ジェットコースターでもタイムマシンでも、思いついたらちゃっちゃと作ってしまう天才兄弟。弟たちの突拍子もない発明をママに告げ口したくて、いつも必死なお姉ちゃん。
ぼんやりしたペットのカモノハシは、実は敏腕スパイという裏の顔を持っていて……。

いかにも子どもが好きそうなドタバタコメディなのに、なぜかパパママ世代の「子どもと一緒に見てたらハマっちゃって」という声をやたらに聞くのがアニメ『フィニアスとファーブ』だ。

本国アメリカでは小中学生の子どもたちに絶大な人気を誇り、米テレビ界で最も権威のあるエミー賞(R)を受賞しているこの作品。日本では2008年からディズニー・チャンネルで放送されているが、今春からテレビ東京系の地上波でのオンエアも始まり、熱狂的なファンが急増中だ。キャラクターの中でもゆるキャラ的なカモノハシの“ペリー”は特に人気が高く、海外通販も含めてグッズを買い漁るファンが少なくないという。

オトナ目線で見た『フィニアスとファーブ』の魅力のひとつは、細かな伏線が張り巡らされたストーリー構成にありそうだ。
毎日楽しく発明にいそしむフィニアスとファーブを中心に話は進むが、弟たちの大胆な試みをママに言いつけようとして毎回失敗する姉のキャンディス、そしてアニマル・エージェントとして活躍するカモノハシペリー&宿敵である悪の科学者・ドゥーフェンシュマーツ博士の3組のできごとが複雑に絡み合い、ストーリーのどこかでちょいちょいニアミスもしていく。1エピソード10分弱なのだが毎回“ながら見”ができないほど、後半はたたみかけるような展開でオチがつくのが見どころだ。

そして登場する子どもたちのふとしたコメントが、おマセで笑えるのもポイント。「発見は競争のためじゃない。楽しむためさ」と言ったフィニアスに「あとモテるため!」と付け加えるファーブ。フィニアスに恋する女の子・イザベラが「フィニアスに会う口実が欲しいんでしょ?」と友達にからかわれ「私、そのために生きてるのよ……」とアンニュイに反論するシーンなどなど。
この子たち、10歳ですよ?(笑)

ちなみにフィニアスとファーブは義理の兄弟で、イギリス人のパパと、アメリカ人のママはバツイチ同士。家族をとりまく交友関係は、前述のイザベラがヒスパニック系ユダヤ人、クラスメートの数学大好き少年・バルジートはインド人、姉キャンディスの親友・ステイシーは日系人と、いまどきのアメリカらしいキャラクター設定も興味深い。

また番組でもこのために特番が企画されたほど人気なのが、各エピソードにミュージカル風に盛り込まれる挿入歌だ。キャッチーで覚えやすい曲ばかりなのだが、ビーチボーイズ風ポップスだったり、はたまたAC/DCのようなロックンロール、クラフトワークを彷彿とさせるテクノポップなど、どことなくテイストが懐かしいのもオトナ受けする一因なのかも知れない。

さて、このアニメの待望の長編作品『フィニアスとファーブ/ザ・ムービー』が7/18にDVD&ブルーレイで発売されることに。ペリーの宿敵・ドゥーフェンシュマーツ博士が発明したマシンをフィニアスとファーブが修理していたところ、装置が作動。
2人は博士が支配する暗黒の異次元世界へと迷い込んでしまう。飼い主の2人を救うため、ペリーは秘密の正体である“エージェントP”に変身するが……。
本編はもちろん、未放送エピソードや未公開シーンなどがボーナスコンテンツとして収録されるのも、マニア心をくすぐる仕様になっている。

フィニアスとファーブの自由すぎる発想と、思いついたら即行動に移す実行力はある意味爽快で、見る人に元気や勇気を与えてくれる。長編だけにラストへの伏線たっぷりとなる77分、できるだけまばたきせずに(?)、じっくりと楽しんでほしい作品だ。
(古知屋ジュン)