず長い状態のまま結束しないで流通させています。また、福岡菜花という品種もありますし、オータムポエム(花菜)、かき菜、チンゲン菜花など、同じ菜花であっても様々な範疇分けがされており、別の野菜として食べ方が広がってきているんですよ」

菜の花を購入する際のポイントは、「花が咲き切っていない、つぼみのしっかりしたものを選ぶこと」。また、結束されて売られているものであっても、葉やつぼみをあまり押さえつけておくのは良くないため、家庭では結束を取り去り、ばらけさせてから、ぬらした新聞紙などにくるんでラップをするなど、保湿対策をしたうえで、冷蔵庫の野菜室などに立てて保存するのが良いそう。

春を代表するほろ苦い野菜、存分に楽しみたいです。
(田幸和歌子)