変化が激しい中国の小売、アリババ主導の「新零售」に負けないのはどこ?

2018年5月26日 14時12分

中国で小売り事業を展開している各社は、急拡大するアリババグループなどのECをベースにした「新零售」と呼ばれる新業態への対応を迫られている。(イメージ写真提供:123RF)(サーチナ)

 香港の日系の大手小売業は、ユニーが撤退したため、イオンを残すのみになった。中国本土でも小売業の縮小が進んでいる。英百貨店マークス&スペンサー、韓国イーマートなど、中国市場から完全撤退する外資もある。この背景には、電子商取引(EC)市場の急拡大、店舗賃貸料や人件費の高騰などがある。イオングループやイトーヨーカ堂などは、中国において「新しい小売(新零售:シンリンショウ)」に取り組む意欲をみせているが、激変する中国小売市場に翻弄されているようだ。

 香港3大デベロッパーの一つである恒基兆業地産傘下の小売事業者、恒基兆業発展は5月24日、ユニー・ファミリーマートホールディングスから総合スーパー「ユニー」の香港事業を買収すると発表した。現地法人「ユニー香港」の全権益を3億香港ドル(約42億円)で取得する。これにより恒基兆業発展は、既存小売事業とのシナジー創出を図る狙い。一方のユニーは、海外スーパー事業から完全撤退する形となり、国内事業に経営資源を集中させる。

 ユニー香港は、「ユニー」「アピタ」「ピアゴ」のブランドでスーパー3店舗を展開。ほかに、12香港ドル均一ショップ「私と生活」ブランドを経営してきた。2017年11月通期の売上高は10億8985万香港ドル(約152億円)、税引後利益は3056万香港ドル(約4億円)だった。

 一方の恒基兆業発展は、香港で百貨店「千色Citistore」をチェーン展開する。ユニー香港と同様、中産階級をターゲットした店舗展開を進めていることから、今回の買収によってシナジー効果が期待できるという。ユニー香港については、買収後も同じブランド名で営業を続ける方針だ。

 香港では1990年代から日系小売事業者の出資引き揚げが続いている。1970~80年代には「大丸」「三越」「東急」「ヤオハン」「伊勢丹」などの日系百貨店が銅鑼湾(コーズウェイベイ)や尖沙咀(チムサーチョイ)といった繁華街に立ち並んだが、今回のユニー撤退によって、残る日系資本は「イオン」のみとなった。中国資本の進出や賃料の上昇などが背景。1993年には「西武」が迪生創建国際に、2000年には「そごう」が利福国際集団に事業を売却している。

 一方、中国本土では、ユニクロが2020年に中国1000店体制をめざして快走している他、イオングループが今年4月に広東省に55店舗目となるGMS「イオン佛山魁奇路店」を出店。ニトリが2022年までに中国国内100店舗をめざした積極的な出店攻勢に出ている。また、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3強は中国国内のネットワーク拡大が順調にみえる。

 ただ、今後の展望は不透明だ。イトーヨーカ堂は北京の店を相次いで閉鎖し、成功している成都へのシフトを鮮明にしている。ピーク時に中国で300店を展開したイトキンは2017年までに中国市場から撤退してしまった。

 中国で小売り事業を展開している各社は、急拡大するアリババグループなどのECをベースにした「新零售」(無人スーパー、無人コンビニなどに代表されるネットとリアルを統合した小売サービス)と呼ばれる新業態への対応を迫られている。アリババグループは、個人経営の雑貨店600万店をITでネットワークし、通販用の倉庫から商品を配送するLST構想を実行に移すなど、ネットとリアルの融合に本腰を入れている。

 イオンは、地元の企業と合弁で無人店舗の開発を進め、イトーヨーカ堂は成都ヨーカ堂傘下の伊藤ECをテコにオンライン型店舗の実験を進めるなど市場開拓に注力しているところだ。セブンイレブンも台湾で無人コンビニの実験を始めた。

 中国の小売売上高は2017年実績で前年比10.2%増と前年と比べて伸び率が鈍化したものの、ネット通販は32.2%増(前年は26.2%増)と加速。小売売上高に占めるネット通販の比率は19.6%に拡大している。この消費行動の変化に対応できない企業が振り落されるように、中国からの撤退を余儀なくされているようだ。今後も一段と成長が期待されている中国の個人消費市場での勝者をめざし、各社の試行錯誤が続いている。(イメージ写真提供:123RF)


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