私はふだんよくJRの電車を利用しているのだが、あるとき、地元のホームで鳥の声が聴こえ、「きれいな鳴き声だなあ」と思った。

ところが、よく聴いてみると、ずっと同じトーンの鳴き声が続いているし、どうやら本物が鳴いている声ではないようなのだ。
そこで、ホーム内を探してみたところ、その鳴き声はホームに設置されている、スピーカーから流れていることがわかった。

でも一体、なんのために? ホーム内の環境をよくするためだろうか? 試しに、まわりの人たちに話してみると、「鳩などの鳥やねずみを避けるため?」などという意見もあった。さて、真実は?! さっそくJR東日本の広報部に問い合わせてみた。

なぜ、ホームに鳥の鳴き声がするスピーカーが設置されているのでしょう?
するとこんな返答が。

「ガイドラインに基づき、視覚に不自由をお持ちのお客さまに対して、ホームから改札(駅出口)へのルートを示すために設置しているんです。 具体的には、駅のホームから出口(=改札口)に向かう階段入口に設置しています。
都心のターミナル駅では、東京駅・上野駅・池袋駅・品川駅などに設置されていますね」

そうだったのか。ホームにある黄色い線、つまり視覚障害者の人たちのための誘導ブロックのことはもちろんわかっていたけれど、このように音での案内もされていたとは。

さらに、「このスピーカーの設置は2004年度から本格的に設置を進めています。ちなみに、鳥の鳴き声以外にも、改札口では『ピンポーン』という音、トイレでは『右が男子トイレ、左が女子トイレです』など、位置関係を音声で案内しているところもあります」とのこと。

そして、鳥の鳴き声として多く採用されているのは、「キビタキ」という鳥だそう。ただし、地方によって異なる種類の鳥の鳴き声の場合もあるという。


また、この鳴き声は、首都圏の駅ではだいたい30秒~1分の間隔で定期的に流れているのだとか。

ホーム利用者からの声について尋ねてみると、「ほとんどのお客さま(健常者)は、設置趣旨をご存知ないこともあり、「何のために設置されているのか」という問い合わせもいただきますし、『癒される』というご意見もいただいています」という。

私もその鳴き声にすっかり癒されていたのだが、なにはともあれ、今回はきちんとした設置の意図もわかってよかった。そして、視覚障害者の方々などへの配慮や工夫がされているのはやはり心強いことで、私たちがそのことに気がつくこともまた大事なのだと、改めて感じたのだった。
(田辺 香)