進化する地下足袋!?
(写真上から)紳士用のお祭り用足袋7型。子ども・婦人用もあります。足袋にゴムを貼り付けた地下足袋はバリエーションもさまざま
早いもので今年ももう9月。まだまだ暑い日はあるけれど、暦の上では秋。
秋と言えば祭りの季節である。秋の祭りは夏のように大掛かりなものは少ないけれど、各地で地域密着のこじんまりとしたものがたくさんあって、それはそれでまた楽しいものだ。そんな祭りに欠かせないのが“お祭り用の足袋”。
実はこのお祭り用の足袋は地下足袋の技術を生かして作られているもので、すべて同じ様に見える白足袋も、実は大別して2つの種類があるという話を聞いた。この話をしてくれたのは日進ゴム株式会社の山本さん。

先日、雨の日でも滑らない靴「ハイパーVソール」を紹介したが、この靴を製造している岡山市にある日進ゴム(株)はその地下足袋の技術を生かしてお祭りの時に使われるお祭り用白足袋も製造しているのだ。


「お神輿や山車などの引き手の人が履く足袋と、お神輿の上に乗る人が履く足袋は違うんですよ。引き手の人達が履く足袋はクッション性の優れたもので底にエアクッションが入っています。逆に山車やお神輿の上に乗る方は薄手のものを使うんです。これは地下足袋でも同じなんですが、主に農作業など凹凸のある地面で履くものは貼り付け足袋といって伸ばしたゴムを底に貼って厚くしているんです。地面からの衝撃を直接受けないような作りにするんですね。逆にとび職など高所で作業する人は足の裏の感覚が命なので、底が薄く土踏まずに吸い付くように外側からゴム底を縫い付けた縫いつけ足袋を使っているんです」と山本さん。


昔も土の道ならいざ知らず、現代の硬いアスファルトではお神輿や山車の引き手は足を痛めてしまう、ということで開発されたのがエアクッション入り足袋なのだ。

お祭りは見るばかりで参加することがないせいか足袋にもこんな工夫がされているとは気がつかなかった。こういう話を聞くたびにモノを作るということの奥深さを感じる。

そして、この地下足袋、お祭り足袋製造の技術が今新たに若い人に人気の足袋靴にも使われている。
足袋靴は以前コネタでも話題になった「SOU・SOU」がその火付け役となっているが、実はこの「SOU・SOU」の足袋靴を製造しているのも日進ゴムなのだ。

「SOU・SOU」はテキスタイルデザイナーの脇阪克二氏、建築家の辻村久信氏、ディレクションを手掛ける若林剛之氏によって立ち上げられた世界唯一の地下足袋ブランド。

足袋にゴムを貼り付けた地下足袋は日本を代表する文化ということもあってか、クリエーターも想像力をかきたてられるのだとか。

畑で、工事現場、お祭り、そして若者のファッションに地下足袋が使われているというのは何とも不思議な気がするが、地下足袋はもともとが日本の伝統文化である足袋に新しいゴムという素材を貼り付けるという柔らか頭の発想で生まれたもの。これからもっともっといろんな足袋が登場してもおかしくないのかもしれません。
(こや)