【中証視点】景気刺激にじわり効果、中国が増値税改革に着手

2011年10月28日 12時54分 (2011年11月3日 00時12分 更新)

国務院はこのほど、上海で来年、増値税(付加価値税、VAT)改革の試行に着手することを決めた。業界アナリストは、「今回の試行は、関連業界と社会全体に対する税負担を軽減するものであり、現在進行中の経済構造改革に向けた一連の緩和措置の延長線上にある」と指摘した。試行が全国規模で展開された後のマクロ効果はかなり大きいと予想される。(サーチナ&CNSPHOTO)

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 <中国証券報>国務院はこのほど、上海で来年、増値税(付加価値税、VAT)改革の試行に着手することを決めた。業界アナリストは、「今回の試行は、関連業界と社会全体に対する税負担を軽減するものであり、現在進行中の経済構造改革に向けた一連の緩和措置の延長線上にある」と指摘した。試行が全国規模で展開された後のマクロ効果はかなり大きいと予想される。また、今回の措置は、税収制度を改善し、中・長期的にサービス業の発展推進に有利に作用し、中国の経済構造改革に前向きに働くと予想される。アナリストは、営業税・増値税改革の前に立ちふさがる大きな壁は、徴税権の配分バランス問題であり、その解決なしに、分税制に向けた中国の税制改革を成功させることは難しいとの見方を示した。 

◆構造的減税が始まった

 中国には現在、増値税と営業税が併存しているため、多くの不合理・不公平な点が生じている。まず、重複課税の問題。商品を扱う会社がサービス業からサービスを受けた場合、営業税は増値税徴収の際に控除されないため2種類の税が課税される。2番目に輸出の際に増値税が還付されないこと。海外への労務輸出は営業税が免除されるが、中国のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業者が海外から業務を受注した場合は営業税の支払いが必要となる。最後に、産業構造のアップグレードの足かせとなっていること。例えば技術開発企業が技術サービスを提供しても、控除の根拠となる増値税領収書の発行ができない。需給がともに抑制され、新技術の開発にマイナス影響を及ぼしている。

 財政部財政科学研究所の劉尚希副所長は、「増値税の適用範囲を拡大することで、業界間における税負担の公平性が高まる。営業税との重複問題を緩和し、中国の税制の整備にとって重要な意義を持っている」とコメントした。

 国務院の温家宝首相はこのほど、税制度を完備するために構造的減税を大々的に推し進めるとの方針を明らかにした。アナリストは、「中国国内の物価上昇に頭打ち感が見られるようになった。『経済の構造調整を進め、経済の穏やかでかなり速い発展を促進する』方針が当面、経済発展の大筋となった。中でも財政政策は特に大きな効果を発揮することになる」と指摘した。

 関連部門はこれまでに、資源税改革の推進、零細企業を対象とした減税措置、地方債の自主発行認可、地方政府の資金調達用の投資会社「地方融資平台(融資プラットフォーム)による融資期間延長の認可など、一連の措置を打ち出した。政府のマクロ政策に経済構造調整という方向性が具現化し始めた。増値税改革試行が上海でスタートすることで、構造的減税の幕が開いた。具体的には、交通運輸業が現代サービス業での税負担が軽減されることになり、中国の産業構造アップグレードや経済構造合理化を促進する上で重大な意味を持つ。

◆いずれは必要な税制改革

 国務院は、今回の試行において、「試行期間中、営業税に代わり増値税が徴収されると、その税収入は試行地に帰属する。試行対象業界に対する営業税優遇策は継続する」と明確に規定した。海通証券は、増値税改革後の税収入が地方に帰属することになった点は、今回の試行における重要なブレイクスルーだと指摘した。

 中金公司のリポートによると、国務院が新たに定めた規定と現行税制の間に矛盾が生じることは避けられない。根本的に解決するためには、地方財政と中央財政の間に存在する「収支区分問題」を調整する必要があり、広範囲の税制改革に関連している。

 劉副所長は、「今後、増値税改革を全面的に展開することは、2つの面での可能性につながる。1つ目は、試行地・上海の交通運輸業と一部現代サービス業での試行を全国規模に拡大し、増値税が営業税に取って代わるようになること。2番目は、増値税への全面移行により、文化、スポーツ、娯楽、金融保険業など各業界が軒並み、増値税の徴収対象となることだ」と話した。

 劉副所長によると、増値税改革を全面的に推進するには、上海での試行事例の中から、中央財政と地方財政の均衡点を見つけ出す必要がある。上海での試行によって中央、地方財政の変化を観察した上で、営業税から増値税への移行後、中央・地方政府の税収配分比を改めて決定し直す作業が求められる。

 営業税から増値税への移行改革における核心的な問題は、結局のところ、徴税権の配分のバランス問題。分税制という税制上の根本問題の解決が必要となる。

◆全国で施行後は物流業に有利

 国務院会議では、交通運輸業を試行対象に組み入れることが明確に打ち出されたが、「一部の現代サービス業」の区分けを明確化していない。中金公司のリポートは「銀行業と保険業は異論も多く、試行対象となる可能性は低い。一方、倉庫・郵便業は生産サービス業に属し、国民経済統計では交通運輸サービスと同業種に入っているため、試行対象となる可能性が高い」と指摘した。情報伝達、コンピューターサービス、ソフトウェア業など科学技術性が高く国家が奨励している新興産業も、試行対象となる可能性が高い。試行が全国規模で展開すれば、対象業界の税負担は約470-700億元軽減される見込みだ。

 国金証券は、「交通運輸業の増値税改革は、長い目で見ると業界発展に有利に働く。物流サービスは最大の恩恵を受けるだろう」との見方を示した。ただし、物流企業が具体的にその恩恵を享受するのは、改革が全国規模で展開された後になるとみられる。(編集担当:浅野和孝

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