梅雨どきの悩みの一つが、「くせ毛」という人もけっこういるだろう。

雨の日、湿気のある日には髪のボリュームがやたらと出たり、クセが強く出てしまいがち。


ところで、先日、都内の美容師さんからこんな話を聞いた。
「日本人の髪はもともと『太くて直毛』といいますけど、いま、本当にまっすぐの髪の人ってほとんどいませんよ。まっすぐに見える人も、たいてい縮毛矯正などしています。特に襟足の部分が上向きに生えているとか、そういうクセは日本人に多い気がします」

これについて何人かの美容師さんに聞いてみたが、一様に「完全なまっすぐの人はほとんどいない」という意見だ。
別の美容師さんも言う。
「確かに、日本人でもたいてい少しはクセがありますね。
いまは縮毛矯正が手軽にできるので、手をかけている人が多く、少しのクセでも気になってきてしまうのもあるかもしれませんが。また、お店に来るお客さんを見る限り、まっすぐで黒い髪の人は、むしろ日本人より中国の人に多い印象があります」

もしかして、くせ毛の人は増えているのだろうか。あるいは、年齢によって髪が細くなるなどで、クセ毛に見えるだけだったり?
毛髪の研究をしている、島根大学・生物資源科学部准教授の松崎貴先生に聞いた。

「私はそのようなデータを集めていないので、むしろ長年働いている美容師さんの観察のほうが事実をとらえていると思います」
松崎先生はこう前置きしたうえで、「くせ毛」について、こんなコメントをくれた。
「毛髪について、精神的なストレス等で、毛母細胞の増殖やその後の細胞分化がおかしくなる可能性が指摘されています。また、細胞増殖は体内時計のリズムによってコントロールされているようなので、不規則な生活で体内時計のリズムが狂うと、やはり母細胞の増殖やその後の細胞分化がおかしくなる可能性が考えられます」

もともと遺伝子的に「くせ毛の人」と「直毛の人」という違いがあるのだと思っていたが、ストレスや生活リズムの崩れなどによっても起こりうるとは。

なぜそのようなことが起こるのだろうか。

「毛母細胞の成長速度や分化速度が一律でない場合、髪の断面が楕円形になって力の掛かり方が不均一になったりケラチンタンパク質の並び方が変化して歪みが生じたりするので、真っ直ぐ伸びることができず、くせ毛になります。昔より最近のほうが、こうしたバランスが崩れた髪が増えていることは納得できる気もします」

「くせ毛」は、本人的には気にする人が多く、自分自身も、くせ毛が昔からイヤだったのだが、とはいえ、都内の別の美容師さんは言う。「最近は『いかにも矯正してます』っていうのを嫌がって、自分のくせを活かすカットをする人、『くせ毛風のパーマ』の人なども増えています」

また、最近は、女性誌で「胸キュン男子」として「くせ毛男子」なんて言葉も飛び出して、一部では「くせ毛好き」もけっこういるらしい。
梅雨のうっとうしい季節、憂鬱にならず、「くせ毛」と楽しく付き合いたいもんです。
(田幸和歌子)