<コラム>中国3隻目の空母は電磁カタパルトを装備か?

2018年9月18日 21時10分

中国の軍事力に関するアメリカ国防総省の年次報告書で「中国は2018年に最初のカタパルト装備の空母の建造をはじめたと見られる」と書かれている。写真は中国の空母・遼寧。(Record China)

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中国の軍事力に関するアメリカ国防総省の年次報告書が、2018年8月に公開された。報告書には以下のように書かれている。

「中国は2018年に最初のカタパルト装備の空母の建造をはじめたと見られる。この空母はさらに多くの戦闘機、固定翼の早期警戒機を運用でき、より迅速な航空任務を行うことができる」

すでに2018年1月4日付で、香港を拠点する英字メディア、サウスチャイナ・モーニング・ポストが、中国上海にある造船会社「江南造船」は、中国3隻目(国産2隻目)の空母の建造をはじめていると報道している。

現在、中国海軍は猛烈な速度で近代化を進めている。ここ10年で中国の造船所は100隻以上の軍用船舶を建造してきた。中国ポータルサイト新浪(2018年8月7日付)によると、フランスのフィガロ新聞が、中国は4年間で全フランス海軍の規模に相当する艦隊を建造し、さらには全地球規模の海軍戦闘艦を建造する計画を実行している最中である、と報道したという。同記事によると、中国海軍は今年中に、国産はじめての002型空母、および1隻の055型駆逐艦、3隻の052D駆逐艦、3隻の054A型フリゲート、1隻の071型揚陸艦を受領する見込みで、その総トン数は11.87万トンをくだらないとしている。確定したものではないが、中国は4隻目の空母もすでに建造しはじめているという報道もある。

台湾メディア中時電子報(2018年6月12日付)は、中国軍事解説者陳光文氏の発言を掲載している。002型空母は船台上での建造がはじまってから進水までに28カ月かかったという。これは遼寧のときの半分あまりの時間である。陳光文氏の予測では、003型空母の建造期間はさらに短くなり、船台上での建造がはじまってから、20カ月はかからないだろうとしている。この推測がもしも正しく、003型空母の船台上での組み立てがすでにはじまっていれば、2019年末か、あるいは2020年初には正式に進水できるとしている。

以前のコラムでも書いたが、中国は造船にモジュール式を採用しており、複数の場所で空母の船体の一部となる個々のモジュールをつくっておいて船台上で一つに繋げるので、短期間で船を建造することが可能になっている。

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国3隻目の空母がいつ進水するのかについて語るには早すぎるが、海軍専門家によると、中国は2030年までに4個空母戦闘群(打撃群)を持つ計画をたてているとしている。

2018年7月には、米華字メディア・多維新聞が、中国が2025年までに事実上7隻の空母を持つというディプロマット紙の報道を紹介していた。当ディプロマット紙の記事は、疑問符付きの見出しであったものの、本格的な空母4隻と075型強襲揚陸艦3隻をあわせて、中国は事実上空母7隻体制になるという主張であった。

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国は2000年代初頭から、空母遼寧(元空母ヴァリヤーク)を建造するために、技術顧問として多くのウクライナの専門家達を雇用していたという。

中国が、多くの軍事技術をウクライナから得ていることは、前々回のコラム「中国軍の大きな弱点、軍用ジェットエンジン技術の現状」にも書いた。空母遼寧が、元はウクライナからスクラップとして購入したものであるのはよく知られている。中国は空母の船体をウクライナから得ただけでなく、空母建造においても多くの技術をウクライナから取得している。しかし、中国がウクライナから援助を受けているのはそれだけではない。

かつてソ連は、ウクライナにある造船所で空母「ウリヤノフスク」を建造していた。ウリヤノフスクは中国の空母遼寧やその姉妹艦であるロシアの空母アドミラル・クズネツォフより大型の空母で、蒸気式カタパルトを装備する予定だった原子力空母である。しかし、20%ほど建造されていたウリヤノフスクの建造は1991年に中止になり、ソ連の崩壊で独立したウクライナによって接収され、最終的にはスクラップとして解体された。

ソ連空母ウリヤノフスクは未完成で終わるが、ソ連は崩壊する前に、すでに空母用蒸気式カタパルトの開発に成功していたといわれる。

中国はウクライナから遼寧(元空母ヴァリャーグ)のすべての設計図を取得したとされているが、遼寧以外にも、同じように、ソ連のキエフ級空母やウリャノフスク級空母についても、多くの情報をウクライナから得ている可能性が指摘されている。

003型空母は、通常動力で電磁式カタパルト(EMALS)が装備されるという推測がある。電磁式カタパルトは、アメリカの最新空母で運用されようとしている最先端技術だ。

これまでのアメリカ海軍の空母に使用されていた蒸気式カタパルトに比べて、電磁式カタパルトを使用すると、航空機の機体寿命を延ばすことができ、さらにより短時間で航空機を発艦させることができるようになる。

アメリカ軍事専門紙ディフェンスニュースが2017年9月9日付で、中国が空母用電磁式カタパルトの開発に成功したと主張している、と報道している。

電磁式カタパルトは従来の蒸気式カタパルトより多くの電力を必要とするため、空母のエンジンには原子力のものが必要だと言われていた。もしそうなら、003型空母が通常推進だとすると、電磁式カタパルトの運用は難しいということになる。

しかし、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(2017年11月1日付)によると、中国は統合推進システム(IPS:integrated propulsion system)を開発し、この問題を解決したという。技術的取り組みは中国海軍の造船技師、馬偉明少将率いるチームによって行われた。このシステムでは交流のかわりに中電圧の直流送電ネットワークを使用するという。

システムのために蒸気ボイラーからエネルギー蓄積装置に至るまで、エネルギー供給と分配システムの完全な見直しが必要だったと、中国科学院電工研究所の軍事技術専門家である王平氏が語っている。王平氏によると、将来的にこのシステムは空母だけでなく、ミサイルや衛星、あるいは高速鉄道にも使用されるかもしれないという。

統合推進システムはアメリカの最新鋭ステルス駆逐艦ズムウォルトにも使用されているものだ。

すでに中国は遼寧省興城市にある海軍航空訓練センターで、2基のカタパルトを運用している。そのひとつが電磁式カタパルトであり、もうひとつが蒸気式カタパルトであると見られている。

2018年6月20日に中国国有企業の中国船舶重工集団が公開した写真の奥の壁には003型空母と思われるイラストが貼られていた。そのイラストで描かれた空母はスキージャンプ式ではない平らな甲板を持ち、3基のカタパルトを装備していた。この写真はネット上で話題になった。もちろんこのイラストが実際の003型空母の実態を表している保証はないが、003型空母の姿を暗示するものにはなろう。

中国の003型空母は、排水量8万トンくらいになるのではないかと複数のメディアが報道している。8万トンという大きさは、空母遼寧やその準同型艦の002型空母より大きく、アメリカの原子力空母であるニミッツ級空母よりは小さいサイズだ。一説には、中国は3隻目の空母として、アメリカの空母キティーホーク級空母程度のものを目指しているとも言われる。キティーホーク級空母は、アメリカ最後の通常動力空母だった。

カタパルト空母に対してスキージャンプ式空母の劣っている点としてよくあげられるのが、空母から発艦する艦上機がミサイル・爆弾などの装備や、燃料を多く搭載できないというものだ。

また中国空母遼寧の場合、早期警戒機としてはヘリコプターが使用されている。早期警戒ヘリコプターは固定翼機のものに比べて、滞空時間や上昇高度で劣っている。高い高度で飛べなければ搭載されたレーダーで広い範囲をカバーすることが難しくなる。

さらにスキージャンプ式空母は、固定翼の早期警戒機を運用できないと考えられている。中国の早期警戒機については、尾翼の形がアメリカの空母用早期警戒機E-2ホークアイにそっくりな、KJ-600(空警-600)という機種が、中国の航空機製造会社である西安飛機工業公司によって開発されているとの話がある。E-2やKJ-600はプロペラ機であり、そのエンジンはカタパルトなしには空母からの発艦に十分な推力を発生させることはできないとされている。


■筆者プロフィール:洲良はるき
大阪在住のアマチュア軍事研究家。ブログツイッターで英語・中国語の軍事関係の報道や論文・レポートなどの紹介と解説をしている。

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