私が幼少の頃、初めて親に買ってもらったファミコンソフトは『忍者じゃじゃ丸くん』だったような気がする。『キン肉マン』でも、ザ・ニンジャにゾッコン。
武藤敬司が武者修行時代に扮していた「グレート・ムタ」は、忍者をモチーフにしたキャラクターだったらしい。好きだった。男の子は誰しも、忍者に対して憧れがあると思うのだ。

でも、忍者ってこの目で見たことがない。あれって空想上の存在だったっけ? ……とんでもない! 由緒正しき継承者が、ある教室を開いているそうなんです。
伊賀麻績(おうみ)服部流を受け継ぎ、『筋肉番付』(TBS系)や『マッスルミュージカル』など出演歴も多数、“最強ニューハーフ”の異名を持つ妃羽理(ひばり)さんは、今年の1月末より「シノビックス」なるエクササイズ教室を開講しているらしい。


何だ、それは!? 分からないことだらけなのだが、とりあえず「シノビックス」が出来上がった経緯について伺ってみた。
「ショーパブでショーを行っていた際、『妃羽理さんの忍術をエクササイズに使えないか?』と打診を受け、面白そうだなと思ったのがきっかけでした」(妃羽理さん)
当初は、忍者が行うストレッチ部分をまとめてDVDを製作するつもりだった。実際、妃羽理さんが持つ技術を映像に収めるなど着々に作業は進んでいたが、最終的には諸々の理由で頓挫してしまう。
しかし、そのタイミングで今度はエクササイズ教室講師のオファーが舞い込んだ。結果、自身とグループエクササイズのスタッフで共同開発した「シノビックス」が完成!

では、この「シノビックス」はどのような内容になっているのだろう?
「基本的には有酸素運動ですが、忍者が無駄に体力を消耗しないような動き等も取り入れております」(妃羽理さん)
まさに、実戦を前提としたエクササイズ。基本的に「目の前に敵がいる」と想定しているので、どれも理に適っているのだ。
たとえば甲冑を纏った相手に攻撃する際は、拳ではなく手のひらで打って内臓に響かせる。もしくは脳を揺らす。拳を握る場合は親指を突出し、関節部分のツボを突く。このような動きを、BGMに乗りながら70分行っていくという。

ちょっと、面白そうじゃないですか……? というわけで、私も「シノビックス」を体験しに行ってきました!
場所は、世田谷区の「アナハタヨガスタジオ」。教室に入ると、20~40代くらいの女性が多く集まっている。
あっ、中には男性もいる。趣味で通っているような人もいるし、体を鍛えていそうな上級者も発見。年齢・性別・キャリアと、本当に幅広い!
「全体で見ると、上は75歳から下は小学5年生までいらっしゃいます」(妃羽理さん)
そうこうしているうちに現れた妃羽理さんのボディが、本当に凄まじくて! これぞ“筋肉の鎧”と言うのだろうか。伊賀麻績服部流の継承者は、ガチで強そうだった。

さあ、シノビックスのスタートです! まずは1つ1つポーズを決めつつ声を発し、息を吐いていく。
「アーッ、キーッ、サーッ・ターッ、カーッ、ハーッ、ワーッ、ヤーッ、エーッ」
不思議な発声方法だが、この「ア・キ・サ・タ・カ・ハ・ワ・ヤ・エ」とは忍者が精神統一のために行う掛け声だそう。

「忍者の祖先は、実は縄文人だと言われているんです」(妃羽理さん)
「ア・キ・サ・タ・カ……」とは縄文時代の言葉であり、言霊の原型でもあるという。このプラスのエネルギーが宿った一文字一文字をカウント代わりにし、指を組み替えるのだ。これには、脳を活性化させる狙いもあるという。

そして、次に行うのは連続して技を繰り出す「乱(あやたち)」。技と言っても、曲に合わせてダンスを踊る要領で進んでいく。当然、目の前には敵がいるつもりで。

「こうしたら、相手に攻撃を受けても大丈夫でしょ?」(妃羽理さん)
……と指導法も、必ず忍者テイスト。相手を打つ時の腰の捻り方や前蹴りの仕方、相手のエラを狙ったビンタの方法、忍者独特の刀の斬りつけ方(鞘は後ろ側にあると想定)も教えてくれて。それだけじゃなく、スナップの効かせ方やステップの注意点だって細かく説明してくれる。本当に忍術を教わってる気分になってきたよ!

でも、キツい!! 受講生の皆さんも、だんだんと息遣いが荒くなってきたようだ。そんな時のために、忍者が会得している“体力を消耗しない呼吸法”も妃羽理さんは教えてくれる。当たり前だけど、忍者って奥が深いな。


そんなこんなでキツくもあり楽しくもある70分は、あっという間に終了です。でも、本物の人から教わる貴重な体験だった。
「アクションとしての殺陣を教えてくれる教室は他にもあるんですが、忍術を継承している人が少ないので、なかなか貴重な機会だと思います」(妃羽理さん)
何しろ忍術の継承者は、今は15人程しかいないそう。へぇ~、来て良かったな……。

「シノビックス」、女性だけでなく男性にもオススメです。私は、少し血が騒いでしまいました!
(寺西ジャジューカ)