読書の秋。電子書籍を楽しむ人も身近で増えているが、個人的には、好きな作家の小説やエッセイはやはり本のかたちで読みたい派。
先日、コネタで“本の仕立て直し”を請け負う「空想製本屋」さんが紹介されていたけれど、最近、このクラフトとしての製本に興味を持ち、自らの手で手持ちの本を製本し直したり、オリジナルの作品を創る人が増えている。書籍などもたくさん出回っているが、材料をゼロから自分で揃え、市販のテキストを頼りに一人で学ぶのはちょっとハードルが高い面も……。

そんな、興味はあってもなかなか一歩を踏み出せずにいた人におすすめなのが、創元社から発売中の「わたしのつくる本」という材料付きの製本キット。製本クロスや見返し用の紙、スピン(しおり紐)、ボンドや刷毛にいたるまでがセットになっているので、先生に習わずともレクチャーブックを見ながら、独学でお気に入りの文庫本を小ぶりのハードカバーに仕立てることができる! という優れもの。

一度、つくってみると「なるほど本ってこうなっているのか」と仕組みがよくわかるので、ここからサイズを変えてみたり、傷んだ本を修理したり、大切な人に贈る本を自装してみたり、中身が白い岩波文庫の「マイブック」などをハードカバーに仕立てて、オリジナルのノート、アルバムなどをつくることも可能だ。
製本の知識がゼロだった私も、どうにか3時間程度で完成できた。
古本屋で買ったカバーのとれた文庫本を自装してみたのだが、本の形になったときには「おぉ~」と我ながら感動!

版元の担当者さんに企画のきっかけなど伺ってみたところ、2010年の3月から開催している「本づくりセミナー<製本教室>」の第一回目、「文庫本を上製本にする」がキャンセル待ちになるほど人気を集めたことが、書籍化のきっかけになったという。今回のテキストにも、初心者が間違えやすいポイントをクリアにし、実際の指導から得たノウハウを盛り込んでいるとのこと。なお、発売後の反響などはどんな感じだったのだろう?

「クラフト好きのかたはもちろんですが、文学をはじめとした、いわゆる創作・同人系の方々からの反響を多くいただきました。一番うれしかった声は、『今まで気にも留めていなかった本の仕組みがわかり、またその手間もわかって、ますます蔵書に愛着が湧いた』といった旨のものでした。本というモノのおもしろさがわかっていただけたようで、とてもうれしく思いました」とのこと。

出版不況ばかりが取り沙汰される昨今だが、本好きとしては、新たな本の魅力に今一度注目が集まるのはうれしい限り。
製本という身近でありながらマニアックな世界、あなたもこの機会にのぞいてみてはいかが?
(エキサイトニュース編集部)