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可愛らしい女の子の意味深発言を描く　チープアーティスト「しおひがり」って誰？

2016年06月10日(金)13:00

「わたしへの関心・意欲・態度、Ａ評価をあげるわ先生」
「やれやれ。“ねこに小判”　“あいつにあたし” ね」

淡いタッチで描かれた可愛らしい女の子の絵に、意味深なのに掴みどころのない不思議な一言が添えられたイラスト。

今、インターネット上で女の子たちを中心に人気を集めているアーティストがいます。自称チープアーティスト、しおひがりさんです。

Twitterでのイラスト投稿をメインに、これまで描かれた女の子たちを集めたLINEスタンプ「しおひガールズスタンプ」や、人気の音楽ユニット「ONIGAWARA」のCDジャケットのデザイン、ミュージックチャンネル「M-ON！MUSIC」の公式サイトでの漫画連載など、しおひがりさんの活動は多岐にわたっています。

また、アートとデザインの大型イベントである「デザインフェスタ」にも参加。
手がけたTシャツやマグカップ、キーホルダー、缶バッジなどを販売しています。なんと現在は一部のヴィレッジヴァンガードでも入手可能とのこと。

調べてもわからない謎の人

「しおひがりさんの絵本当に大好き。スタンプも毎日連打しまくり」
「しおひがりくんのイラストだったら、おしゃれ女子も普段から（Tシャツを）着れちゃう」
（以上、Twitterより一部を編集して引用）
など、Twitterでイラストの感想を調べると、その人気ぶりが一目でわかります。

しかし、様々な人たちからの支持を集めているにも関わらず、彼のプロフィールは謎に満ちています。ご本人のホームページを見ても、とても懐かしいデザインのチープとしか言いようのないページがあるだけで、彼のプロフィールなどは、ほとんど公開されていません。

一体、しおひがりさんとはどんな人なのか。どんな性格で、何を考えて、インターネットで活動をしているのでしょうか？

会いに行ってみた

気になった記者は、しおひがりさんにコンタクトをとり、対面での取材を申し込んでみました。インタビューは初めてとのことでしたが、気軽にOKをいただき、インタビューは彼の自宅にてとりおこなわれることに。

都内某所、待ち合わせにあらわれたしおひがりさんは、とても爽やかな好青年。

週に3回は行くというスターバックスでお茶をご馳走になり、自宅へ案内してくれました。

机の上には描きかけのイラストと、Twitterアイコンそのままのキーホルダー。なるほど、たしかに目の前の好青年はしおひがりさんでした。

インタビューしてみた

――いつごろからインターネットで活動されているのですか？

だいたい6年前になりますね。最初はインターネットにあるコンテンツを眺めているだけで、自分から発信することはありませんでした。ただ、学校では会えないような、おもしろい活動をしている友だちが欲しくて、ネット上に動画を投稿したり生放送をしたりしている人たちに、コンタクトをとって仲良くなりました。一緒に遊んでいたら、次第に彼らに影響を受けて、自分でも何かを発信したいという気持ちが湧き上がってきたんです。

それが活動のきっかけでしたね。もともと、僕は漠然と『学校のクラスにいる面白いやつ』以上の面白さは持っている気はしていたんです。だけど、自分の持つ面白さの出力の方法がよく分からなくて、生配信やゲーム制作など、イラストだけでなく色々な方法に挑戦して、しっくりとくるものを模索していました。

――どうしてイラストを描くようになったのでしょうか？

様々な方法を模索していく中で、自分のアイディアが最も受け手に伝わる方法だと思ったんです。要するに周りの人たちに、ウケる方法だなって。これには１つきっかけがありました。

Twitterで『遠くの国の戦争と長澤まさみの尻』というイラストを投稿した際に、芸術家の会田誠さんがRTしてくれたんですよ。一流の芸術家の方が「評価してくれた」と。勝手な思い込みなんですが、絵にまじめに取り組もうと決意したのはそこからですね。

――しおひがりさんは"チープアーティスト"と自称されていますが、そもそも"チープアーティスト"って何ですか？

“チープアーティスト”という言葉に僕が込めている祈りはだいたい1億個くらいありますが、ひとつあげるなら僕が作品に「チープな世界観」を持たせていることでしょうか。僕はかつてのトレンディドラマのような、今の価値観からすれば笑ってしまうような、言ってしまえば「安っぽい」展開が好きで、その安っぽさを濃縮しているのが自分の作品だと思っているんです。あらゆる問題をキスですべて解決してしまうような。

そのチープな世界観の作品を作り出す人という意味でチープアーティスト、そう名乗っています。

――しおひがりさんのイラストは、そんな可愛らしい女の子が描かれていますが、どうしてそこにちょっと不思議な一言が添えられているんでしょうか。

もともと言葉遊びが好きなんです。台詞の文体や言葉の選択は、村上春樹さんや糸井重里さんに影響を受けていると思っています。絵描きでありながら、言葉のスペシャリストが、僕に最も影響を与えてくれた人たちなんですよ。
そもそものきっかけは、子供の頃に遊んだ糸井さん監修の「マザー２」というゲームに夢中になったことですね。

作中の登場人物のウィットに富んだ台詞から言葉に強く興味を持ちました。いつか糸井さんのサイト「ほぼ日」で、連載を持つことが夢です。

描いてもらった

――休日は何をしていますか？

休日は友人たちと遊ぶことがほとんどです。特に愚痴を延々と聞くのが好き。

――たくさんのファンの方がいらっしゃいますが、しおひがりさんはそのことをどう思われていますか？

この前、Twitterで「ヤマザキ春のパン祭り」のシールを集めているって呟いたら、出展していたフリーマーケットに来ていたファンの方からシールをたくさんもらってとても嬉しかった。僕はぜひ皆さんと仲良くなりたいんで気軽に話しかけてくれたら嬉しいです。

…ちょっと不思議なセンスで質問に答えてくれるしおひがりさん。インタビューしていけばしていくほど、掴みどころのない不思議な感覚を味わうことになりました。

もしかしたら、その独特のキャラクターもパフォーマンスも、全て含めてチープアーティスト“しおひがり”というひとつの作品なのかもしれません。