トイレットペーパーの三角折は不衛生? 感染症医にリスクを聞いてみた

公共のトイレを利用したときや、他人の家のトイレを借りたときなどに、トイレットペーパーを「三角折り」にする人はいないだろうか。確かに三角折りは、「掃除後」のようで清潔な印象を与えることができる。

しかしながら、用を足して手を洗う前に三角折りをすると、不衛生であり、感染のリスクすらあるのではとTwitter上で話題になった。
本当に感染のリスクはあるのか、感染症の専門医に聞いてみた。

トイレットペーパーの三角折はしてはいけなかった?


ある病院では、トイレットペーパーを三角折りについて、次のような張り紙がしてあるという。



確かに病院では感染している患者のことを考えると、不安は大きい。用を足した後に三角折りをする場合、どれくらいの感染リスクがあるのだろうか? のぞみクリニック(東京都品川区)の筋野恵介先生に聞いてみた。

「結論から言いますと、三角折りは不衛生だと思います。ただ、三角折りをしないようにしても、感染のリスクが下がることはないと考えられます」(筋野先生)

いったいどういうことなのか。詳しく教えてもらった。

三角折りの感染リスク


トイレットペーパーの三角折は不衛生? 感染症医にリスクを聞いてみた

「確かに三角折りは糞口感染のリスクになります。例えば、胃腸炎の方が手を洗う前に三角折りをすることにより、次に使用する方の手に菌やウイルスの飛沫核が付着し、経口感染を起こすことは考えられます。ですから、三角折りをやめるように案内することは、ウイルスや菌の侵入経路を減らすということについては意味があります」(筋野先生)

他にも感染リスクはある


「ただし、他にも侵入経路がありますので、三角折りをやめたことにより、感染のリスクが本当に減るかは分かりません。『三角折りをしていない=トイレットペーパーに触っていない』とはならないからです。
トイレットペーパーホルダー、トイレのドアのカギやドアノブ、水を流すノブやボタン、荷物や上着を掛けるフックなど、用を足した方が手を洗う前に触れる場所は、トイレの中だけでもこれだけ多く考えられます。中には、トイレットペーパーをトイレットペーパーホルダーから外して使用する方もいますし、ホルダーのふたを上げてする方もいます。また、トイレから出ても手洗いの蛇口のノブや泡石鹸などのボタンなども忘れてはいけません。
また、ウイルス性胃腸炎の場合は、飛沫核になれば、長時間にわたり空気中を浮遊できるので、十分な換気が行われる前のトイレの中の『空気』ですら、感染のリスクに挙げられます」(筋野先生)

筋野先生によれば、三角折りをしないから、手を洗わなくてもいいということにはならないという。「自分が感染しないよう、トイレから出た後はしっかり手洗いをすることをおすすめします」とのことだった。

この一件は、見た目のきれいさだけでなく、衛生面のきれいさのことも忘れてはならないと気づかせてくれた。
(石原亜香利)

取材協力
医師 筋野 恵介先生
埼玉医科大学病院に勤務し、海外・国内の感染症の治療、抗菌薬の適正使用の指導が専門。ER科にも所属し、外科・整形外科等の救急疾患治療に従事。現在はのぞみクリニックに勤務。
http://www.nozomiclinic.jp/