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【「本が好き!」レビュー】『老いの荷風』川本 三郎著

2017年9月26日 16時00分 (2017年9月26日 18時22分 更新)

ビッグコミック『荷風になりたい~不良老人指南~』(倉科遼)の連載が先日終了しました。荷風の生い立ちからその死までを追った連載でしたが、こちらは『濹東綺譚』以後を中心に、荷風を詳細な資料とインタビューでその姿を追っています。

東京大空襲で彼の住まいである偏奇館は焼けてしまい、浅草で上演された歌劇『葛飾情話』を機に知り合った菅原明朗・永井智子夫妻を頼って中野区、渋谷区、明石市、岡山市へと転々と避難していきます。岡山では津山に疎開していた谷崎潤一郎と交流しつつも、戦災によるノイローゼ・PTSDのような症状が現れてきます。戦争中、彼の作品に生まれ故郷である「山の手」への望郷の念が出ているという筆者の指摘はなかなか興味深いものがあります。何はともあれ、当時の65歳というと本当に「お爺さん」です。そんな独居老人が戦災から逃げ惑うのですから当然といえましょう(周りはたまったもんじゃありませんが)。

戦争が終わると、すぐに東京に戻るものの、最終的には墨東よりももっと東、荒川放水路・江戸川の向こう、市川、旧名でいえば葛飾へ移り住みます。戦災を免れたというも理由の一つですが、彼を支援していた相磯凌霜、小林修小林庄一たちがこの地に住んでいたのというのが大きいのでしょう。

さて、永井荷風というと、ごみ屋敷で孤独死していたというようなイメージがありますが、そんなことはありません。

他人に迷惑を金輪際かけぬ。自分も人から迷惑を受けたくない

との発言のとおり、孤独死して数日たって発見のようなことは避けたのでしょう。

注: この記事は配信日から2週間以上経過した記事です。記事内容が現在の状況と異なる場合もありますのでご了承ください。

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