【中証視点】中国人民元のアセアン地域通貨化は課題山積

2011年10月24日 11時20分

21日に広西チワン族自治区で開幕した「第8回中国ASEAN博覧会」と「第3回中国ASEAN金融提携発展リーダーフォーラム」で、人民元が最もホットな話題になった。中国人民銀行の金総裁補佐は、中国が多くのアセアン加盟国と2国間スワップ協定締結に向けて交渉中であることを明らかにした。合意時期は交渉の状況によって判断するという。中国は現在、インドネシア、マレーシア、シンガポールのアセアン加盟国3カ国と2国間スワップ協定を結んでいる。(サーチナ&CNSPHOTO)

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 <中国証券報>21日に広西チワン族自治区で開幕した「第8回中国ASEAN博覧会」と「第3回中国ASEAN金融提携発展リーダーフォーラム」で、人民元が最もホットな話題になった。中国人民銀行の金〓(王へんに奇)総裁補佐は、中国が多くのアセアン加盟国と2国間スワップ協定締結に向けて交渉中であることを明らかにした。合意時期は交渉の状況によって判断するという。中国は現在、インドネシア、マレーシア、シンガポールのアセアン加盟国3カ国と2国間スワップ協定を結んでいる。

 中国人民銀関係者や国有大型銀行の幹部、中国の企業家らが多くの場で、人民元に国際化能力があることを強調している。ただ第一線で活躍する市場関係者は中国証券報の取材に対し、「資金プールの小ささや、人民元の還流が難しいといったさまざまな問題があるため、人民元が一定域内で強力な通貨になるには長い時間を要する」との考えを示した。

◆地域化の道はスタート段階

 中国とアセアンは地域金融メカニズムの建設において実質的な進展を遂げた。ただ中国やアセアン各国の金融専門家によると、アセアンなどの金融の基礎が整っていない経済体で人民元建て貿易決済や人民元建て融資を展開するには◇金利の不統一◇為替のリスク◇資金プールの小ささ◇ヘッジ商品の欠如◇国内への還流の難しさ――などのネックがなお存在する。

 カンボジアCanadia Bank PLCの頭取「企業は人民元建て融資を受ける際は多くのことを考慮する必要がある」と話す。中国の銀行貸出金利が東南アジア各国よりはるかに高く、資金調達コストがかさんでしまうことや、人民元の先高観が強まる中で、大きな為替リスクがあることを指摘し、「人民元を地域性の通貨にしたければ、まず金利をアセアン市場に近い水準に維持した上、より効率的な決済プラットフォームを構築すべきだ」と述べた。

 マレーシアは最も早く中国と二国間スワップ協定を結んだ。マレーシア・メイバンクの大中華・東北アジア部門の張貴興行政総裁によると、実際のオペレーティングでみると、ここ数年はマレーシア内で個人が人民元を使用する機会が増えているが、企業に関しては人民元の備蓄プールが小さく、決済や対中人民元建て投資の難しさから使用は少なく、人民元の地域化の道はまだ初歩的な段階にとどまっている。

 また金融関係者によると、東南アジア企業が大量の人民銀を持っていたとしても、その投資ツールやヘッジツールに欠けている。張行政総裁は、「マレーシアの銀行は中国への投資機会をうかがっているが、政府の規制がネックとなっている」と述べ、「人民元にアセアンでの影響力を持たせるには、より多くの投資機会を提供し、人民元が中国市場に還流しやすいようにすべき。そうなれば企業はおのずと人民元建て融資や人民元建て決済を使いたがるようになる」との見方を示した。

 市場関係者によると、アセアンにおける中国の経済影響力は拡大を続けており、企業の人民元に対する需要が増えている。だが企業が人民元建て事業に関わる際、とりわけ中国へ投資するための融資を得るには、まず中国系の銀行と提携しているのが現状だ。今後、東南アジア各国の銀行が人民元業務に参入する機会が増えることも予想される。

◆地域内での金利を協調

 中国銀行の李礼輝総裁は、「中国とアセアンの金融提携はなおスタート段階にある」との認識だ。李総裁の指摘によれば、地域間の金融提携はなお政府の推進力に頼っており、金融機関間の連携も緊密さに欠ける。官の主導と民間レベルの推進が良い方向に連動し合うシステムがまだ形成されておらず、地域内の顧客への全面的で多層的な需要を満たせていない。加えて各国の金融機関の発展状況や金融システムの健全さのレベルが異なり、監視の度合いもばらばら。会計基準すら統一されておらず、金融提携を難しくさせると同時に、提携のためのコストを増やしている。

 業界関係者によれば、金融当局もこれに注目しており、中国人民銀行金融研究所はこのほど、「中国ASEAN金融提携発展メカニズムに関する研究」を発表し、当面の提携および中長期的な提携における政策構想を示した。

 それによると、当面の提携の重点は◇金融機関による支店の相互開設◇決済分野での提携◇マネーロンダリング対策面の提携強化――に置く。注目すべきは、交渉や対話を通じて域内の為替レートを協調する目標が示されたことだ。

 この協調は段階的に進め、この過程においての金融政策の協調と提携も低レベルな段階で行うとしている。すなわち、名目上は各国通貨の自主権のいかなる譲渡も行わず、各国が通貨自主権を行使し続ける前提の下で、金融機関の協調を通じて参加国が自国の通貨政策を微調整するよう働きかける。されらに金融政策を「自国の利益を主とし、地域全体の利益も同時に考慮する」という方向へ指向させるよう尽力する。

 中長期的な提携においては、中国とアセアンの域内における金融危機管理・監督体制を整えることが示された。為替政策の協調面では、各国が意図的に自国通貨のレートを低く抑えることを避けるために、通貨バスケット制を試みることが可能だと提案している。(編集担当:浅野和孝

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