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第34回 嵐を抜け、80日ぶりのシオラパルクへ。――角幡唯介「私は太陽を見た」

2018年1月22日 17時00分

 太陽の光を正面から浴びながら私は氷河への下りにとりかかった。


 ……というふうには、残念ながらいかなかった。この七転八倒の旅は、太陽を見たからといって、そうやすやすと私を解放してくれなかった。


■一度寝袋に入ったら、風が恐ろしくて出られなくなった。

 太陽を見たとき、私はそのまま1時間ぐらい感傷に浸りつづけていたかったのだが、じつは地吹雪が強くて10分ぐらいで耐えられなくなり、最後に写真だけ撮ってふたたびテントの中に引っこんだ。午後から安定するという予報だったので、テントの中で様子を見て風が止んでから下ろうと考えたわけだ。


 ところが予報はまた外れ、安定するどころか風はどんどん強まった。地吹雪の雪煙が上空高く舞い上がって氷床全体を覆いつくし、太陽の光は消し去られてテントの中は薄暗くなった。またしても疑似的極夜空間が現出したのである。そして最後の最後、これで本当に最後だったのだが、今回の旅でも圧倒的に最強で極悪なブリザードが吹き荒れたのだ。


 太陽見物後、テントで様子を見ていた私は、強風から爆風に変わる風の音を聞きながら、とても行動できる状態ではないことを察し、ひとまず寝袋の中に入った。それから風の勢いは終末的、破局的になっていった。ふたたび天気予報無視で強まる嵐に私は愕然とした。前日作った防風壁は晩の嵐で吹き飛ばされていたことを、私は外に出たときに確認していた。つまりテントはこの天変地異的、世界破滅的な風の前に無防備のまま吹き曝しになっていたのだ。

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