子供の頃、周りから一目置かれる要因として“プラモデル作りの上手さ”があったと思う。これぞ、男のスキルというか。

しかし、今やプラモは大人の遊びでもある。「数カ月を要して作った、○○城のプラモデル」なんて聞くと、趣味に生きる大人の男に思えて妙にカッコいい。

そして、ここに“大人向けプラモデル”とでも呼びたくなるような、特別なブツがある。オンラインショップの「密買東京」で2007年5月より販売されている『FLAT PACKING CHAIR(フラット・パッキング・チェアー)』がソレだ。

画像を見てほしい。購入すると、この状態で送られてくる。
これを、ニッパー、ドライバー、金やすりを使って、バラして組み立てて、形の異なる2つのスツール(座席部分が円形の物と三角形の物)を完成させるのだ。

これを開発したのは、建築家の芦沢啓治さん。ただ、建築に携わる方だとしても、あまりにも茶目っ気タップリなプラモだと思うのだが。
どうも、芦沢さんは昔から“鉄”という素材に着目していた模様。鉄の可能性に興味を持ち、その特性を導き出そうと様々なプロトタイプを製作していた。そのひとつが、この『FLAT PACKING CHAIR』。


きっかけは偶然。ある日、芦沢さんの事務所に訪問した「密買東京」のスタッフが、このプラモを発見した。そこで一目惚れしてしまった同店のバイヤーが「ウチで売りませんか?」と直談判し、めでたく販売されるに至った。

だが、気になる点がひとつ。要するに、作るのが大変そうなのだが……。その辺を「密買東京」に聞いてみたのだが、そんなことないらしい。
男性のみならず、女性でも扱える、構える必要皆無のプラモ。「やる気のある女性であれば、作れます」と、担当者も豪語。

あと、もうひとつ。ハッキリ言って、組み立てる前のこの状態が魅力的という気がしないでもない。
実は、製作側もそれは承知している。だからこそ、鉄板の外枠にある上部2個所に“ひっかけ穴”が開けられた。
これを使って室内に吊るしてみれば、あまりにも独特なインテリアの出来上がり!

そして、完成後のサイズ。三角形スツールの方は、幅が350ミリ、奥行が350ミリ、高さ420ミリ。円形スツールの方は、幅が420ミリ、奥行420ミリ、高さ420ミリ、となっている。
販売価格は、59,850円(税込み)。

ちなみに、素材はまさに“スチール”そのまんま。プラモデルの「プラ」は、プラスチックの「プラ」なのに、そんなのは完全無視の100%スチール。
さび止めを使わないと、ドンドンさびていってしまうくらい、ド直球で鉄を使ってみせた。
言うまでもなく、プラモを作ると完成後に必ず残骸が残される。これも、もちろん鉄素材。愛おしいではないか。まるで、クマさん(篠原勝之)の作品みたいな。使えない部分など、無いのだ。

(寺西ジャジューカ)