「正社員でも一生年収300万円がフツー」といわれる時代に、今の会社で給料を増やすためにはどうすればいいのか。運よく、毎年昇給していく「古きよき日本企業」に勤めているなら、日々の仕事ぶりを上司に認めてもらい、より高い「定期昇給」を得るのが最初にすべきこと。
ただし、この先必ずやってくる「ブラック型」化にそなえて、準備しておくことも重要になる。約120社の人事ルールをつくってきたコンサルタント、平康慶浩氏に聞いた。

■近い将来の「ブラック型」化にそなえ、今から「評価」を貯めよ!

―製造業が典型ですが、年功序列が根強い“ザ・日本企業”は、だいたい同期社員はずっと横並びで、若いうちは出世も難しいですよね。そんな会社に勤める20代、30代でも、すぐに給与を増やせる方法なんてあるんですか?

平康 まずは、きわめて正攻法の方法をとりましょう。というのも、そうした年功型企業では「定期昇給」制が採用されていまして、1年、あるいは半期、四半期ごとの人事評価を反映して、個々の社員の昇給額も決まるんです。だから、ここでより高い金額アップを得るのが現実的な目標となります。


以下の3つのルールをまず実行してください。上司や職場の人たちとのコミュニケーションを深め、自分の仕事ぶりが上司から「見えやすくする」ためです。例えば出社時や退社時に周囲に挨拶する。ミスをしたらすぐに上司の前まで行って報告し、叱責は進んで受ける。そうした地道な行動の積み重ねによって、上司は「あいつはよく育ってきているな」という印象を持ちます。

―でも「印象」ですよね。


平康 もし部下が社外で話題となるような成果を挙げたら、面白く思わない上司がほとんどです。ここは皆さんも誤解しがちで、「社外=転職市場」で高い評価を得る方法と、「社内」で高い評価を得る方法は別モノで、後者は地味な作業なんです。ただ、そうした古きよき日本企業の多くは新卒一括採用だから、若手をイチから育てる風土も残っている。だから、まずはあせらず上司への印象を良くすることをオススメします。必ず評価につながっていきますから。

―悠長な感じもしますが……。


平康 いえいえ、上司を観察して評価ポイントを理解し、そこに合わせて働くスキルというのは、この後で説明する「ブラック型」企業や「業績悪化型」企業を含め、あらゆる職場で「デキる人」になるための基本中の基本。転職後にも絶対、必要な能力ですよ。

―話は戻りますが、年功序列は今後、減っていくんですよね。

平康 近年業績を伸ばしている、皆さんもよくご存じの小売や飲食サービスの企業の多くは、すでに定期昇給がありません。製造業ですら、中堅・中小メーカーを中心に定期昇給は崩れ始めています。

念のために言っておくと、古きよき年功序列型企業でも、課長が出てくる年齢(だいたい40歳代前半)以降は、同期の間でも格差が生まれていました。
ただ、これまで多くの上場企業には「職能資格等級制度」という人事制度があったので、給与面では、さほど格差が意識されてこなかったんです。資格等級制度とは団塊世代のためにつくられた制度で、同期が50人もいるけど社内に管理職ポストは個しか用意できない。そこで管理職になれなかった社員も、給与だけは一緒にアップさせる仕組みです。今でも上場企業の多くはこの制度が残っています。

―ああ、課長待遇とか部長待遇とか役員待遇とかって話ですね。

平康 そうです。
しかしこの制度も、グローバル企業同様の「職務等級制度(役割等級制度)」に移行していきます。つまり、多くのサービス業と同様、役職が上がらないと給与も上がらなくなる。

今後は、給料の天井(上限)も今より低く設定されるようになる。その上限を「レンジレート」で定められています。もともとは、定年まで給与がずっと上がり続けるのを抑えるために、成果主義に合わせて導入された仕組みですが、その対象となるのは平均42歳くらい。課長になる年齢ですね。
つまり「42歳までは定期昇給させるけど、課長以上になれない限り、給与はもう増えませんよ」ということ。そして、このレンジレートの対象となる年齢が、今後は30代へ下がっていくはずです。「係長になれなかったら、給与は増えません」「主任になれないと、そこまでです」といった感じですね。

―定年まで給与が伸び続ける、というのは、昔話なんですね。

平康 さらに今後は、終身雇用は守られても、要職にない50代以上は“旬を過ぎた人材”として、若いときより給与を減らされていくことも起きるでしょう。

―もし今、年功序列の会社に勤めていても、今のうちから「出世」を意識しておかないと将来ヤバイってことですね……。

■ノルマ達成だけじゃダメ! 今から「上司の評価」を得手おくための3大ルール

(1)ひとりで仕事しない


よくも悪くも上司は、独断で部下の昇給評価を下すのではなく、どうしても職場全体の総意や雰囲気をくみとってしまう。だから職場の人たちにも、「自分が何をしているか」が自然に伝わるようにしておくべき。それがプラス評価につながる

(2)“報連相”はメールだけにしない


仕事ぶりのアピール対象である上司が、たとえ苦手なタイプでも、コミュニケーションは密にしよう。話すのがイヤでも、メールでなく面と向かって“報連相”!(=報告・連絡・相談)。昭和風のアプローチこそキミの印象をアップさせる

(3)品質はもちろん、スピードも重視


若手のうちは、作業を完了させる前の段階で、指示した人に確認する習慣をつけよう。スピードを重視しながら、品質を高めるためのやりとりをすることで、自然とコミュニケーションも深まり、キミの仕事ぶりの「見える化」も進んでいく

(取材・文/佐口賢作、写真/getty images)

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