サイゼリヤが「パルマハム生産量の10%を消費」って本当?その真偽を確かめる

手頃な価格で本格的なイタリア料理を楽しめるとして人気の高いサイゼリヤ。中でも密かな人気を集めているのが「プロシュート(パルマ産熟成生ハム)」だ。


大きめにカットされているとはいえ、2枚で399円とサイゼリヤのメニューとしては決して安くはないが、本場イタリアの味を楽しめるとして食通やグルメブロガーからの評価も高い。過去には村上龍が「紛れもない本物」としてエッセイの中で絶賛していたことからも、その品質の高さがうかがえるだろう。

ところで以前、このサイゼリヤの生ハムに関するツイートが大きな話題を呼んだのをご存知だろうか。簡単にまとめると、以下のような内容になる。

・パルマの生ハムの2割は日本へ輸出されている。
・そのうち半分は、商社を通さずサイゼリヤが直接取り引きしている。


このツイートが事実だとすると、パルマで生産された生ハムの10%はサイゼリヤで消費されていることになる。イタリアには他にも生ハムの生産地はあるが、パルマが一大生産地であることは間違いない。そのうち10%を日本の一企業が占めるって、マジですかサイゼリヤさん……。

というわけで、その真偽についてちょっと調べてみた。

2016年のパルマハムの総輸出量は270万本、そのうち日本へは……


パルマの生ハムはスペインのハモン・セラーノや中国の金華ハムと並び世界三大ハムの一つとして数えられている。イタリアではスーパーなどで購入することも可能だが、他地域で生産された生ハムと比べると値段も高く、イタリアに住んでいるとはいえ気軽な食材とは言い難い存在だ。
当然ながらイタリア国外からの引き合いも多いはずで、イギリス、フランスなど近隣諸国を中心に相当量が輸出されていると推測される。
その中で、日本へ総生産量の20%が流れているなんてことがあるのだろうか……?

パルマハムの保護や宣伝活動を担うパルマハム協会が、2017年5月に発表したパルマハムの輸出データによると、2016年のパルマハムの生産量は原木(スライスしていない塊肉の状態)で870万本。そのうちイタリア国内で消費されたのは約600万本で、残りの約270万本は輸出されているということだ。つまり、輸出されているのは総生産量のうちおよそ31%前後という計算になる。
肝心の輸出先だが、多いのはイギリスやフランス、ドイツ、ベルギーなど近隣諸国やアメリカで、日本への輸出量はそれに次いで6位ということになる。

あれ、ちょっと雲行きが怪しくなってきたような……。

問題は日本へどのくらい輸出されているのかという数字だ。
これも同資料によると、スライスパックされたものが原木換算で18,757本分、原木が88,455本で合計107,212本とのこと。つまり、日本へ輸出されているのはスライスパックされたものをあわせても、総生産量の約1.2%という計算になる。

ツイートに書かれているもう一つの記述である「そのうち半分はサイゼリヤが取り引きしている」に関しては、残念ながら担当者から期日までに回答が得られなかった。ただ、仮にこれが事実だとしても、サイゼリヤが消費しているのは最大でパルマハムの総生産量の約0.6%ということになるだろう。残念ながら、ツイートに話題になった「パルマハムの10%はサイゼリヤで消費されている」というのは事実ではなさそうだ。

「サイゼ飲み」のおつまみ筆頭の座は揺るがない?


思わぬ結論となってしまったが、それでもサイゼリヤの「プロシュート(パルマ産熟成生ハム)」が優秀なメニューであることに変わりはないだろう。

同社によると、サイゼリヤではパルマで生産された生ハムを塊のまま輸入し、自社工場で1mmの厚さにスライスして提供しているとのこと。確かに、イタリアで食べられるものと同じと言って差し支えなさそうだ。

サイゼリヤといえば、店舗をファミレスではなく居酒屋的に利用する「サイゼ飲み」が有名。ネット上では「サイゼ飲み」のコスパを賞賛したり、最強メニューを考える記事をよく見かけるが、そこでも生ハムはたびたび登場する。
100円で注文できるグラスワインとの組み合わせはもちろん、付け合せのフォッカチオを「エスカルゴのオーブン焼き」のスープと合わせたり、無料で利用できるオリーブオイルに浸して食べたりするなど、さまざまなマリアージュが生み出されている。多くの人にここまで愛されていることからも、その実力のほどがうかがえるのではないだろうか。


食事の付け合せとしても、サイゼ飲みのお供としても優秀なサイゼリヤの生ハム。店舗を訪れた際には利用してみてはいかがだろうか。
(鈴木圭)