「今日はどうされましたか。○○の症状ですか? △△ですか?」
レジが隣り合って複数並ぶ調剤薬局のカウンターなどで、病気や体調のことを大きな声でノーテンキな調子で聞かれ、嫌な思いをしたことはないだろうか。


院外処方では、他の薬との飲み合わせのチェックなどの意味もあり、病状・体調について調剤薬局のカウンターで尋ねられることが多々ある。
でも、周りに聞こえるような大きな声で病状や体調のことを言われるのは、正直、あまり良い気がしない人も多いだろう。
また、病院で十分に話をしてきたのに、改めて薬局で形式的な質問を繰り返される煩わしさというのも、少なからずある。

一方で、今も「院内処方」にしている医院もあり、嬉しいのは、小さな子どもを連れているときや、雨の日などには、わざわざ薬局に移動せずに処方してもらえること。病院で長時間待って、薬局でまた待つという手間がないのもありがたい。
さらに、院外処方にすると、薬局の取り分が増えるので、お金が高くなるという点もある。

こうした院外処方のデメリットをいろいろ考えていくと、昔のように院内処方のほうが良いんじゃないかという気もしてくるが……。

それらについて、大学病院の薬剤部員は、こんな話をしてくれた。
「そもそも薬剤師が『調剤』だけをするのは日本だけですよ。これは歴史的な部分がかかわっているのですが、薬剤師はもともと1240年に神聖ローマ帝国のフリードリッヒII世が作ったもので、当時は王様や貴族が主治医に毒殺される事件が相次いでいました。そこで、フリードリッヒII世が医者に毒を盛られることを恐れ、薬のチェックを別の人間にやらせたことが『医薬分業』の始まりだったんです」本来は、薬剤師は「監査役」であり、医師の指示で処方するのではなく、治療において連携していかなければいけない立場だそう。
「でも、日本では明治憲法で薬剤師が既定されたときに、『医者=薬師』となり、みんな医者になってしまって、薬剤師がいない状況になった。
そこで、『医師の監視のもと調剤をしても良い』という日本独自のルールができて、現在に至るんですよ」

とはいえ、東日本大震災において、医師が指定した医薬品が不足していた状況下で、薬剤師が代替医薬品や市販薬への切り替えを提案し、活躍したという報道もあった。
院内処方・院外処方それぞれのメリットとデメリットはある。いずれにしろ、くすりに関する十分な知識があり、相談にのってくれる薬剤師がいる「かかりつけ薬局」を作っておくということは必要なのかも。
(田幸和歌子)