冬のインフルエンザの流行時期だ。特に今年は新型インフルエンザが猛威をふるっている。
筆者の周りでも爆発的に流行しているが、多くが比較的すぐに快復している。
皆がそろえて口にするのは「処方された治療薬(タミフルもしくはリレンザ)を飲んで寝たら、すぐに楽になった」ということ。どうも「治療薬と十分な休養」が重要なようだ。

そもそもインフルエンザは急性の呼吸器感染症。喉から侵入したウイルスが、気道で「細胞への感染」と「自身の増殖」を急激に繰り返すわけだ。
通常の風邪と違って、症状が全身に強く現れ、高齢者や子供や持病のある人は特に重症化する、厄介な感染症。


この病を治すには、ウイルスの感染と増殖を食い止め、人間の免疫によって倒すことが必要。
だから、感染・増殖を食い止める「治療薬」と、戦い倒すための「十分な休養」が大切だし、治療薬は可能な限り速やかな投与が求められる。

さて、治療薬の「タミフル」や「リレンザ」は、A型(新型はこの型)およびB型インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬であるが、その仕組みを簡単にみてみよう。

ウイルスは人間の細胞に侵入(感染)し、そこで増殖する。増殖したら感染細胞から出て、さらに他の細胞に感染、増殖を繰り返す。
ウイルスは表面に、細胞に入るのを助ける物質(ヘマグルチニン)を持つが、それは逆に細胞から出て離れるときには邪魔になる。

ウイルスはさらに、この邪魔を排除する別の物質(ノイラミニダーゼ)も持っており、これを使って感染細胞から遊離してゆくのだ。
治療薬の「タミフル」や「リレンザ」は、このウイルスの遊離を助ける酵素「ノイラミニダーゼ」の働きを阻害し、ウイルスの感染拡大を阻止する、といった仕組みである。

筆者の知人の多くは「タミフルのカプセル」を処方されたようだが、筆者の家族には「吸入器付きのリレンザ」が処方された。粉末状のリレンザを、この専用の吸入器によって口から吸い込むというのだ。

はて、タミフルはカプセルを飲み込むのに対して、どうしてリレンザは粉末を吸入するのか?

この疑問をリレンザの製造販売元のグラクソ・スミスクライン株式会社に問い合わせたところ、「インフルエンザウイルスが増殖する気道などの粘膜に直接薬剤を届けることができるから」と教えていただいた。
つまり、十分な薬剤が迅速に気道粘膜へ直接届くので、十分な効果と即効性が期待できるし、薬剤が全身へ与える影響も少なくて済むわけだ。

「ウイルスが喉から侵入して粘膜にくっつくのだから、薬も同じように」と言われれば納得である。吸入は他に喘息などの呼吸器疾患の薬にも採用されている方法なんだとか。
また、吸入の際の注意点としては「傾けると薬の粉がこぼれるので、吸入器は水平に」とのこと。

なお、リレンザには通常の「治療用」の他に「予防用」もあり、家族や知人が続々と発症した筆者もぜひ欲しいところだが、予防用は「患者の同居人かつ、高齢者や基礎疾患のある方限定」で、同居人であること以外、条件に合致しない筆者は処方してもらえないらしい……。

繰り返しになるが、インフルエンザに感染したら、できるだけ早く(48時間以内)に医師から処方された治療薬を服用し、十分休むことが重要。ただの風邪と思って放置していたら、重症になったり、多くの人に移したりと大変。

発熱、喉の痛みや咳が出たら、マスクをして、すぐに病院で診断を受けましょう!
また、熱が下がっても、医師から処方された薬はすべて服用することも忘れずに!
(もがみ)