“ツンデレ”という言葉があるが、いつ何時でも“デレ”というわけではなく、ときには“ツン”も放りこんでいただきたいというか。要するに、喜怒哀楽の感情表現が豊かだと、“ツン”も“デレ”もより効果的なんです。
振り幅があるからこそ、感情表現は魅力的なものに。

ところで、富士通研究所がテディベアのぬいぐるみを2005年頃より開発中。もちろん、ただのぬいぐるみではない。我々、人間の身振り手振りを内蔵カメラで察知し、それに合わせてクマちゃんも感情を露わにしてくれるというのだから、愛くるしい。

そして、その感情表現があまりにも多彩。「両腕を挙げて喜ぶ」「くすくす笑う」「声をあげて笑う」「悲しくて落ちこんでいる」「不機嫌そうに足をバタバタさせる」「あくびをする」「居眠りをする」「いびきをする」……と、約300の振る舞いを見せてくれる。
喜んだり、落ちこんだり、感情表現豊かなクマちゃんである。
小型カメラは鼻に設置しており、これで人間の顔を様子見。たまにアイコンタクトまでしてくれるそうなので、我々も胸キュンもの。

そんなこのぬいぐるみは、介護施設や教育現場、はたまた一般家庭などで人間とコミュニケーションをとり、癒しなどを与えるために開発されたもの。
だからこその、このルックス。クマちゃんならではの軟らかい毛並み、体型も幼児に近くて放っとけない感じ。
動物というか、幼児というか、体型からしてかまってやりたくなるフォルム。

実はこのテディベア、以前より施設や高齢者家庭などで医師の協力のもと実験的な使用がされていた。結果、お年寄りはストレスに対する抵抗力が増加、自律神経活動も活性化、そんな傾向が見られたという。可愛いだけじゃないのだ。

他には、高齢者の様子をチェックするなんて使い方も検討中。どういうことかと言うと、クマちゃんとコミュニケーションするお年寄りの姿を、鼻の小型カメラから確認。
これで遠くにいる息子さん夫婦も安心だが、それもこのクマちゃんの可愛らしさありきだろうか。お年寄りが「触れ合いたい」と思わなければ、意味がないのだから。才色兼備なクマちゃんである。

そんなクマちゃん、先日に行われた富士通の展示会でもマスコミ向けに披露。
今までにも、他社からコミュニケーションを図ってくれるロボットは開発されていたが、人間の働きかけによりロボットの身振り手振りが変化するほどの物はなかった。
そこに、このクマちゃんが登場したのである。
今までにない、アイコンタクトまでしてくれる人懐っこさにやられた人たちから「そこまで行かないと、親しみやすさは出ないんだなぁ」なんて、実感のこもった反響が寄せられた。心が通じ合ったのだろうか。

ただ、このぬいぐるみはまだ開発中。商品化を目指してはいるのだが、店頭販売になるか、リースになるか、まだまだわからない。
いつかは訪れる、このテディベアとのふれあいの日々を夢見て、クマちゃんと同様にいびきをかいたりしながら気長に待とうではないか。
(寺西ジャジューカ)