高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

昔、細川ふみえの「だっこしてチョ」(作詞:ピエール瀧 作曲:石野卓球・犬先生)という曲がありましたが、何だったんでしょうかあれは。早すぎた名曲でした。


ところで先日、記者は「だっこ」ではなく「おんぶ」をしてもらっています。38歳にもなったというのに。


マスターが「おんぶしていい?」と聞いてくる


東京は代々木にある喫茶店「リトルディッパー」をご存知ですか?
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

このお店の店主・小林良男さんの趣味は「おんぶ」なんです。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

来店したお客さんに「おんぶしていい?」と聞き、お客さんをおんぶしまくり、その様子を撮影して店内に貼っているとのこと。テレビ番組でも取り上げられ、高田純次やマツコ・デラックス、さまぁ~ずといった面々も、小林さんにおんぶされてる(している)らしい。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

いやさ、プライベートで訪れる有名人も多い。なんと大林素子さんや水島かおりさん、プロレスラーの高山善廣選手といった豪華過ぎるメンツもご贔屓にしている模様。
もちろん、彼ら彼女らも小林さんにおんぶされています。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた


なんで、こんな事をし始めたのか? その経緯やお店の諸々について、お話を伺いに行ってきました。

――なんで、おんぶをし始めるようになったんですか?
小林さん 17年くらい前に父親が亡くなったんだけど、その前までは元気良くて、東京に来ては家族みんなで色んなところへ遊びに行っていたの。でも、亡くなる2年くらい前から旅行の道中で「疲れた」って言い出して、俺がおんぶするようになったんです。で、その後に父親が亡くなって、実家にすっ飛んで帰ったら寝てるんですよ。その時、父親の背中に手をかざしたらすごい熱いんです。
これって「いつもお前にばかりおんぶさせて悪かったな」という感謝の念を俺に伝えたいんじゃないかな? と勝手に思って。
――へぇ~!
小林さん で、「おふくろに何かしてあげてたかな?」と思い、次の年の法要に帰った時、「親父とは違うことをしよう」ってハグをしたんです。そしたら「何すんのよ!?」って蹴飛ばされちゃって(笑)。理由を話してみたら「ハグじゃなくてお父さんと同じようなことしてよ」って言われたから、それからは実家に帰ると母親をおんぶして家の周りを一周するというのが恒例になって。それを、ウチの息子が撮ってくれたのがこの写真。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

小林さん 5~6年前、家の物を整理してたらこの写真が出てきて「おんぶもなかなかいいなぁ」と思って。
おふくろも照れくさそうな顔してるし「ひょっとすると、おんぶすると意外といい顔になるのかもしれない」って。それがきっかけで、2010年くらいからみんなをおんぶするようになったの。
――小林さんからお客さんに「おんぶしていい?」って聞くんですか?
小林さん うん。
――色んなお客さんが来ると思うんですけど、小林さんの方で「この人、おんぶしたいなぁ」って感じるタイプはいるんですか?
小林さん そういうのはいないです。コミュニケーションをとって、その間に「おんぶ大丈夫?」って聞く。「この人はおんぶしても良さそうだ」って、だいたい勘でわかりますよ。
男性はほとんど断らないですね。断るのは、女性が多いです。自分の体重を気にして。
――あぁ、なるほど(苦笑)。
小林さん あとは、ほとんど「いいですよ!」って。おんぶしたら、必ず「小っちゃい頃は親におんぶされてたんだから、今度はお父さんやお母さんをおんぶしてあげなさい。
そしたら喜ぶから」って言ってやるんです。自分も息子にされたら嬉しかったから。

プロレスラー・高山善廣(体重125kg)でさえ軽々とおんぶできる


――先日、お店に『モヤさま』のロケでさまぁ~ずが来ましたよね? その時は、95kgのスタッフさんをおんぶしてましたが(笑)。
小林さん いやぁ、そんなのまだまだ! プロレスラーの高山善廣なんか125kgあるけどおんぶしちゃうもんね。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

――高山さん、プロレスラーの中でも重い方ですよね(笑)。
小林さん あのね、彼は背が高いから大丈夫です。ずんぐりむっくり体型の人は難しい。

――マツコさんをおんぶするとなるとキツそうですよね(笑)。
小林さん マツコさんは「私は重いから、こっちがおんぶしてあげる」って、自分から言ってくれましたよ。
――それにしてもこの写真、マツコさんがなんとも言えない顔してますね(笑)。
小林さん マツコさんでっかくて、僕が小猿みたい(笑)。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

小林さん みんな、いい顔してるでしょう(笑)? ニッコリして、照れくさいんですよ。
――みんな、照れくさそうですね(笑)。写真を見てると、お客さんがおんぶするパターンも多いですね。しかも、女性が多い。
小林さん きっと、自分もしてみたいんですよ(笑)。


実際におんぶしてもらった


小林さんのパソコンを拝見させていただくと、おんぶ写真ばかり収めた「おんぶフォルダ」を発見! 中を見ると、今までのおんぶの歴史を振り返ることができました。
小林さん 最初はまだ形になってないね。自分自身、おんぶの仕方がわかんなくて。
――おんぶは、やっぱりコツがあるんですか?
小林さん まっすぐ立つことがコツなんです。その方が疲れないんです。
――そうなんですか!? 写真を見ると、たしかに最近の小林さんは姿勢がまっすぐです。
小林さん うん。写真を見ると、みんな酔っ払ってる。夜はバー営業なんで、おんぶがしやすいですよね。おんぶって、普段はなかなかしないですからね。
――しないですよね。僕、数年記憶に無いです(笑)。
小林さん ちょっと来てみなさいよ。おんぶしてあげるから。あなた今、何kg?
――僕、太っちゃって、今○○kg(自主規制)なんです。
小林さん 全然大丈夫だよ。

というわけで、小林さんの背後へ行きます。
小林さん 片足だけ上げて。
――小林さん、体、めっちゃ細いですね。
小林さんの背後へ行き、差し出された右手に右足を乗せると、いつの間にかおんぶの体勢に入っている。
小林さん いいですか?
あっさり、ヒョイッと持ち上げられてしまった記者。何、このスピードと手際の良さは! 何度も言うけど、小林さんの体型はめちゃめちゃスリムだし!!

――うわっ、すげえ!
小林さん 腰に乗っけちゃうの。あとは、立つだけだから。右足を上げてもらえば、その隙間に僕は腰を入れちゃうの。
――遊園地に来てるみたいですよ。こんなに安心感あるとは思わなかったです(笑)。オートマチックに、いつの間にかおんぶされてたから!

実は取材時、たまたまお店にコーヒーを飲みに来ていた男性2人組(80kgと60kg)に、突如小林さんは「そういえば2人、おんぶしてないよねえ?」と話しかけ、当然のようにおんぶしてました。軽々と、男子2人を立て続けにおんぶ!
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

小林さん ね、いいでしょ? 僕は今までに数百人もおんぶしてるから、コツがわかってるの。逆にお客さんにおんぶしてもらう時は「まっすぐ立ってくださいよ」ってアドバイスするんです。
――でも小林さん、かなり細いですよね。
小林さん 身長が171cmくらいで、体重は56kgしかない。
――筋肉はありましたけど、かなり痩せてます! ちなみに小林さん、今のご年齢は?
小林さん 今、62歳。
――おんぶしてもらった感覚では、まだまだこの先も大丈夫だろうなと感じました。
小林さん でも、歳とともに衰えていくんだろうなとは思います。
――かなり筋肉質でいらっしゃいますけど、普段から鍛えていらっしゃるんですか?
小林さん 何もしてないんですよ。昔から、ちょっと鍛えたらすぐ筋肉になっちゃうの。今、五十肩が大変で突き指もしてるんだけど。


“おんぶしやすいタイプ”と“おんぶしにくいタイプ”がある


今までに、小林さんは600人以上をおんぶしてきているそう。完全なる“おんぶのベテラン”であり“おんぶの達人”です。

――小林さんの中で「何kgまでなら大丈夫」っていう数値的なラインはあるんですか?
小林さん 高山は背が高いからいいんですよね。写真ではキツそうな顔してるけど、楽なんです。でも、ずんぐりむっくり体型だったら100kgでもダメですね。塊ですから、それは背負えない。背が高いと重さが分散されるし、腰に乗っけて持ち上げちゃうから。
――腰で支えるんですか! そうか、おんぶする側が前かがみになると、背中に重さ全部がかかっちゃいますよね。

おんぶされた感覚から、小林さんにはしっかりとした体幹が備わっているのを察することができました。というのもこの人、器械体操に励んでいた過去があるんです。
――器械体操の経験は、おんぶに活きてますか?
小林さん 活きてないね(キッパリ)。
――ハハハハハ!
小林さん 腰の状態は悪くて、骨盤がずれたこともあったんですけど。
――それは、おんぶのし過ぎで?
小林さん いや、セックスで。
――ブハハハハハハハッ!
小林さん 無理な体勢をとったら“グキッ!”ってなって(苦笑)。
――そうなると、腰に変なクセがついちゃいますよね(笑)。腰を痛めたまま、お客さんをおんぶしてたんですか?
小林さん うん(笑)。


数多くの有名人をおんぶしてきた


このお店、数多くの“すごい人”が顔を見せているようです。例えば……

小林さん その写真のおじいちゃん、誰だかわかります? 「もうそろそろ人間国宝になるか?」とまで言われている、狂言師の善竹十郎さんなんです。
――えーっ、そんな凄い人なんですか!
小林さん おんぶしたら、他のお客さんから「マスター、この人が誰か知ってるの!?」って言われて。「いや、知らない。いいおじいちゃんだからさ」って返したら「とんでもない人なのよ!」って(笑)。
――愛想のいいおじいちゃんに見えますよね。
小林さん もう一つの写真に写ってるのは、映画『八日目の蝉』に出た渡邉このみちゃん。井上真央ちゃんの幼年期を演じて、日本アカデミー新人俳優賞を最年少で獲った子だよ。
――メンツが凄いですね(笑)。
小林さん 映画『西の魔女が死んだ』を撮った監督の長崎俊一さんも来てくれたし。『仰げば尊し』の村上虹郎くんとか、瑛太の弟さんとかも。


「おんぶ」と「コーヒー」と「クッキー」と「過激なトーク」が売り


とは言いつつ、この喫茶店は「おんぶ」だけのお店ではないです。食べログでも何でもチェックしていただければわかるのですが、飲食店として非常に高い評価をゲットしている本格派のカフェバー。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

――このお店は、いつオープンされたんですか?
小林さん このお店は、オープンして31年です。もともとはクッキーとケーキでやってた。今は、夜はバーもやっていてつまみがおいしいんですよ。焼き鳥とかパスタとかピザとか。そっちの取材はなかなか来てくれなくて、いつもおんぶばっかり取り上げられて(笑)。

そんな小林マスターのオススメは「コーヒー」と「クッキー」です。
小林さん うちはコーヒーをポットで出すんです。そういう店は珍しいんですよ。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた


では、せっかくなのでクッキーをいただきましょうか! 色々と種類があるようなので、小林さんからオススメされたものを試していきます。
●ごまのクッキー
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

――あっ、甘いけど香ばしいですね。めっちゃおいしいです!
小林さん このクッキーに、ごまは900粒あるから。

●レモンのクッキー
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

小林さん 女性にいちばん人気があるのはレモンで、最もスタンダードに見えるけど違うんです。
――……あっ、凄い。真ん中を食べると、レモンの味がする!
小林さん 酸っぱいでしょ? 酸っぱさを出すのが難しいんです。
――“レモン風味”じゃなくて、本当にレモンみたいですね! どうなってんですか、これ!?
小林さん 粉も工夫してて、小麦粉だけじゃないんです。ビタミンCが0.4g入ってるから、お肌にもいい。クッキーでビタミンを補充してるみたいなもんです。

●ペッパーのクッキー
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

小林さん ペッパーは、変わってるんです。始めは甘くて、後で心地よい辛さがじわっと来るの。ゆっくり食べてくださいね。甘さが辛くなってくるから。
――じゃあ、いただきます!
小林さん 始めは甘いでしょ? で、後で来ますから。モグモグして30秒すると「ん、何これ!?」ってなる。そんなに辛くはしてないから安心してください。適度な辛みです。(しばらく待って)来た? 
――……あっ、喉奥にすっごい来ました! 想像以上に辛いです。かなり時間差ですね(笑)。
小林さん 口の中って辛さや苦さは先に感じなくて、甘さから先に感じる仕組みになってるの。このクッキーは、脅かすのにいい。「普通のクッキーだよ」って渡して、しばらくすると辛くなるっていう(笑)。二段構えの味は食べたことないでしょ?
――「甘さの後に別の辛さがやって来る」と言うよりも「甘さが辛さに変身した」という感覚でした。

●アーモンドコーヒーのクッキー
小林さん 口の中が辛くなった後に、この「アーモンドコーヒー」を食べると調和されるから。濃厚なコーヒーですね。これで、辛さが消えますから。
――あっ、これもおいしいですね!
小林さん もう160種類くらい作ってるから、普通のクッキーはもう作らない(笑)。
――この「アーモンドコーヒー」も濃厚ですね!
小林さん 男性には、それが人気です。

このマスター、実はエピソードの宝庫です。「ひき逃げされた相手と知り合いになり、加害者を会社のクビから救ってあげた友情物語」「多くの有名人との下積み時代における親交」などなど、雑談中にここでは書けない話をたくさん拝聴することができました。
高田純次など有名人を背負ってきた喫茶店マスターにおんぶしてもらってきた

気軽におんぶされるつもりでお店へ足を運び、クッキーを食べながら過激なトークを楽しむのもアリです。
(寺西ジャジューカ)


リトルディッパー
住所:東京都渋谷区富ケ谷1-6-7 1F
TEL:03-3467-8285
定休日:毎週日曜日