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監督交代の『007』、時代はどんなジェームズ・ボンドを求めているのか

2018年9月23日 07時00分

6代目ボンドを演じるダニエル・クレイグ(C)AFLO

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 スパイ映画の代名詞『007』。8月に「創作上の意見の相違」を理由に監督を降板したダニー・ボイルに代わり、次回作を映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の脚本などで知られるキャリー・ジョージ・フクナガが監督することが決まった。前作『007 スペクター』(2015)後、6代目のジェームズ・ボンドを演じるダニエル・クレイグの続投発表まで時間を要したことに加え、今回の監督交代劇。25作目の『007』の制作が難航していることが伺える。シリーズ第1作の公開から56年。時代は今、どんなボンドを求めているのか。

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 ダニエルが初めてボンドを演じたのは『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)。これまでにないドラマ性のある悲劇的なボンドを演じ、ボンドとして初めて英国アカデミー賞にノミネートされるなど高い評価を得た。興行的にもこれまでのシリーズを凌ぐ大ヒットを遂げている。

 前作の公開後、去就が注目されていたダニエルだが、続投が発表されたのはつい昨年夏。今回の監督交代劇で降板も噂されたが、プロデューサーとダニエルの連名で新監督を発表したことからも伺えるように、制作陣としてはどうしてももう1本ダニエルでいきたい模様。しかし次回作が彼の最後のボンドとなるだろう。そこで注目を集めているのが、ダニエルの後に誰がボンドを演じるのか。

 これまでボンド候補に挙がったのは、映画『ダークタワー』(2017)のイドリス・エルバ、映画『ダンケルク』(2017)のトム・ハーディ、海外ドラマ『HOMELAND』のダミアン・ルイス、『ナイト・マネジャー』のトム・ヒドルストンなど。映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)、『ジャスティス・リーグ』(2017)で演じたスーパーマン役を降板するとささやかれているヘンリー・カヴィルも、急浮上している。この中に、海外ドラマ『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』でアジア系俳優として初めてエミー賞を受賞したリズ・アーメッドの名前もある。アフリカ系のイドリスと同様、ボンドにも多様性が求められていることが伺える。

 殺しのライセンスを持つジェームズ・ボンドは、イギリスの作家イアン・フレミングの生み出した世界で最も有名なスパイ。映画はこれまで24本公開されており、初代ボンドを演じたのはショーン・コネリー。日本が舞台の『007は二度死ぬ』(1967)など7作品に出演した。2代目は『女王陛下の007』(1969)に出演したジョージ・レーゼンビー。3代目は7作品に出演し、スタイリッシュで愛嬌のあるボンドで人気を博したロジャー・ムーア。4代目のティモシー・ダルトンは2作品でボンドを演じ、続く5代目がピアース・ブロスナン。ピアースは『007/ゴールデンアイ』(1995)から4作品に出演し、一時低迷していたボンドの人気を再び押し上げた。 それぞれ個性は違えど、彼らのボンドを見返して、まず違和感を覚えるのは女性の扱いではないだろうか。先代までの『007』では、女性が夜の相手として提供される場面がしばしば登場する。ピアースのボンドはそれが敵方のスパイだと察してことに及ばないが、それでも女性が提供されるのだ。「Time’s Up」(タイムズ・アップ=「時間切れ」「もう終わりにしよう」の意で、「#MeToo」運動に関連してアメリカで始まったセクシャルハラスメントに対する抗議運動)の機運が高まる今、これは受け入れられはしないだろう。

 映画『ワンダーウーマン』(2017)など、女性のパワーに注目が集まる中、同じ英国の長寿ドラマ『ドクター・フー』の主人公に女性が初めて起用されたこともあり、ボンドの候補にも、海外ドラマX‐ファイル』シリーズのジリアン・アンダーソンや『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズのエミリア・クラーク、映画『ベイウォッチ』のプリヤンカー・チョープラーなど女優の名前も聞こえている。

 しかしこれには、ダニエルの妻で女優のレイチェル・ワイズが、ボンドを女性にするよりボンドに匹敵する女性キャラクターを作り出すべきだと発言しており、実際、的を射ている。

 『007』にはほかにも重要なキャラクターが登場する。ボンドの上司Mはその1人だが、先代は女優のジュディ・デンチが演じた。ボンドの協力者としてたびたび登場するフェリックス・ライターは、『カジノ・ロワイヤル』からアフリカ系のジェフリー・ライトが演じ、これまでただボンドに恋い焦がれるキャラクターとして登場していたミス・マネーペニーは、『スカイフォール』からは彼と対等に描かれ、やはりアフリカ系のナオミ・ハリスが演じている。『007』は確実に変化している。

 遠からず、ボンドが白人男性でなくなる日はやってきそうだ。一度、非白人男性が演じたからといって永遠にそれを続ける必要はない。テーブルの上にあらゆる可能性が並ぶ。それこそが時代が求めるものではないだろうか。(文・寺井多恵

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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