「掃除機の充電って、10時間以上充電しても、使用できるのは20分とかの短い時間だけ。なんであんなに時間がかかるんだろうね?」
ある知人が、先日、そんな疑問を漏らしていた。


確かに、PCや携帯電話、デジカメなどとは消費電力が違うから別として、それなりにパワーを必要としそうなバリカンや電気カミソリ、ヘアアイロンなどに比べても、掃除機の充電に要する時間はかなり長い。

いったいなぜなのか。社団法人日本電機工業会に聞いたところ、掃除機担当者が、こんな説明をしてくれた。

「充電式掃除機は、基本的にモーターなどの大出力に適したニカド電池を6本とか8本とか使用しています。それを充電するためにはどうしても時間がかかってしまうのです。というのも、掃除機は、モーターの容量が大きいからです。
そもそもゴミを吸い上げ、動かすには真空状態にしなければならず、それにはかなり高速回転の力が必要とされるんですよ」

さらに、現状では、充電式はハンディタイプのものが主流となっていることも影響しているのだという。
「充電時間と使用時間とは、『吸い込み力』と『重量』との関係があります。電池の容量をもっと増やせば、もっと短い充電時間でもっと長く使えることになりますが、容量的に増やした分、重量がどうしても重くなってしまい、商品価値が下がってしまいます。また、重くせずに長時間使用しようとすると、吸い込み力が弱くなってしまい、これも商品価値が下がるんです」

では、ハンディタイプではなく、一般的な床移動式のタイプだと、充電時間がもっと短く、使用時間が長くなるのかというと……。
「確かに床移動式ですと、もっと短い充電時間でもっと長く使用できますね。でも、これは一時出ていたのですが、今では各社さんがやめてきていて、ほとんど出ていません。
充電式のコードレスが重宝されるのは、クルマの中や階段などというケースが多く、吸い込み力よりも“軽さ”が必要とされることが多いからです」
ちなみに、今は、電流の容量を一時的にあげ、1~2時間程度で充電できる「急速充電」のタイプもわずかに出ているそうだが、電流値が高くなるので、安全面など留意しなければいけない点があり、すぐに普及という状況ではないらしい。

「また、いちばん大きいのは、需要面ですね。掃除機をかける際、15分間まわしっぱなしという人は少ないですよね。実際、通常の床移動式の掃除機にカウンターをつけた調査によると、一般家庭での運転時間は、1回あたり平均6分程度というデータがあるんです」
確かに、掃除機を長時間かけることはあまりないわけで、1回の充電に時間がかかっても、十分な使用時間は確保されているといえそう。
「今はコードレスよりも、各社さんで『パワー』『吸い込み力』の競争になっています。それに、掃除機を使う時間は短いので、使わないときに充電するというスタイルが基本になっていて、『早く充電できる』ということにそこまでニーズがないのでしょうね」

主流が「パワー」で競い合うなか、あくまでサブの「充電」タイプに求められるのは、やっぱり手軽さ。
床移動式の充電タイプが廃れていったように、「充電問題」のニーズは二の次、三の次のようです。
(田幸和歌子)