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「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(1)

2017年9月25日 19時00分 (2017年10月3日 18時42分 更新)

作家は、大きく分けて2種類いる。

速ければ年に数作ものペースで新作を量産できるタイプと、一つの作品を仕上げるのに長い時間を要する寡作なタイプである。

8月に『岩塩の女王』(新潮社刊)を刊行した諏訪哲史さんはまちがいなく後者。2007年に『アサッテの人』で群像新人文学賞と芥川賞を受賞し、華々しくデビューした諏訪さんだが、前作『領土』を2011年に刊行して以降、実に6年もの間、小説の発表がなかった。

この「沈黙の6年」をどのように過ごし、新作『岩塩の女王』を書き上げたのか。諏訪哲史、新刊JPにも6年ぶりの登場である。(インタビュー・記事/山田洋介

――まずお聞きしたいのは、諏訪さんが陥っていたという「文学的失語」についてです。前作『領土』を書いた後、小説の言葉がまったく出てこなくなってしまったそうですが、これはどういう状態だったのでしょうか。当時のインタビューでは語られなかったことだけに驚きでした。

諏訪:『領土』が出た時、僕自身はこれからも書ける、とやる気満々でした。ただ、当時のインタビューで「次は恋愛小説の長編を書きたい」と話したと思うのですが、取りかかってみるとこれがまったくうまくいかなかったんです。

書けないかというとそんなことはなくて、初めはどんどん書けて一時は300枚近くにもなったのですが、どの時点で読み返しても納得がいかない。しかもどんどん悪く見えてくる。今回の本に収録されている「無声抄」という作品の中に、何百枚も書いた長編小説に納得がいかず、そこまで書いたものを「全選択」してデリート(消去)してはまた元に戻すという自虐行為を繰り返す小説家が出てくるのですが、当時の僕そのものです。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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