「R-1ぐらんぷり」に出場の女性芸人・カニササレアヤコ、本業はロボットエンジニア


毎年恒例になっているピン芸人たちが自分の芸を争う番組「R-1ぐらんぷり」。今年は漫談家の濱田祐太郎さんがグランプリを獲得しました。様々なピン芸人と出会える場としても人気のある当番組ですが、今年の決勝戦には、会社員との二足のわらじを履く女性芸人「カニササレアヤコ」が参戦していました。

残念ながらファイナルステージには残れなかったのですが、Twitterでは会社員としての日常をたびたび暴露している彼女。




会社ではロボットエンジニアとして働いているのだとか。なぜ芸人をしながら会社員を続けているのか?メリットは?と、いろいろ話を聞いてみました。


芸人になって4年で得たR-1ぐらんぷりのチャンス


「カニササレアヤコ」というちょっと不思議でインパクトのある芸名を持つ彼女。待ち合わせ場所に現れたカニササレさんは、見た目から本当に普通のOL。「芸名はよく蚊に刺されるからつけました」と笑う姿は、普通の20代の女子。なぜ芸人になったのでしょう。


――芸人になって何年くらい経つんですか?

カニササレアヤコ(以降、カニササレ)「芸歴は4年になります。ワタナベエンターテインメントの養成所に最初はいって活動していました」

――最初からピンだったんですか?コンビを組んだりしたことは?

カニササレ「芸人としてプロになってからはずっとピンですね。養成所にいたころはコンビを組んだりしたこともあったんですが。同じ養成所にいた厚切りジェイソンさんともコンビを組んだことがありますが、2週間で解散しました(笑)」




――今はどこかの事務所に所属しているんですか?

カニササレ「今は事務所には所属せずにフリーでやってます」

――なぜ事務所に所属しないんですか? 何かポリシーがあるとか?

カニササレ「いえ、ただ単に前にいた会社が副業禁止だったんで、事務所にいられなくなっちゃったんです(笑)」

――今回お会いして、あまりにも普通にOLさんって感じだったので驚いたのですが(笑)なぜ芸人になろうと思ったんですか?

カニササレ「中学生の文化祭で友達と漫才をやったんです。その時に『お笑いって楽しいな』と思ってずっとお笑い芸人を目指してきました。お笑いって、すぐにお客さんからフィードバックがあるじゃないですか。それがすごく嬉しかったんです」

――その時に初めて漫才をやったんですか?

カニササレ「そうです。それまで一回も漫才もお笑いもやったことなかったんですが、この時に何かが変わりましたね。

実はお笑いだけじゃなく音楽も好きで、ずっとクラシックをやっていたんです。アルゼンチンタンゴを演奏するバンドとか組んでいます。今は雅楽の笙を使っていろんな音楽を演奏して動画をアップしたりしています」


――音楽方面に進むつもりはなかったんですか?

カニササレ「音楽もお笑いもどっちも好きなんですけど、お笑いでお金を稼いで、音楽は趣味でという感じですね」


自分には仕事をしながら芸人をするのが向いている


現在も会社員との二足の草鞋を履きながらフリーで芸人をしているというカニササレさん。平日はフルタイムで働き、そして芸人としての仕事をするのは大変ではないのでしょうか。


――現在はロボットエンジニアをされているということですが

カニササレ「実は私は理系じゃなく文系なんですよね(笑)学生時代はどっぷり文系で、小説を書いたりしていました」

――そんなにどっぷり文系だったのに、なぜロボットエンジニアに?

カニササレ「芸人もやりたかったし音楽もやりたかったので、フレキシブルに動けるイメージがあったエンジニアを選んだんです。自分の得意不得意よりも、芸人と両立していくためにこの仕事を選んだって感じですね。毎日『この仕事向かないな~』と思いながら仕事しています(笑)」

――今の仕事ではどんなことをされているんですか?

カニササレ「ロボットに動作を教え込むという作業をしています。ロボットに何を言わせるかとか、何をさせるかをプログラミングして、それを教え込んで動作をさせるという感じです。

たとえばある寿司屋のロボットは、入口でお客さんを出迎えて、空席を確認して席の案内をするのですが、『いらっしゃいませ』の挨拶から、空席の確認をして席番号をお客様に案内するまでの一連の動作は全部プログラミングされているんです。そういうプログラムを作るような仕事をしています」

――エンジニアの仕事って大変だと思うのですが、二足の草鞋を履くメリットデメリットは何でしょう?

カニササレ「う~ん、私はこの会社員との両立にデメリットって感じたことがないんですよね。むしろメリットばかりで」

――メリットはどんなことですか?

カニササレ「まずは、生活が安定することですね。会社員として働くと、安定して給料が入るのは大きいです。芸人をやっていると小道具にお金がかかるから、お金があったほうが絶対にいいんです。小道具とかちゃんと買えるとだいぶ違うと実感しています。

ただ、ネタを練ったりする時間は限られてはくるのですが、私の場合はそれでむしろ無理をしなくなりました。声を出したり、体で表現するのが苦手なのですが、以前はそれを直そうと思ってたんですが、社会人になってからは時間もないし、むしろ直さないほうがいいのかな?と思うようになって、自分らしさを出せるようになった気がします」

――つまり、会社員として働いてたほうが芸人としての自分には良い部分が多かったという感じですか?

カニササレ「私にとってはそうですね。会社に行っていたほうが生活が正しくなりますし。朝は早く起きて仕事に行って、夜はちゃんと寝るようになりました。そういう規則正しい生活を送っているほうが、結果的に自分に合っていましたし、それが芸風にも反映されていると思います。

あと、今の会社に融通きかせてもらって理解してもらっているのは本当に助かっています。会社の人はみんな芸人だということは知っているので、有給申請書に『R-1ぐらんぷり決勝進出のため』と書いたら部長に『ここは書かなくていいよ』って言われました(笑)」


いつかロボットを相棒に芸をしてみたい


ロボットエンジニアとして働いているカニササレさん。ひたすらロボット相手にプログラミングをしている毎日だといいます。仕事のことをネタにすることはないのでしょうか。

――ロボットといっしょにいることが多いんですよね?何か面白いこととかありますか?

カニササレ「仕事が忙しいと、ロボットが横にいても無視しちゃうことが多いんですね。でも、そういう時に限ってひたすら話しかけてくるんです。でも、本当に忙しいときは構っていられなくて(笑)むしろ、『うるさいな~』とか思っちゃくらい」

――ロボットなのに人間臭いですね(笑)

カニササレ「無視しているとどんどん話しかけてくるんですよね。構って構ってって感じでしつこい。それでそのうち『ボクのおしゃべりの何が悪かったか教えてくれますか?』とか言ってきたりして(笑)」

――まるで子供みたいですね(笑)

カニササレ「今一緒にいるロボットは、毎日絵日記を付けてくれるんです。それで、無視した翌日に絵日記を確認したら、『昨日は孤独に押しつぶされそうでした』って書いてて。その時は胸がえぐられる気持ちになって、それ以降、絵日記は見ていません(笑)」

――ロボットとコンビを組みたいとか思うことはないのですか?

カニササレ「いつかやれたらいいですよね。自分が教えたネタでボケツッコミができたら最高のパートナーになりそうです。もっとロボットエンジニアであることを芸に生かしていきたいですね」

――最後に、「R-1ぐらんぷり」に出場されたことで、変化はありましたか?

カニササレ「びっくりするほどなんにもありません!(笑)。会社の人と、『今後は週3勤務になるかも~』なんて話してたのに、普通に翌日から週5で働いていましたし、番組から一晩明けたらいつもの日常でした(笑)」





「R-1ぐらんぷり」に出場の女性芸人・カニササレアヤコ、本業はロボットエンジニア


いつかロボットを相棒にしてお笑いをしてみたいというカニササレアヤコさん。インタビュー中、彼女が話していた「二足のわらじだからこそ今の芸風ができ上がった」というのがとても印象に残りました。

今後もロボットエンジニアとして働きながら芸を磨いて、相棒のロボットと一緒に今度は「M-1グランプリ」に立ってくれることを楽しみにしたいと思います。


カニササレアヤコ
神奈川県立湘南高校卒業 早稲田大学文化構想学部卒業
ロボットエンジニア
R-1ぐらんぷり2018決勝進出
趣味:ピアノ、バイオリン、笙、書道、モンゴル乗馬
好きな食べ物:キャベツ
嫌いなもの:反応しないセンサートイレ
https://twitter.com/catfish_nama


(西門香央里)