カールとかっぱえびせんの名コピーはいかに生まれたか
昔、ヒゲが濃いとか、目が小さいとかの理由で「カールおじさん」と呼ばれていた先生や友達がいませんでしたか? 私のまわりには3人くらいいます。
お菓子のコピーといえば、「それにつけてもおやつはカール」と「やめられない、とまらない かっぱえびせん」が二大王者ではないだろうか。シンプルなのに忘れられない二つの名コピーは、いつ、どのように生まれたのか。


まず、かっぱえびせんのコピーについて、カルビーの広報担当者は言う。
「もともと広島のローカルなお菓子屋さんだったカルビーが全国的に知られるようになったのは、1969年にテレビCMをやったのがきっかけ。『やめられないとまらない』は、CM用に東京の広告代理店が考えたものですが、昔から今までかわらずそう言っていただけるのは、まさにコピー通りにお菓子を上手に作れた私たちの勝利でしょうか」
 
確かに「やめられない、とまらない」は、ごく普通の日本語だ。うちの母なども美味しいものを食べるときには必ず何でも「かっぱえびせんじゃないけど、ホントに『やめられないとまらない』だね」と言うが、あまりにコピーがハマったからこそ慣用句的に使われるようになったのだろう。ちなみに、このコピーについて、綱島理友の『お菓子帖』で、栗本慎一郎氏が学生時代にアルバイトで作ったコピーだという説があるという記述があるが、定かではない。
 
一方、カールの誕生は1968年。
テレビCM開始は、奇しくもかっえびせんと同じ1969年で、コピーと歌もそのとき作られたという。
「実はカールは、発売からしばらくの間、なかなか売れなかったんです。というのも、当時、お菓子のほとんどが50円というなかで、カールは70円。しかも、当時は味付けにもムラがあり、天敵の湿気がさらに味をおとしました。また、当時のお店や問屋からは『棺桶』といわれるくらい流通用の箱が大きすぎて扱いにくかったんですよ」とIR・広報室の中村さんは言う。

苦戦していたカールが品切れとなるくらいの大ヒットになったのは、まさにこのCMがきっかけだったのだ。
そんな名コピーを作ったのは、フリーディレクターの高杉治朗氏。名作と名高いサントリー・ローヤルのCM「ランボー」のディレクションなどで知られる人である。ところで、「それにつけても」の「それ」は何を指しているんでしょうか?
「『たくさんのお菓子があるけれども、おやつといえばカール』という意味が込められています。どんな話を受けても最後は『カール』に落とし込める、とても便利な言葉だったようですよ」(中村さん)。この思わせぶりなフレーズがいいんですね。

ちなみに、カールおじさんの誕生は1974年4月。
最初は「カール坊や」の脇役として後ろのほうに動物たちと一緒に怪しく登場していたが、「後ろのおじさんは何者?」との問い合わせが頻発し、同年7月にめでたく(?)「主役」になったのだとか。カールおじさんの主役抜擢については、社内の一部から「泥棒みたい」という反発もあったそうだ。知ってました?(田幸和歌子)