電車やバスなどの交通機関を利用するとき、運賃の支払いは「ピッ」という読み取り音でお馴染みのICカードを使うケースが大勢を占めるようになった今。そのシステムを担っているのは、ICカードを読み取る装置「ICカードリーダライタ」である。
ところでこの装置、実は日本と海外では規格が異なり、性能にも違いがあるのをご存じだろうか。

ICカードリーダライタには、タイプA、B、Cの3種類があり、うちタイプA、Bは海外で、タイプCは日本で多く使われている。では、何が一体違うのか。運賃箱などを手がけるメーカーのレシップに聞いてみた。

「タイプA、Bは、比較的安価に導入でき、世界シェアが8割にものぼります。対して、タイプCは、A、Bよりコストはかさみますが、セキュリティ性能が高く通信速度が速いことが特徴です」(レシップ担当者)

タイプA、Bが海外で8割もシェアを獲得した背景には導入コストが安価ということもあるが、それだけではない。
そもそもタイプA、Bは外国企業が開発した規格のため、いち早く国際標準規格に認定されたので、ヨーロッパや、アジアを中心に普及が進んだのだ。

一方日本発のタイプCは、コストが高いとはいえ、その分性能は優秀。海外でももっと普及してもらいたいものである。頑張れ! メイドインジャパン。

ちなみに、ICカードリーダライタが搭載されている運賃箱にも海外と日本とでちょっとした違いがあるのでついでに紹介しよう。
「アメリカの運賃箱は、外装素材としてステンレスを使用しています。
ホースで水をかけて車両を清掃することから、水に強いステンレスを使っています」
おおー、さすがアメリカ、やることが豪快です。

またアメリカでは、現金で支払いをするとき、硬貨を1枚ずつ投入する方式をとっている。日本では複数枚の硬貨を一括で投入するのがあたり前だが、アメリカでは普及していないそうだ。そうした複数枚の硬貨を瞬時に計算するには運賃箱の性能の違いが大きい。
「瞬時に投入額を計算し液晶画面に表示する技術は、当社の強みです。それが乗客の精算時間の短縮や、利便性の向上につながると考えています」(同)

以前にも、「バスの運賃箱が気づかぬうちに進化していた!」で運賃箱の紙幣循環機能などを紹介したが、今回のICカードの読み取りや小銭の計算力にも性能の違いが大きいというのには気が付かなかった。


自動車や電化製品といった比較的大きなものだけでなく、存在があまり目立たないICカードリーダライタや計算システムまで優秀なメイドインジャパン。これらのおかげで海外よりスムーズで短時間にバスや電車に乗れるわけ。これって、日本に住んでいる特権のひとつといえそうだ。
(羽石竜示)