日本人の国民食ともいえるカレーライス。全国各地にはさまざまなご当地カレーがあるが、さすがにこのカレーを見つけたときは驚いた。
それが、「桃農家の桃カレー」と「ぶどう園の葡萄カレー」だ。

商品を企画・製造・販売するのは山梨県に本社を構える株式会社ROOTS。山梨といえば、日本一の桃とブドウの産地。たしかに、桃やブドウを使ったご当地カレーがあっても不思議はない。

気になるのはその味。正直、ユニークな商品はインパクトのわりに味がイマイチなことも少なくない。
ドキドキしながら食べてみたが、結論からいうと個人的には買って大正解。どちらもフルーツの甘さとスパイスの辛さのバランスが絶妙で、複雑ながら軽やかな味わい。そういえば、リンゴもカレーの隠し味の定番だし、フルーツとカレーは基本的に相性が良いのかも。桃カレーは桃の甘味がストレートに感じられ、葡萄カレーはブドウの甘味がじわじわ広がるどっしり落ち着いたテイスト。どちらも味は本格的で、巷のレトルトカレーとは一線を画している。

商品を手がけるROOTSの手塚さんに話を聞くと、“山梨にお土産モノが少ない”、“他県に比べて人気のご当地カレーがない”といった思いから、桃カレーの開発を決めたそう。

「桃をペーストにして入れるのは簡単でしたが、目で見ても楽しめるように形を残すのが難しく、桃を鍋に入れるタイミングに試行錯誤を重ねました。また、手作りにこだわっているので、1つ1つ皮をむき、種を取るのも大変な作業です」
苦労の末に完成した桃カレーは今年4月に販売スタート。そして7月には葡萄チャツネと葡萄の果肉を使った葡萄カレーも完成させた。チャツネとは、桃やブドウを砂糖で煮込んだ後に数種類のスパイスを調合して煮詰めたペーストのことで、桃カレーにも桃チャツネが隠し味として使われている。

口コミから話題となり、桃カレーの初回生産分は即完売。各種メディアで取り上げられたほか、山梨県の特産品アンテナショップでも売上げナンバーワンという人気ぶり。
すでにリピーターも多く、とくに女性に好評だという。

山梨で採れる地元食材にこだわった2種のフルーツカレー。実は、商品を手がけるROOTSの手塚さん自身も桃農家。当然、桃カレーの桃は手塚さんが生産したものだ。
「桃はもちろん、隠し味には県産のワイン、ニンニク、牛乳などを使い、自然豊かな山梨の美味しさを凝縮しました。また、それらを生産する若手農家の想いも込められた逸品です。
ぜひ一度お召し上がりください」
新作の葡萄カレーにも、県産ワインや山梨の富士桜ポークなどが使われている。

商品はいずれも630 円(税込)。山梨県内の百貨店・スーパー、中央自動車道SAのほか、インターネット(ONE-SHOP産地直送甲州フルーツ.com)でも販売中だ。

地域密着型ご当地レトルトカレー、クセになりそうな味ですよ。
(古屋江美子)