齢37歳、奇跡的に嫁に行くことが決まった。なんという幸運! 俺が死ぬまでに嫁に……と笑えない要望を出していたじいちゃん含め一族郎党小躍りしている次第だが、なんとなく次に「子どもどうするんだ問題」が自分の中で出てきた。


いや、あればっかりは授かりものだし頑張っても無理な場合もあるし、こんな年だし、親も年だし、ごにょごにょごにょなんて思っていたが、やっぱりなんだか理由はわからないが、子どもは欲しいな……と思う自分がいることはいる。

本能か母性かなんなのか、細かいところはわからないがうっすらぼんやり妊娠について意識する生活をしていたら、なんと偶然にも妊活に関する書籍をご紹介いただく機会に恵まれた。それが宝島社さんから発行されている『「ベビ待ち」ってなんだよ!』である。

ありがたき幸せ! と早速拝読させていただいたが、静かな社内および帰りの電車で読むのは自爆行為な内容であった。シモ方面の話ゆえ、ある程度の内容は予想していたが、予想を上回る下品さ、お下劣な内容にまとめられていていちいち噴出さずにはいられなかった(褒め言葉です)。

こちらの書籍は、アメーバブログベビ待ち部門一位常連の「不妊ってなんだよ!(怒)」の内容をまとめて書籍化したものであるが、どのような経緯で書籍化に至ったのか編集の下村さんに聞いてみた。


「偶然、ぐうたらこさんから企画持ち込みのお電話を頂いたのがご縁です。そのとき、編集部には誰もおらず、たまたま私が電話を取りました。私は普段、ミステリー小説をメインに編集しているため、本来であれば、即座に別の編集部をご案内するのですが、なんとなく、たまたま彼女のお話を伺いました。よくよく伺うと、『不妊のブログを……』とおっしゃるではありませんか。私は、『不妊ってなんだよ(怒)』の愛読者でした。あまりの偶然に、自分の胸が震えるのがわかります。
ぐうたらこさん本人だ! とピンときました。いきなりガッツキだしたら気持ち悪いので、『よかったら、詳しいお話を伺わせてください』と冷静に言うのが、私は精一杯でした。『これはすごい縁だ、絶対に本を出版しなければならない』と使命感に激しく燃えたのを、いまでも明確に覚えています」

熱い偶然と熱い気持ちが、こちらまでビンビン伝わってくる……! そんな熱い気持ちから発刊された書籍であるが、私が読んだ感想を言うと、ためになるかはおいといてとにかくとても面白いのでぜひ読んで下さい、という強い気持ちのみである。とにもかくにも面白いので、とにかく一度読んでください! と声を大にして言いたいのだが、それではきちんとお勧めできていないので、元のブログを書くにあたり、気をつけていた点を著者のぐうたらこさんに聞いてみた。

「ブログを始めたきっかけが『不妊治療って、なんてマヌケなことばかりなんだ!』というボヤキを発散するためだったので、ひたすらにマヌケ体験を猛烈な勢いで書きまくりました。ベビ待ちブログをしているわけですから、どうしても夜の生活を書く事になりますが、匿名なので飾る必要もありませんし、誰に軽蔑されてもかまいませんから、とにかく恥を捨てて書きました。
特に意識したと言えば、アメブロさんからアクセス規制されないように、下ネタを伏せ字にすることでしょうか。とにかく『もっと下品に、お下劣に』との、ベビ待ち仲間のニーズにおこたえして、日々下世話さだけは忘れないよう心がけましたね」

なんだかよくわからない方向に前向きな気がするが、書籍を読んでその内容から、きっとぐうたらこさんは、きっと芯が強く明るい方なのだろうと思っていたので、なるほど! とつい納得してしまった。で、ぐうたらこさん、実際のところはどうなんでしょう?

「実は私、とってもストレスに弱いんです。苦手な人と飲んでいるだけで胃が痛くなったり、イライラするだけで喘息が出る、ストレス耐性のない激弱メンタル&ボディの持ち主なんです。ですから、実際は明るいというよりも、自分を守るために長く悩まないというスキルを身につけました。妙な明るさは自分を守る保身なのかもしれません。
明るく過ごす秘訣と言っていいのかわかりませんが、気持ちの持ちようとして、『この辛さも、なにか理由があっていつかは自分のタメになる』と、できるだけマイナスに捉えないようにしています。とはいえ、なんと言っても苦しい時は苦しいので、そんな時はひたすら現実逃避です。美味しいものを食べて、脳みそに優しい映像などを見てぼんやり過ごし、楽しい妄想をします。得意な妄想は、宝くじが当たった時の金の使い道です」

妄想の仕方が最高です! しかし、そうは言っても妊活にはつらい時期もあるのではないだろうか。そういうときにはどうやって乗り越えていたのかも聞いてみた。

「『今回妊娠してなければ、来月は旅行に行こう!』とか、『盛大な宴(家で飲み会)を開催しよう!』とか、『朝まで(家で)踊り狂おう!』とか、保険をかけておきました。
妊娠していたら我慢しなければいけないような、楽しいイベントを入れておくと、ダメでもそこまで気持ちが荒れずにすみました。もし妊娠できたら、キャンセルすればいいだけですから。不妊治療中の気持ちは複雑で、つらいなら妊活を休めば気持ちが楽になるのかと言えばそうではなく、休む事がストレスになる場合もあります。1周期見送る事が不安でたまらないんですよね。でも、休まずに続けるには、適度にがんばって、適度に自分を甘やかす必要があったように思います」

子どもは授かりもの、といっても頑張って妊活をしている方々にとっては、一月に一度のチャンスで授からなかった時の落ち込みは想像を絶するものがある。また、女性は出産に対し、年齢で制限されてしまう部分があるのも余計だろう。


しかし、『「ベビ待ち」ってなんだよ!』を読んで、なんだかぐうたらこさんも旦那さんも楽しそうだな~という、とぼけた感想も持ってしまった。きっとつらいこともあっただろうが、先にお答えいただいたように明るく過ごせるスキルがお二人にあったからかもしれない。そしてその部分については、とても見習いたい部分でもある。どうせ同じ時を過ごすのであれば、お互いにキリキリしているよりも笑顔で過ごしたほうが楽しいに決まっている。本書を読んでそんなことも思えた。

お勧めポイントが多く、つい長くなってしまったが最後にぐうたらこさんに本書を読んでいただきたい方を聞いてみた。

「妊活は、女性はもちろん男性の生殖能力にも年齢が大きく関係してきます。時間のリミットがある子作りですので、夫婦で将来について話しあえたら奥さんは安心できると思います。お互い、がんばり過ぎも、無関心もケンカの元ですので、一緒に足並みをそろえて進んで欲しいです! まだまだ妊活や不妊治療は、ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、夫婦の絆が深まるチャンスでもあります。お互いの人生をよりキラキラしたものにする、冒険への一歩です。苦しいこともあるけれど、すごく面白い体験でもあるので、ぜひいっちょチャレンジしてみてください」

ぐうたらこさんの書籍を読んで、自分に子どもができない可能性があるということに気づくことができた。それだけでも今後の人生設計は大いに変わる。若いからといって関係のない話でもない。逆に若い世代にこそ、今後の人生設計を考える上でぜひ一読していただきたい書籍である。そしてみんなで「私、子供がめちゃくちゃホッシーー!」と元気に言える、周りの人も「おー、がんばれ!」と笑顔で応援できる、そんな世の中になったらいいなぁと思う。
(梶原みのり/boox)