“海音”と書いて「かいと」と読んだり、“心愛”と書いて「ここあ」と読んだり。
これらは、民間企業が行った2009年の名前調査で、男女別のベスト100に入った漢字。
そしてこんなもんじゃない個性的な名前が、次々と誕生している。

そこで困るのが、PCや携帯電話端末での人名の漢字変換。もともと、名前は個人が考えるものだから、すべての名前は網羅できていない。特に携帯は、PCよりも変換できる人名が少ない。赤外線通信で名前を登録できるとはいえ、増え続ける個性的な名前に、何らかの対応が必要なはず。

携帯の人名変換は、どう対応してるんだろうか? 日本語入力システムのATOK(エイトック)を開発している、株式会社ジャストシステムに話を伺った。


「毎年発表される、新生児の名前の順位を参考にしたり、弊社サイトでも人名の募集をしています。それを受けて、ここ数年では“悠人(はると)”“結翔(ゆいと)”“花音(かのん)”“優奈(ゆな)”“百香(ももか)”といった人名を、変換用辞書に登録しました」

PCよりも携帯の方が、変換できる名前の数が少ないのはなぜ?
「PC向けと比べると、携帯端末等モバイル向けは、日本語入力のプログラムを使えるメモリ領域が小さいなどの制約があり、まだまだ変換用辞書自体が小さいのが現状です。また、変換するときに候補がいっぱい出てくると、選ぶのにも時間がかかるようになってしまい、それでは変換効率につながりません。登録されている候補数が増えすぎることで、ある人にとっては便利でも、別の人にとっては必要な候補を選択しにくくなってしまう可能性もあるんですね」

また機種によっては、メーカーのサービスと協力して、人名辞書をダウンロードできる場合もある。そうやって、効率よりも量を求める人に対応しているという。

ちなみにPC向けには、数年前から、ユーザーの操作から単語を学習する機能を提供しているという。
例えば「ひろあき」を「博昭」に一発で変換できなくて、“博士”の“士”を削除、“昭和”の“和”を削除して、「博昭」と表示させるとする。すると、この操作の直後に『「ひろあき」から【博昭】と変換できるようにしますか?』といったメッセージが出て、単語を覚えてくれるというもの。これで、次からは一発で変換できるようになるんだとか。極端な当て字など、機能しないこともあるみたいだけど、個性的な名前に対応できる便利な機能かもしれない。

ただしこれは、PCだからこその機能。キーボードのない携帯では、操作が複雑になることがあるから導入されていない。
現在研究開発が進められているという、携帯向けの変換に期待したい。

携帯端末の物理的な容量や、変換のときの候補数と効率の程よいバランスなどを考えて対応していた、携帯の人名変換。
増え続ける個性的な名前に、ついていけない側面と、ついていかない側面があるみたいです。
(イチカワ)