執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
今さら言うまでもなく、「焼き芋」とは…焼いたサツマイモのこと。
「いしや~きいも~♪」のフレーズとともに、日本の風物詩的な移動販売の光景を思い浮かべた方もいるでしょう。

しかし、焼き芋はただの芋にあらず、今注目の「第6の栄養素」といわれる「食物繊維」を多く含み、がん予防、抗酸化作用、美肌、ダイエット、生活習慣病予防などにも効果があるといわれています。
今回は、ヘルシーライフの象徴ともいえる日本のソウルフード「焼き芋」を取り上げ、自宅での手作り方法もご紹介します。
焼き芋の成分
焼き芋1本はおよそ200~300グラム、カロリーにして300~500キロカロリーほどです。
どんぶりご飯1杯、ケーキなどと同じくらい…と考えると、結構カロリーは高いですね。
仮に300グラムの焼き芋について、カロリーの3大栄養素の組成を見てみましょう。
おおよそ、炭水化物117グラム(468キロカロリー)/たんぱく質4.2グラム(16.8キロカロリー)/脂質0.6グラム(5.4キロカロリー)となり、「糖質」が大部分を占めています。

おもな成分が糖質と脂質である、ケーキやアイスクリームとは違いますね。
そのほか、焼き芋には次のような栄養素が含まれています。
焼き芋100グラムあたり
・ビタミンB6(0.33ミリグラム):髪・爪・歯などの健康保持
・ビタミンC (23ミリグラム):抗酸化作用、コラーゲン合成にかかわる
・ビタミンE (1.3ミリグラム):細胞の老化やコレステロールの酸化を防ぐ
・パントテン酸(1.3ミリグラム):ストレス緩和
・葉酸    (47マイクログラム):赤血球の生成や細胞の再生にかかわる
・カリウム  (540ミリグラム):むくみや高血圧の改善
・カルシウム (34ミリグラム):骨や歯の形成、イライラを鎮める
・食物繊維  (3.5グラム):便秘改善やコレステロールの排出、血糖値上昇の抑制など
焼く前のサツマイモと比較すると、水分がなくなりますので、食物繊維、カリウム、ビタミンB6、パントテン酸が増え、カルシウム、ビタミンC、ビタミンE、葉酸などは減ります。
しかしながら、健康維持、疲労回復、アンチエイジング、美肌、貧血防止など、健康や美容に必須の栄養素が豊富であることはお分かりいただけるでしょう。
焼き芋の食べ方
焼き芋は、65~70℃でゆっくりと長時間焼く調理法がベストといわれます。
βアミラーゼという酵素がでんぷんを糖に分解するので、甘くて美味しい焼き芋が出来あがるからです。

「石焼き芋」はこの条件にピッタリなのです。
また、サツマイモ料理には蒸し芋、甘露煮、天ぷら、大学芋、スイートポテトなど…さまざまなレシピがありまね。
カロリー面からみると、蒸し芋の132キロカロリー(100g当たり)に次いで低カロリーなのは「焼き芋」です。
皮にも栄養がある!
サツマイモの皮には炭水化物、βカロテン、カルシウム、食物繊維が含まれています。
また、「アントシアニン」「クロロゲン酸」といった抗酸化作用を持つ成分も含まれています。
さらには、古来より緩やかな下剤の効果があるとして知られる、ヤラピンというサツマイモ独特の成分が、皮の近くに含まれています。

生のサツマイモを輪切りにしたとき、染み出てくる乳白色の液体がそうです。
サツマイモの皮を食べることで、美肌、抗酸化、便秘解消も図れるというわけです。
ですから、ぜひ、焼き芋は皮も一緒に食べましょう!
焼き芋のダイエット効果
焼き芋は糖質が多く、カロリーもそれなりに高いのに、ダイエット向きといわれるのはどうしてでしょうか。
その理由は3つあります。
食欲抑制効果
食物繊維が多い焼き芋は、水分を含むと胃や腸で膨張するので、食欲を抑制する効果が期待できます。
栄養豊富なので食事量を減らせる
焼き芋単品で多くの栄養素を摂取できるため、他の食事を減らしても栄養バランスを保つことができます。

とはいえ、焼き芋から摂れない栄養素(ビタミンAやD)などもありますから、焼き芋だけ食べる…というのはもちろんNGです。
低GI食品
血糖値が上がりやすい食品は脂肪に変わりやすい、という性質を持っています。
血糖値が上昇する度合いを数値化したものを「GI値」といいますが、サツマイモのGI値はおよそ55です。
他の炭水化物のご飯(約84)、うどん(約80)、食パン(約88)、パスタ(約65)などよりも低く、血糖値が上がりにくい食品と言えるのです。
加えて、脂肪燃焼にかかわるクロロゲン酸(コーヒーなどに含まれるポリフェノールの一種。脂肪燃焼効果があると注目されている)が含まれており、太りにくいという点からもダイエット効果が期待されています。

サツマイモの選び方と保存方法
サツマイモは傷んでくると黒く変色してきますから、その部分は切りとって食べましょう。
ただし、次のような状態になったら廃棄するようにしてください。
・水分がなくなり、シワシワになっている
・柔らかくなっている
・表面がべとべとしている
・異臭がする
・カビが生えている
・変な味がする
サツマイモの保存に適した温度は15℃前後といわれます。
「常温保存」が最適とされ、丸ごとで洗っていなければ1か月、切った場合は1週間くらいは日持ちするといわれます。
寒さに弱く、10℃以下の冷蔵保存には適しません。
冷凍だと1か月程度は保存可能といわれています。

常温保存には、次の点に注意しましょう。
切っていない場合
・土を払い落とす、水洗い厳禁(腐りやすくなる)
・新聞紙で1個ずつ包む(乾燥や湿気を防ぐ)
・風通しの良い冷暗所に置く
・段ボールや穴を開けた発泡スチロールなどに入れてもよい(通気性をよく)
切った場合
・切り口をラップで包み空気に触れないようにする(酸化に注意)
・新聞紙でくるむ
・風通しの良い冷暗所に置く
自宅で簡単!美味しく調理
最後に、美味しい焼き芋の調理法をご紹介します。
電子レンジで蒸し焼き

丸ごと1本を洗って、濡らしたキッチンペーパーでくるみ、その上からラップで包み、一本200Wで15分加熱します。
粗熱が取れるまで冷まします。
※加熱後は熱いのでやけどに注意しましょう。
お手軽トースター焼き
丸ごと1本を洗って、トースターで約30分焼きます。
粗熱が取れるまで15分ほど放置すればできあがりです。
じっくりオーブン焼き
丸ごと1本を洗って、天板にアルミホイルをしきサツマイモを並べます。
余熱はしないでオーブン温度200℃で40分ほど焼きます。
竹串をさしてスッと刺さればできあがりです。
ゆっくり焼くと甘みがぐっと増します。
いかがですか?時間さえあれば、自宅で簡単に美味しい焼き芋ができますよ。
ぜひ、美容に健康に、もちろん安心していただけるおやつにとして…
「焼き芋」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供