大正~昭和にかけて日活、松竹、東映など多くの撮影所があり、日本映画の中心地としての歴史を持つ京都。今も太秦に撮影所があり、映画スターが足繁く通ったお店や、ロケ地巡りなどなど「映画」をキーワードにしたガイドブックも出ているほどだ。

そんな映画の町・京都に、映画監督・林海象氏がお酒と探偵を楽しむお店「バー探偵」を、オープンさせたのが昨年4月のこと。

『私立探偵 濱マイク』シリーズのファンだった私としては早くいかなきゃ! と焦っていたのだが、先日、お昼の喫茶タイムにやっとこさ訪れることができました。外観からしてもう、古き良き時代の映画館のようなレトロタッチの絵が描かれていて、否が応にも気分が盛り上がります。横には「上海バンド」という謎のお店もあり、まさに映画の舞台のような無国籍感がヒシヒシと……。

恐る恐る入店してみたところ、中は意外に明るくくつろげる雰囲気。入り口付近にある「特別会員」ネームプレートコーナーには「藤原紀香」さんの名前を発見。
現在、公開中の作品『THE CODE/暗号』に出演されている佐野史郎さんや貫地谷しほりさん、柏原収史さんなども来店したことがあるそうだ。

応対してくださった林監督の奥様・千草さんによるともともとここは「三茶」という昭和レトロな喫茶店だったらしい。なるべく古き良き時代の内装をそのまま生かすようにしたそうで、なるほどこの落ち着ける空気感は時を経た空間ならではのものかも。

しかし、そこは「探偵」を標榜するお店だけに、ただのほっこり喫茶では終わらない。実は奥に「隠し部屋」もあるとのことで、本棚を模した壁を力いっぱい押してみると、なんと! 本当にありました。この隠し部屋は映画のスタッフが内装を担当したそうで、まさに海象ワールドに迷い込んだようなトリップ感が。
毎週、金曜日にはここで林監督の作品のほか、今後、寺山修司や唐十郎といった人たちの作品鑑賞会なども考えているそうで、なんとも贅沢な試みですよね~。オープン当時には林監督自らカウンターに立つなど、映画を愛する人たちが自由に集う、70年代のサロンのような空間をめざしているそう。

また、奥様のお話で印象的だったのは、林監督は東京・中野にある探偵学校に1年間通っていたことがあるそうでビックリ! ちなみに、探偵というものは名前ではなくナンバーで呼び合うそうで、卒業時の監督のナンバーは「511」だったらしい。そこから、「探偵事務所5」シリーズという、5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語が生まれたのだそうだ。ただ漠然と「私立探偵」というイメージに憧れているわけではなく、学校にまで入って探究する姿勢がスゴイです。

ということで、大人の本気の遊びゴコロと、映画への愛がいっぱい詰まったステキ空間だった「喫茶探偵」。
それにしても、今回は喫茶タイムに訪れたこともあってアイスコーヒーのみオーダーした私。が、実は「探偵カレー」なるメニューがすごく気になっていた。次回は絶対に「探偵カレー」を注文してみよう……と思いつつ、お店を後にした私でした。
(野崎 泉)